7月21日

「DIE WITH ZERO」という本を読んだ。
ベストセラーの本は各ジャンルにあるけれども、文芸に関しては当てにならぬ。実用というか自己啓発のたぐいも、結局は自分の好みに合うかどうかという要素が大きい。そういう考えから、日頃ベストセラー書籍が並んでいるのを見ても、またか、としか思わない。
ただ、小さな書店でも、ベストセラーの棚に長々と居座っているような本は一応チェックしてみたくなる。この「DIE WITH ZERO」は題名が内容をダイレクトに表しており、題名は大事だな、題名を決めることで本の価値は半分以上定まるものだと思っている。
さて、この書には、御案内の通り、金を死ぬまでに使い切ることについて、その効用が丁寧に述べられている。金をいつまで貯めるのか。老後がどうなるか不安だから何となく貯める、という人は多く、また、そもそも貯めることすらできない人も多いことが調査から明らかになっている。
中年以降、金を増やしていくのをやめるのではないが安定した運用をしつつ、取り崩しをしながら、経験や思い出を得るために費消すべき、というのがこの本の骨子である。
「思い出からの配当」という考えは面白い。若い頃の経験が、その後いつまでも良い回想を引き起こし、幸福感をもたらす、ということは実感できるからである。若い内こそそういう経験をしたいものである。
何せ、金を増やすとなると、死の間際であっても指数函数的に増えるものであるから、死んで残った金は寄付になるか国に取られるか、いずれにしても死んだ人間にとって何の役にも立たない。それだったら生きているうちに使って、経験や思い出を作り、寄付をして感謝され、寄付金が恵まれない人らに役立つことを実感しつつ良い思い出になる。わが国では寄付をするということがあまり一般的ではないが、金を減らして喜ばれるには寄付が一番手っ取り早い。
親族に生前贈与をすることも、必要ならすればいいが、贈与のほうが相続よりも税金を取られるから、それ故に生前贈与は敢えてしたくない老人も多いと思う。しかるに、若い人らにとっては、まさに今、金が価値を持ち、活用できるのだから、何十年後とかになって受け取るよりもはるかに役立つのである。

そういえば、茶川賞のサンショウウオのなんとか、という作品は読んでみようと思っている。

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