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ダンジョン飯(アニメ)見た

「ダンジョン飯」のアニメをレンタルで1~24話まで見た。 漫画は14巻出ているし、序盤を以前読んだ感じからすると、このアニメは忠実に原作をなぞっていると思われたので、じゃあアニメで見てしまえば単行本を買わずに済むかと思って、レンタルしてみた。 だが……アニメは完結せず「つづく」となっている。 魔物を倒して喰うという、風変わりな作品である。 ライオスやセンシには、魔物食に対する狂気を感じる…… それに対してちょくちょくツッコミが入り、笑いの元ともなっている。 そうした魔物食と

    • カメラマン リターンズ

      という雑誌があり、初めて目にしたのは昨年だと思うが、「NUDE PORTRAIT」と題した特集をしている号がある。 ヌード・ポートレートというものには強い興味があり、ポーズカタログの類いにももちろんヌードポーズが写真資料として載っている。写真資料は(ある意味)真実を映すものであるから、これを基盤として自らヌードポーズの描画をするのに参考すべきものである。 この雑誌はつい先頃最新号が出て、書店で立ち読みしたのだが、これまでもそうであったように、アートとしてのヌードポートレート写

      • 柴崎友香「寝ても覚めても」

        まずは、「きょうのできごと」を大分前に買って読み、真紀ちゃんが可愛い、他の部分はどこが良いだろうかと振り返ってもあまり思いつかない。大学生たちが春休みに引っ越しの手伝いに集まり、酒を呑んだりゲームをしたり、というだらしない感じの会合場面が主なシーンである。とりあえず冒頭で、高速道路?を疾走する車の中から、光の見える描写があり、この作者は視覚的なものを旨く表現する作家だろうかと思った。 そして「寝ても覚めても」は2010年に発表され、2014年に河出文庫で出た。その頃にこれを買

        • 朝井リョウ「何者」

          この著者の本では「桐島、部活やめるってよ」が話題になったので発売当時に読んだが、内容は忘れている。 今般の「何者」も、2012年に単行本書き下ろしで出た本であり、今ごろになって電書で買う客はあまりいないかもしれない。 この本を読み始め、なんか就活生を小馬鹿にする内容かな、と思いきや、ちゃんとした文芸作品というか、わずかな時間でも読者の気持ちを引きつける力のある作品だと思った。つまりただ皮肉・諷刺をするのではなく、ちゃんと勧善懲悪みたいな、スッキリしたオチとなっている。 ネタバ

          「カラマーゾフの兄弟」読み終えた

          これは凄い。 読み返すたびに新たな発見がある。歳をとるごとに新たに分かってくることがある。 人間の芝居、心理描写、どれを取ってもオーバーだけれど、こういうロシア人像にかつて親しみすら持っていたものである。 自分の創作に役立つとか、そんな些細なことはどうでもよく、人類はこの巨編をとにかく読むべきである。 何かの評論?で、イワンの譫妄症は、アルコール中毒が原因だ、と書いてあるものを見たことがあるが、それは的外れである。イワンはずっと、父フョードルの死の責任を感じ続けていた。それ

          「カラマーゾフの兄弟」読み終えた

          「カラマーゾフの兄弟」(途中)

          ゾシマ長老の腐臭、アリョーシャがラキーチンとともにグルーシェンカ家へ行くところまで読んだ。 ここまでの小クライマックスというとやはり「大審問官」なのだが、この「劇詩」は大して込み入ったものではない。 まあ、ここまで読んできて、内容の濃さにいちいち感嘆する。人物の過不足ない的確な描写、会話の濃密さ、芝居としての面白さに圧倒される。 本作も昔から何度も読み返しているが、読むたびに新たな発見がある。 でも、やはり先へ先へと読ませる力が強いため、一つところに留まって考え込むということ

          「カラマーゾフの兄弟」(途中)

          「サピエンス全史(上・下)」読み終えた

          この本はベストセラーで、評判が高い。 上巻はまずホモ・サピエンス以前の猿人の生活が書かれており、いかんせん文化的な資料がほとんどなく、学校で学んだ歴史以上の驚きの発見みたいなものはなく退屈で、一時読むのを中断していた。 そして、やっと人類が登場してきて、紀元前の古代文明から始まってさまざまな人間の活動の痕跡をもとに丁寧な記述がなされ、かつ学校で学んだ歴史をあらかた忘れてしまっていても、一読して理解できるような記述となっている。 学校で学んだ日本史は、私にとっては戦の歴史であり

          「サピエンス全史(上・下)」読み終えた

          ドストエフスキー「白痴」読み終えた

          スイスの療養所からロシアに戻った「騎士」が、写真の女を見初めて、色恋沙汰となり、一方貴族の令嬢にも恋をして…… 筋書きは割とシンプルである。以前何度も読み返したので、展開はつかめているが、とにかく一人一人がよくしゃべる。こういうのは演劇や映画に向いているかなと思うのだが、あの長広舌を覚えてしゃべるのはまず無理で、大幅に要約した台本が必要だろうな。 全編を通じて、ムイシュキン公爵という「白痴」が遺憾なく描写され、憂鬱ではあるものの実に名作であることは疑いない。これの他に「悪霊」

          ドストエフスキー「白痴」読み終えた

          ドストエフスキー「白痴」

          本に何を求めるかというと、自分の生活からかけ離れた世界の描写ではなく、自分の考えを首肯してくれる陳述でもない。前者は、かけ離れた世界はこのようであると言われても、実感がわかないため、単に一泊二日で観光をして大して記憶にも残らないといった、貧しい経験しかできない。一方後者は、そもそもベストセラーとかの大半の本は、その肝となる部分を表紙やタイトルや帯で前ばらしされているため、新鮮な驚きを持ってその本を手にするということが少ない。むしろ古本屋で何の一貫性もなく並んでいる書籍群を探索

          ドストエフスキー「白痴」

          ドストエフスキー「悪霊」

          この作品は時々、というか数年に一度くらい読み返したくなる。 「罪と罰」は犯人が分かっていてじわじわ追い詰められる感じがあまり好きではなく、「白痴」は結末付近の描写は息を呑むものだが全体的に少々退屈な部分もある。「カラ兄弟」は重量級なので読み返すのにちょっと度胸が必要である。 「悪霊」は分量的にまずまずで、何よりスリルとサスペンスがある。自殺することによって神になるというキリーロフの言説、純粋なシャートフ、これら二人に思想を吹き込む「悪魔的超人」スタヴローギン、その腰巾着である

          ドストエフスキー「悪霊」

          「未必のマクベス」読んだ

          この作品は2014年発表で、その後文庫になり、2023年に買ったのだがそのままになっていた。帯には賞賛の文が書いてあり、当時書店で平積みになっていたので、まあ買ってみようかと思って買ったものである。 この本は面白かった。ハードボイルド小説の要素もあり、普段そういうものをほとんど読まないので、緊張感があるのは良い。「世界の終りと~」も、文字通りハードボイルドな部分があるが、暗号化の鍵がテーマになっており、その影響を「マクベス」が受けているかなと感じた。 やはり何と言っても、男の

          「未必のマクベス」読んだ

          漫画等から創作のヒントを得ること

          創作にあたっては、さまざまなものがアイデアの素となる。いろいろと種を仕入れなければアイデアは出なくなっていくだろう。 まず種として漫画を挙げてみたが、創作物には抽象的なものもあれば具体的で極めて分かりやすいものもあり、作品としては子供にもわかる簡明なものを作ることは良いことだが、その発想を得るのに同じようなものを読んでいるだけではだめで、活字や映像といったものが影響を与えることは多々ある。 私が漫画に接する態度は、幼少時と比べると可成り変化している。これはつまり、表面的な表現

          漫画等から創作のヒントを得ること

          「月は無慈悲な夜の女王」読み終えた

          これは1966年の作品である。 直近で読んだSFは「虐殺器官」「ハーモニー」であるが、SFなので(空想)科学的知識を読んで頭に入れつつストーリーを楽しむものである。ただこの二つの作品については、映像をイメージしやすいものの、どうも大急ぎで書き殴ったという印象があり、展開を追っていくのに疲れてしまった。この二作が特にSFの記念碑とは思わない。 さて、標題の作品については、月世界市民のマヌエル、ヒロインのワイオミング、教授、その他の登場人物があり、コンピュータ技術者にすぎなかっ

          「月は無慈悲な夜の女王」読み終えた

          「月は無慈悲な夜の女王」(前半)

          このSFが評価が高いそうなので、読み進めている。 名作SFを読んだことはあり、「夏への扉」「たったひとつの冴えたやり方」「ソラリス」「われはロボット」「幼年期の終わり」「2001年宇宙の旅」といった極めてメジャーなものばかりである。もともと正統派海外SFに詳しくはなく、むしろ、そういうものに影響を受けた日本国内の小説・漫画といったものに多く接してきた。 さて、標題の作品は、月世界で暮らす主人公らが、万能コンピュータを味方につけて、月世界政府の支配に対し反乱を起こし、これから地

          「月は無慈悲な夜の女王」(前半)

          芥川賞「サンショウウオの四十九日」「バリ山行」読んだ

          上記2作品が文藝春秋に掲載されたので買って読んだ。 あらすじ等は面倒なので書かない。読んで考えたことを書く。 まず「サンショウウオ」であるが、結合双生児という実際にはない形の双生児が主人公である。私は紹介記事を見てこの設定にけっこう期待を持ったのであるが、まあ女の双生児だから興味を持ったというのが正確だろう。 作者は医学士であり、古来、医学士の作家は(森鴎外、安部公房、魯迅……)けっこういるだろう。人間を生物の一種として学び、かつ精神に関しても学んでいるのだから、人間というも

          芥川賞「サンショウウオの四十九日」「バリ山行」読んだ

          「プラグマティズム」(岩波文庫)

          プラグマティズムは、ある思想がどういう結果(行動)を引き起こすかに着目する観点である。私が初めてこの本を手に取り、またプラグマティズムという言葉の内容を知ったのはけっこう前のことである。その頃から、少しずつ自分なりに古今の哲学の主要な著書(といっても、膨大にある中で文庫本で簡単に手に入るようなものがほとんどだったが)に当たり、難しくてよく分からないものが多かったものの、このプラグマティズムは極めて分かりやすいと思った。ただこれは、哲学思想というよりも方法論というべきで、実世界

          「プラグマティズム」(岩波文庫)