yagitch.comの用意周到な技術書典6(イベント直前編)
みなさん、技術書典6お疲れ様でした! この記事では私が技術書典6で冊子400部完売するまでにやったすべてのことをまとめていこうと思います。はじめから読むならこちらからどうぞ。
入稿後のタスク
本の入稿が終わり、本が出ることだけは確定しましたが、その時点で追加でやることは山ほどありました。この時点ではまだ表紙は決まったばかりなので、それぞれの告知チャネルで表紙を反映したお知らせに差し替える必要があります。TLには既にサークルチェックを終えた人が出てきていたので、急がないと古い情報のまま読み飛ばされてしまいます。
しかしそれより急がないといけないのはダウンロードカードのデータ作成です。余裕をもった納期にするには4月3日にはデータ作成を完了させて入稿する必要がありました。
・ダウンロードカードデータ作成・入稿(4/3目途)
・名刺データ作成・入稿(4/3目途)
・告知(なるはや)
・おしながき作成
・サークル詳細ページ更新
・固定ツイート更新
・対面電書準備・シリアルコード払い出し
・BOOTH無料サンプル準備
・BOOTH通販受付開始
・noteにて告知記事作成
・Pixivにて告知投稿
・pixiv PAY準備(委託分)
・売り子マニュアル作成
・スペースレイアウト確定
ダウンロードカードと名刺の入稿
ダウンロードの方式は対面電書のシリアルコードを利用する形式にすることは決めていたので、それに対応した印刷所を探す必要がありました。「バリアブル印刷」で検索し、最終的には詳しい仕様が分かりやすく書かれていた株式会社グラフィックさんにお願いすることにしました。本当は対面電書の払い出すシリアルコード入りのQRコードにも対応させたかったのですが、文字だけでなくQRコードの差し込み印刷となるとどの印刷所も「別途お見積もり」となっていて高いんだろうなと思ったので、シリアルコードの文字印刷のみをお願いすることにしました。
基本料金 5,170円(ポストカード表面カラー/裏面モノクロ・500枚・コート225kg・3日納期)
可変テキスト印字オプション 4,200円(モノクロ1カ所・印字級数 14Q・追加納期1日)
合計 9,370円
4月3日データ受付完了、4月7日発送、4月8日到着でした。もし刷り上がりを見て入稿データに不備が見つかった場合は特急で依頼し直しができるギリギリのスケジュールです。
前回ダウンロードカードを作ったときは、対面電書の印刷サポート機能を利用して200枚のjpg画像を作り、ビックカメラ有楽町店のデジカメプリント機を1時間半くらい占拠して1枚1枚刷りました。しかしこれだと片面印刷になるのと、500枚も刷ると4時間くらいかかって面倒くさいので印刷所に丸投げしました。デジカメプリントだとシリアルコード入りのQRコードを差し込めたり、最悪当日でも増刷ができるのでそれぞれに良し悪しがあると思います。
ついでにグラフィックさんで名刺も入稿しました。前回の技術書典5のときの名刺はラクスルさんにお願いして、安くてとてもよい仕上がりだったのですが、今回は入稿仕様をダウンロードカードと共通にできる安心感と、紙の種類が選べる点でグラフィックさんを使うことにしました。前回の名刺を使い切ったわけでは無いのですが、この半年の間にメールアドレスを変更したのとPixivのURLを追加したいのとがあって第2版を作ることになりました。
サークル詳細ページ・Twitterからの動線確保
サークル詳細ページからの動線をBOOTHに一括して振り向け、BOOTHに取り置きや通販の案内を書くようにしたのですが、やはりクリック率は低かったです。
運良くクリックしてBOOTHに辿り着いても、そこからさらにクリックして取り置きページまで飛ぼうと思う人はいなかったようで、それが散々な取り置き率の低さに繋がったのではないかと推測します。なので、元からサークル詳細ページに情報を集約して、そこですべての案内を完結させる方がよいのかもしれません。(その場合、文章とリンクが分かれてしまうというサークル詳細ページの仕様がネックになりますが……)
このあたりは、BOOTHのようにGoogleアナリティクスのコードをサークル詳細ページに仕込めるようになれば、詳細な分析ができると思います。
Twitter告知のテクニック
ここからが私がもっとも力を入れた、Twitter対策についての話です。
本・ダウンロードカード・名刺の3つの入稿が終わって一息ついたら、すかさず告知の準備です。入稿するまでのプレッシャーから解放され、あとは告知と事前準備だけを残すところとなりました。早割はそういった点で有利です。直前のイベント注目度がどんどん上がっていくタイミングで、告知くらいしかすることがなくなるのです。
Twitterでは画像付きツイートの方がエンゲージメント率(反応率)が高いし、見た人の理解も速いです。ですのでTwitterでこれからバンバン告知するにあたって、元となる画像を作る必要がありました。この時点で手元にある画像というとサークルカットと表紙の2つがありますが、両方とも縦長なのでTwitterにそのまま投稿すると切れてしまいます。ですので表紙やサークルカットを包含する形で横長一枚画像を作り直す必要があります。
2019年4月現在、Twitterで1枚画像を投稿する場合は16:9の比率だと切れずに表示されることが分かっています。PCもスマホも共通です。切れてしまった画像をわざわざクリックして表示させようとする人は稀ですから、いかに素の表示された状態の情報量を最大化するかが鍵になります。4枚画像ともなると字が小さくなりクリック数も増えるため、ますます全部をクリックする人はいなくなります。目に飛び込んできた状態をコントロールできるかどうかがTwitterエンゲージメントの明暗を分けるのです。
「か11」としてのスペース告知ですから、委託本も含めてのおしながきとしました。委託本について委託先がどれだけPRするかはそれぞれのサークルで考え方があると思いますが、今回うちの場合は表面的に1つのサークルに見えるよう公平にすることにしました。ですのでPRのためのスペースは3冊とも平等配分です。
おしながき画像とともにツイートする文章は簡潔かつ網羅する感じで、イベント日付・場所・イベント名・新刊の有無・書影・価格・書名・サマリ・スペース番号・サンプルの有無などを盛り込みます。文字と画像で情報が被ってもかまいません。文字と画像の両方読まれるとは限らないので、重要な情報は両方にあってもよいのです。
そして一番大事なことはすべてを一つのツイートにまとめることと、「これはイベント用のおしながき画像だよ」ということをひと目で分からせる点です。それが初めに理解されれば「ふむふむ、なんだろう」と目を通してくれます。だまし討ちのような告知をしてはいけません。
こうして「この1つだけ拡散してくれればOK!」という一つのツイートが出来上がったら、それを昼か夕方か夜の浅い時間(おおむね21時まで)の間にツイートし、すかさず固定ツイートにします。そして1日に1~3回、十分に時間を空けつつRTします。時間を空けるのはウザくなるからです。
十分にフォロワーの多いアカウントであればセルフRTでフォロワーに対して繰り返し告知すればいいのですが、私の告知専用アカウントは当時30人くらいしかフォロワーがいなかったのでそんなことをしても無駄です。そういうときはハッシュタグ付き引用RTを使います。セルフ引用RTはセルフRTと違って新しいツイートとして扱われますので、引用部分にハッシュタグを付けておけばハッシュタグ検索した人に対して何度でも最新ツイートとして表示させることができます。たとえばこんなふうに。
単にハッシュタグのみの本文なしだとスパムみたいになってしまうので、都度都度何かネタを捻りだして、読んでくれた人のためになるように務めます。でないと被引用部分のエンゲージメントは上がりません。ここは知恵の使いどころですね。
そしてTwitterの名前の部分には必ずイベント名とスペース名を入れます。私はいったん短縮を重視してスペース名を削除したりしたのですが、これを付けることによってサークルチェックにつながる人がどこにいるか分からないので元に戻しました。私の場合、書名がそこそこ短めなので書名も入れています。いかにも本をリリースする人みたいに見えてとても分かりやすいですね。大事なのは潜在的ユーザの便宜をできるだけ図ることと、お呼びでなかった人の機嫌をできるだけ損ねないことです。
さらに私は時間に余裕があったので、Twitterへの接触時間をつとめて長くとり、「技術書典」のキーワード検索・ハッシュタグ検索にすべて目を通すことにしました。そして何か困っている人がいるようなら、できる範囲で情報提供をするようにしました。
たとえば技術書典のWebサイトが使いにくい! 検索できないの? という声を見つけたらseasidelabさんところのサークルチェッカーを奨めたり、Re:VIEWでこういう機能はないの? という声を見つけたら自分の経験の範囲でアドバイスしたりしました。とにかく人との接触を保って自分の名前(に付属している自分の書名)に注目してもらおうという作戦です。
「技術書典」という名前を知っていて、それをツイートしている人ならある程度自分の本の潜在的ユーザであるという仮定で、徳を積むことを繰り返しました。情けは人の為ならずと言いますしね。
拾い方はこんな方法を使っていました。
本当はTwitterカバー画像もおしながきのようなものにしたかったのですが、作る手間がかかる割に使い回しが利かないのと効果がそれほど分からなかったのでそのままにしました。(カバー画像そんなに見ないんじゃないの? と思ってしまった)
そして委託元の2人にも「おしながき画像はコピーして自由に使ってください」とお伝えしました。実際ツイートやブログなどで使って頂いたので、告知としては一つの画像で三馬力分の拡散力になってくれたと思います。前回の技術書典5では執筆・校正・売り子まで全部自分一人でやってしまったので、人を味方に付けて協力プレイをすることの重要性を知ることができました。
スペースレイアウト
我が家には幅45cmのローテーブルがあり、イベント会場の長机と同じ幅なのでシミュレーションに好都合でした。4月7日からスペースレイアウトの検討を開始し、百均に行ったり試行錯誤を繰り返しながら4月10日にだいたいのレイアウトが確定しました。ディスプレイに必要なものはほとんどダイソーで購入しました。近所にあるダイソーはそこそこの大きさだったのですが扱ってない商品もあったので、ダイソーのWebサイトで大規模店を検索して、そこまで足を伸ばしたりしました。
購入するものを選ぶときにmochikoさんのまとめが参考になりました。だいたいのものは前回参加の時に既に自力で買っていたんですが、ある程度網羅されている信頼感があるので差分を確認するだけで済みました。具体的には段ボールカッターが役に立ちました。
そして、レイアウトを随時Twitterで公開したら、いろいろとアドバイスをもらえてブラッシュアップすることができました。これはホントに助かりました。
なお、スペースレイアウトの中で、スペース番号を一番大きな文字にしています。これはうちのスペースを探す人にもそうでない人にも一番の目印になり、遠くから読んでもらえる文字だからです。このようにスペース前に来てくれる人の便宜をできるだけ図るよう注意を払いました。
ほかにも基本的ですが、
・商品の価格が絶対に見えるようにする(見えなかったら商品と認識されない。価格を隠すのは完売したときだけ)
・商品形態を明示する(冊子セットとダウンロードカード単品の2種類があることが色で分かる)
・無料配布物と有料頒布物との区別がきちんと付くようにする(区別が付かないと無料でも持っていってもらえない/名刺サイズのカードなどは有料でも間違えて持っていかれる)
・混雑時に机の上だけ見ても内容を把握できるようにする(スペース番号以外、重要な情報を前垂れの紙に書かない)
・在庫があるのかないのかが一目で分かるようにする(奥から都度取り出す方式は分かりにくい)
などの基本を押さえておけば大丈夫だと思います。細かい小手先のテクニックはこれらの基本を押さえた後に考えるべきです。
それから、canvathでサークルロゴ入りの布を発注しようかと思っていたのですが、結局は紙を前に垂らすのでロゴなど目に入るはずがないのでやめました。
見本の準備
事前の通販予約を考えて本の一部を自宅分納にしたんですけど、これは副次的な効果があって、実際に積み上げた場合のボリュームがシミュレーションできることと、立ち読み用の見本を現地でシコシコ作成する必要がないことです。
うちの見本は見本シールをテープで貼って、百均で買ったビニールカバーをかけるだけなんですが、3冊(自スペース用2冊+立ち読み広場用1冊)用意するだけで5分くらいかかりますし、委託本含めて全部で9冊も用意するとなると設営時間の大幅なロスになります。ところが3つ用意しておけば時間短縮だけではなく、初めて作る人にとっての完成見本になるので作成を任せてしまえます。実際、設営の時はこれが効果を発揮して、時間内に間に合わせることができました。
3冊のうち立ち読み広場用の1冊は、QRコードを貼り付けてその場でサークルチェック or BOOTH経由での購入ができるように配慮しました。bit.lyのアクセスログを後から確認したところ、さすがにその場でサークルチェックした人はいませんでしたが、BOOTHの方には3回アクセスがあったので、QRコードをちゃんとスキャンしてくれる人はいるんだということが分かりました。
また、意図しなかった効果としては、今回私の本は冊子・ダウンロードカードの両方が完売になったまま最後の1時間を迎えることになったので、スタッフに確認した上で急遽立ち読み広場の見本を回収し、貼り付けたQRコードをスペース店頭に置いてそちらを案内することができました。実際、スペース店頭で2人の方がスキャンして帰ってくれました。(なのでスキャンされたのは全部で5回)
売り子マニュアル
売り子は2つの委託元に協力をお願いしました。一旦は私に頒布を委託してくれたことにはなりますが、どうせなら自分の手で売る体験をした方がよいかと思ったからです。
両者とも快く応じて頂き、合計3名に売り子をやってもらえることになりました。表面的には3つのサークルが相乗りした合同サークルみたいな感じになりますが、合同サークルと異なるのは頒布の最終責任は私一人だということです。権利関係・責任分界については委託まわりの話題だけを切り出した別記事を用意して詳しくお話ししようと思います(記事公開しました)。結果的に、責任の所在が明らかなので何をやるにしろ、やらないにしろ私の一存で決められるのでとても進めやすかったです。
そして私からは売り子3人には、売り子マニュアルを作成して渡しました。3人ともおそらく技術書典の売り子は未経験(もしかすると同人サークル活動自体が未経験?)なので、経験者である私が誰でもできるようにかみ砕いてやるべきことを整理する必要がありました。4月3日の入稿完了後からちまちま作り始め、4月9日に完成しました。
結果的にはこのマニュアルを事前に読んでもらうだけで、顔合わせもなしにいきなりぶっつけ本番となったのですが、マニュアルの内容をみなさんにしっかり把握して頂いていたので、スムーズに当日を迎えることができました。
売り子3人とは別に、混雑時の整理担当として私のリアル友人にも協力依頼をしていました。この方にはスペースへの合流はせずに一般入場で自由に買い物してもらって、私が混雑ヤバいと感じたらすぐに呼び出して協力してもらうというバックアップ的な立場です。ですので私と売り子3人とバックアップ1人の最大5人体制での頒布ということになります。
この体制はとてもよく機能して、全員がほどよく余裕をもった状態が維持できたと思います。
売り子さんが病欠したことも考えて、この整理担当にはあらかじめ売り子マニュアルを読んでおいてもらいました。そのときに別の友人から「このマニュアルは出来がいいので、公開したら需要がありそうだ」と言ってもらったので、汎用的な部分だけを切り出して公開することにしました。
ホントはここまで手の内を見せるつもりはなく、公開版を作りつつも公開直前まで悩んだのですが、自分で作ったマニュアルなので何か見落としなどがあるかもしれないという不安があったため、コミケ頒布や技術書典のチーム頒布の経験のある人(私はどちらも未経験)に目を通してもらって何か問題点を指摘してもらえるのではないかという期待が勝り、公開しました。
その結果、Auth屋さんところの同人売り子経験者(特別にお願いして目を通してもらった)からは特に指摘はなく、チーム頒布経験者のおやかたさんからは「ほぼ完璧」というお墨付きを頂いたので、安心して当日を迎えられました。リアル友人のサークル主(初参加者)もこのままコピーして使うと言ってくれて嬉しかったです。
決済方法
すでに述べたように3月31日の時点で決済方法を含む売り方は確定して公開済みでしたが、現金・かんたん後払い・pixiv PAYの3種類を受け付けるというのは直前まで悩んでいました。
前回の技術書典5では現金とかんたん後払いの2種類で受け付けていたのでその2つは確定としても、pixiv PAYを追加導入するかどうかは微妙なところでした。最終的にはpixiv PAYを利用した前払い取り置きを採用したためどちらにしろpixiv PAYのセットアップが必要になり、どうせなら当日決済にも流用できるなということで採用が決まりました。フタを開けてみれば当日の決済金額中0.6%(6件)しか決済されなかったので、採用するほどの費用対効果もなかったことが分かり(使ってたの全員ピクシブ社員ではないか疑惑)、以後は技術書典ではうちが採用することはないと思います。
なお、前払い取り置きでかんたん後払いが使えれば良いのですが、残念ながらかんたん後払いはイベント当日しか使えないという仕様なので見送りました。PayPayとかならもっと利用率が高かったのかもしれませんが、書類を提出して事前審査を受ける必要があるし、振込手数料などが必要になってくるため検討に上がりませんでした。
領収書
技術書典というイベントの性格上、領収書を要求されるという話はチラホラ聞きます。前回は運良く無縁でいられましたが、民法上領収書を希望された場合拒むことができないことになっているので、今回は準備することにしました。
ダイソーで複写式の綺麗なのを100円で売っているので準備は簡単です。あとは時間短縮のために日付・発行元(住所・氏名・サークル名)・但し書きだけ何枚か書いておいて押印しておきます。宛名と金額が空欄なのに押印するのは自分が印鑑と共に留守にしている間も対応できるようにするためで、空欄なので悪用されないように特に気をつけるようにします。
当日実際に領収書の希望があり、全部で3件ありました。用意しておいてよかったです。
お釣りの準備
開幕間もない万札の着弾は前回2回ほどあったので、今回は千円札を30枚ほど用意しておきました。今回これは杞憂に終わり、初回の万札着弾はだいぶ捌けた後になりました。
頒布内容がそれぞれ1500円、1000円、500円という3種類なので500円玉を用意する必要がありました。これは委託元の方が準備すると申し出てくださったので、事前イベント参加の際にコインケースと共に受領しました。全部で50枚です。フタを開けてみると50枚も使うことはなくて済み、最終集計時にも50枚程度が残っていたので増えも減りもせず丁度良い結果になりました。
おまけ
最終被チェック数の半分に達したのはイベントのほんの2日前でした……こんなん予測不能やん。