読書感想文: 山田 昌弘 「なぜ若者は保守化するのか-反転する現実と願望」 Part 2
前回記事「読書感想文: 山田 昌弘『なぜ若者は保守化するのか-反転する現実と願望』Part 1」(https://note.com/yajiumafighter/n/n44ea5d7dfddc)の続きである。
前回の最後のこの一文から再開することとしよう。
個々人のレベルでは、少数派としてハブられないよう空気を読んで多数派につき、権益のおこぼれにあずかることが保身術となろう。
序論の「若者の『失われた20年』」で、山田は若者の「安定志向」とそれに起因した「意識の保守化」を指摘し、これは経済構造が変化したのにもかかわらず雇用慣行が変わらなかったためと説明する。
その結果を2009年の時点で山田はこのように総括する。
この変化しない雇用システムと家庭内の性別役割分業システム、変化した雇用状況と結婚状況のギャップに対応しているのが、冒頭に示した、終身雇用を望む新入社員と専業主婦を望む若年女性の認識なのである。
そして、今の若者は、このギャップに個人的に対応することを迫られている。だから、就活や婚活をいやでもしなければならない状況に追い込まれているのだ。今の若者が行っているのは、自立を目指し、自分の能力を発揮するための競争ではなく、既得権(依存先)を得るための競争としか言いようのない状況なのだ。
山田の慧眼は、この指摘にある。
経済情勢や社会構造が変わったのにもかかわらず、意識は変わらない。現実の変化に認識が追いついていない。これが「不安」の発生メカニズムであろう。
思い浮かぶ一つの例として、「島宇宙化」という表現で言われてきた社会の分断により、多数派が自明ではなくなってしまっている、という現実がある。「空気を読む」という表現が多用されるようになった背景もそこにあるだろう。
既得権を得る、ということは体制に付く、という側面があるから、その時その時で体制を見極めるためにも「空気を読む」という作業が必要になる。
そして体制は強い。ここでマッチョイズムとパターナリズムの出番となる。
…ふぅ、ようやくジェンダー問題を論じる手前まで来た。そちらの話題は次回以降に触れるとしよう。