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yagitch.comの用意周到な技術書典6(執筆~入稿編)

みなさん、技術書典6お疲れ様でした! この記事では私が技術書典6で冊子400部完売するまでにやったすべてのことをまとめていこうと思います。

私はわりと時間に余裕がある方なので、執筆・PR・事前準備のどこをとってもやり過ぎなくらい慎重かつ用意周到に進めてきました。イベントが終わったいま、色々な人がサークル参加レポートを上げたり、つぶやきで活動報告をしたりしていますが、どれを取っても「ああ、それやっておけばよかった!」と思うことが皆無です。それくらいあらゆることを考えて事前準備を行いました。唯一間違ってたのは「頒布数を過少見積もりしていた」点だけです。(いちばん致命的!)

まずは申し込み、そして線表を引く

勝負はお正月から始まっていました。この時点では「次の技術書典6は4月頃開催」としか明らかになっていませんでした。4月初旬開催・4月末開催、どちらであっても今までの経験からおそらく1月前半には何らかのアナウンスないし申し込み開始があるだろうと踏み、次回作への構想を練っていました。既にアドベントカレンダーに書いた時点でテーマはある程度固まっていて、「アウトプットを決意してから実際にアウトプットするまでを最適化する方法を書く」という柱ができていました。

そんな中、1月7日に突然技術書典6の申し込み開始のアナウンスがあり、既に心に決めていた私はノータイムで申し込みました。1月7日の22時台の申し込みはほぼ最速ではないでしょうか。

そして、1月9日にサークルカットを作成し、更新。

タイトルはまだ仮ですが、この時点で多くの人に手に取ってもらうためにできるだけキャッチーな書名にしようという意図が見え隠れしています。最終的にはこの仮題は「どっかで聞いたことがある」ということでボツになり、現在のタイトル『継続的にアウトプットする技術』になります。

この時点でひとまず線表を引きます。印刷所のいちばん割引の効く締め切りに合わせるにはどうすればいいかと考え、コミケの場合は開催日の1ヶ月前が早割締め切りになるのを確認し、3/15に入稿データのフィックスと決めました。ここから逆線表を引き、

・1月20日~2月5日 事前の資料整理
・2月5日~2月28日 執筆
・3月15日 入稿データ完成

としました。結果的にはこの線表は1ミリも守られることはありませんでした。

技術書典の申込期限は1月31日でした。印刷用サークルカットも同じタイミングで締め切りになるため、この日までに何とか書名を確実性の高い案にまで絞り込む必要がありました。時間がない中でいろいろ考えて出てきたのが現在の書名『継続的にアウトプットする技術』でした。(この時点では副題なし。サークルカット内の副題のように見えるのはキャッチコピー)

同時にサークルカットも目を引くように美少女を配して、視線誘導するようにしています。(実は私はイラストが描けるのです)

当落発表

2月5日の21時台、既に当落発表が始まっているのをTwitterで知って当選を確認。そして予想していたことに、落選者が続出。これで出るはずの本が出なくなるのは忍びないなと考え、委託を受けることにしました。

tmk.nomさんは私の募集ツイートを見て声をかけてきてくれました。eri_twinさんは適当に目に付いた方だったのでどうですかとこちらから声をかけました。この2つの出会いが不思議な偶然だったことが後にして分かります。
初参加予定だった方から委託を受けることにしたのは、この時点で私の本がそれほど人気になるとはつゆほども思っていなかったことと、技術同人誌の参入障壁はできるだけ低いものであってほしいという私の考え方との、2つが組み合わさってのことです。見ず知らずの人に門戸を開いたのは、自分でもまあ勇気のあることだなと今にして思います。

委託の打ち合わせはすべてTwitterのDMで行いました(最後まで電話番号などを交換することはありませんでした)。私は技術書典のサークル参加の経験が既に1回あるので、すべて私のペースで進んでいきました。私にしてみればすべてが自分の一存で進められるし、委託元にしてみれば各種連絡もアドバイス付きでやってくるので経験がなくてもスムーズに事が進むしWin-Winだったなと思います。

技術書の作り方勉強会、そして判明する事実

2月23日、六本木ヒルズにて運営主催による「技術書の作り方勉強会」が開催されました。たまたま私の友人のサークル主2名が欠席する事情があったので、彼らのために内容を軽くまとめる必要があり、内容もほぼ知ってるし実況ツイートしようと思いました。そして実況ツイートし、友人にはTwilogのURLを送り、あー疲れた疲れたとひとっ風呂浴びてPCに向かい、私は怒りに震えることになるのです。

Togetterまとめに自分のツイートが1つも取り上げられてない。

このAuth屋という方が作成したTogetterまとめには自分がそこにいて実況ツイートした痕跡が何一つありませんでした。いろいろ考えた結果、おそらく自分はこのAuth屋という方から何らかの理由でブロックされていて、だからTogetterまとめにも出てこなかったんだと解釈することにしました。しかし続く2月25日、たまたまTwitterでshadow banというキーワードが話題に上ることになりました。そして知ったのです。自分がshadow banを食らっていることに。

おそらく私が普段肌色成分多めのイラストを描いて上げていることにTwitterはお怒りなのでしょう。shadow banの中でも該当者の多い「search suggestion ban」というものになってしまっていました。これを食らうと他の誰かがキーワード検索したりハッシュタグ検索しても検索結果に上がらず、自分のアカウントで検索した時だけ検索結果に上がるという非常に気付きにくい状態になります。Twitter、意地が悪い! 私は顔面蒼白になります。このままでは技術書典5のとき同様にTwitterで盛んにPRしようと思ったのに、ハッシュタグで見つけてもらえないのなら意味がない。

少し考えて、本アカウント(@yagitch)とは別に告知専用アカウント(@yagitch_tech)を作ることにしました。キーワード検索やハッシュタグ検索に拾ってほしいツイートだけ告知専用アカに切り出して、普段の利用は本アカにするという作戦です。現在に至るまでTwitterの私の技術書典専用の人格となっているyagitch_techはこのようにして誕生しました。Auth屋さんはちっとも悪くありませんでした。疑ってごめんなさいAuth屋さん。

ようやく執筆開始

2月5日に執筆開始して2月末には終えているはずの執筆は3月1日になってもまだ始まっていませんでした。事前に自分に課した参考文献の読み込みが遅延していたのです。3月初旬に予定していた北海道東旅行にまで参考文献(Kindle)とメモ用のコピー用紙を持っていき、雪に囲まれた宿で書く内容を整理し続けるという、私何のために旅行に来てるんだろう? 的な感じになっていました。ようやく着手したのは旅行から帰ってきた3月9日。ここから線表を現実的な線で引き直し、11日かけて40ページを書き進めました。

書き進めれば多少なりとも進捗の予想が付くので、リアル友人に「1週間後(3月21日)にレビュー依頼するから見てね」と依頼したり、この時期には当初線表で設定していた3月15日には全然まったく間に合わないことが分かっているので、印刷所の確定した早割締め切りを確認してそちらに向けてタスクを洗い出したりしていました。

そして3月21日に推敲とセルフ校正まで完了した第一稿が完成。レビューへと回されます。しかし期待していたリアル友人3人のうち2人には都合で断られ、さすがにレビュアー1人だと心許なく感じた私は、Twitterでレビュアーを募集することにしました。幸いにも私は早割。通常入稿の人を捕まえれば忙しくなるタイミングがズレるので相互レビューに好都合です。

そして幸いなことに、カウプラン機関極東支部さんおやかたさんに応じて頂けました。他に委託元のtmk.nomさんも早割っぽいので相互レビューしたり、Teruさんのレビュアー募集ツイートに相互レビューという条件を付けて応じたりして、なんとか5名のレビュアーを確保することができました。

そして同時進行で私もレビューします。私はわりと人の文章を手直しするのは得意なので、空気読まずに山ほどの細かい指摘点を提出して驚かれたりしていました。レビューの方法はGoogle DriveのPDFにコメントを付けていく形だったり、Dropboxのコメント機能だったり、PDFを見てEvernoteに場所と指摘内容を箇条書きにしたりと様々試しましたが、一番便利だったのはDropboxのコメント機能だったように思います。

そして3月23~24日という貴重な土日がレビューと、自分のレビュー結果の反映で終わりました。この時点でまだ表紙には着手できていませんでした。入稿予定日は3月26日です。

表紙をTwitter投票で決めよう

3月23~24日を頑張りすぎたためか、3月25日に一日かけて表紙を作ろうとしても頭と体が動きません。薄々「無理なんじゃね?」とは思っていましたが、これで締め切りを1週間延ばすことが決定します。無理して不完全な表紙を作るより、印刷代に6000円上乗せしてでも1週間確保して完璧に仕上げた方が良いという判断です。そして「どうせ1週間あるなら10案くらい考えて、人に決めてもらった方がいいんじゃないか」と考えました。そうと決まれば話は早いです。それまで地道に取っていた装丁デザインのアイデアメモを眺めて、半日くらいかけて8案をひねり出しました。そしてリアル友人たちに意見してもらって、詳しく言及のあった4案(よいと言った案ではない)を選び、Twitterで意見を募ってみました。

すぐに相互フォロワーさんたち(やくみさんローワンさん、Auth屋さん)から意見が返ってきます。ひとまずはB案とD案がよさげです。ここでTwitterにはアンケート機能があることを思い出して、もうアンケートにしちゃおうと考えました。

48時間かけて集めたのは60票。私のツイートに対する普段のインプレッションの低さから言うと十分すぎる多さです。みんな面白がってくれたのでしょう。選ばれたのはD案でした。一番描くのが面倒くさそうだったので、選ばれたのを確認したときは「もっと楽な案にしておけばよかった……」と後悔したのですが、今思い返してみるとこのD案以外に400部を売り切る力はないのではないかと思ってしまいます。

表紙が出来上がったのは4月1日の21時頃です。世間は令和フィーバーのまっただ中でした。

前払い取り置き

少し前後しますが、3月31日 0:21頃にバーチャル幼女プログラマのきりみんちゃんから技術書典6で配布する本の前払い取り置きをpixiv PAYで試験的に実施するよというエントリが公開されました。これに先立つ数日前に、きりみんちゃんのマネージャーさんとBOOTHやpixiv PAYで事前決済するような形で取り置きを受け付けられないか、という話をしていました。

その時はそれで終わり、取り置き実施の有無も価格も決済方法も特に決定・告知することなく3月31日を迎えていました。このエントリを見て、後に続くしかないと思った私は、取り置きの有無と価格と販売形態、決済方法を全部その時点で考えていた案で確定させ、約2時間後の2:10に#技術書典 yagitch.com の新刊頒布方法(&前払い取り置き)のお知らせという内容で公開しました。

結果的には固定客の多いきりみんちゃんには取り置き依頼が殺到しながら、私の方には閑古鳥が鳴くような有様で、固定客の重要性を感じられるエピソードとなりました。結果的に私の方でpixiv PAYを使った取り置き依頼があったのは1件(あいやさん、ありがとうございます!)でした。

運命の400部

4月2日夕方頃、お茶の水にある日光企画さんに直接入稿しました。

前回の技術書典5ではねこのしっぽさんにお世話になり、対応も迅速・丁寧で何の問題もなかったのですが、今回は早割と印刷部数の関係から予想以上に両者の価格差が開くことになったので、コストの安い日光企画さんにお願いすることにしました。また、直接入稿すると現金還元があると聞いたので、データもその場でチェックしてもらえるし融通も利くかなと思って直接持ち込みすることにしました。

当日は早割セットの期限だったので、早割組が何人かいて待たされるのかな? と思ったのですが、入稿に来ていたのは一人だけで、待つことなく受け付けて頂きました。

ここで少し、印刷部数の確定までの経緯をお話しします。今回刷ることになった400部という数字はすんなり決まったものではなく、被チェック数を横目で見ながら算盤をはじいて、背伸びに背伸びを重ねて決めた数字です。3月18日の時点ではスペースの関係から300部予定を400部に増やすのを一旦は諦めています。

そもそもの300部という数字は、この時点で被チェック数がほぼ線形に推移していたので、そのまま線形回帰してイベント当日11時時点の数字は232という予想が出たことが根拠になっています。

被チェック数はイベント直前に一気に伸びるという特性があるので、その上振れを考慮して最終被チェック数は300とすると、新刊3種類で互いにジャンルがまったく被らないために3種類がそれぞれに被チェックを集めていると見るべきで、1種類あたり100~150。当日需要は最終被チェック数を中心として上振れまたは下振れするので、上振れしたとして200~250。どんなに上振れに上振れを重ねても250部以上は捌けないだろうと踏んで、安全率をかけて完売しないラインは300部とはじき出しました。

ところが、私の本の特性として、深い技術本ではなくライトなソフトスキル本なので被チェック数だけを見ると危険で、当日の立ち読み需要が大きいかもしれないと思い始めました。実際、技術書典5では頒布総数の7割はサークルチェック外のものとなっています。そして上積み分と、技術書典6の規模拡大という要素を加味すると、プラス100くらいは見込めるのではないかと思うようになりました。

そして3月24日の時点では背伸びして400部に増やすのを再度検討するようになり……

400部が確定します。この段階では完全に余ると思っています。答え合わせをすると最終被チェック数は600、当日需要推測600(400部が3時間で完売)、通販需要30なので、次のイベントに余らせるほど刷るとしたら700~800部にしないといけなかったはずです。

そしてこのパターン、技術書典5の初参加時にまったく同じことを経験しているんですね。守って50部か攻めて80部か迷いに迷ったのに、フタを開けてみれば最終被チェック数200以上で当日予想需要も200以上、1時間半で冊子完売というパターン。目をつむって倍プッシュができない。ギャンブラーには向いてないんだと思います。

そんなこんなで入稿の1週間前、3月25日には印刷部数は確定していました。なので日光企画さんの窓口で緊張しながら「よ、よん、400部です!」と勇気を出して伝えたんですが、相手はプロなので顔色変えずに「400ですね~」と応対されてめちゃくちゃ拍子抜けしました。(当たり前だ)

入稿の内容

既にきりみんちゃんのくだりでお話ししたとおり、3月31日の時点で売り方は決まっていました。そしてイベント・通販・ダウンロード頒布のそれぞれで販売開始タイミングを4月14日に横一線に揃えることも決めてありました。通販予約をした方が4月14日に読めるようにするには、ネコポスは日本全国翌日配達なので前日13日に発送しなくてはなりません。なので印刷部数の一部を前倒しする形で自宅への分納としました。

厄介なのは分納するにしても一番早い納期に合わせて印刷代が決定される点です。実は入稿した4月2日はイベント会場直搬の場合の早割セットの申込期限だったため、前倒し分納だとこれが効かなくなります。窓口のスタッフさんに納期を1日早めた場合、3日早めた場合、などを計算して頂きいくつかの案を検討した結果、自宅への分納を前日納期でお願いすると、早割セットは効かなくなるものの各種割引が効いてほぼ早割セットと同等の価格で実現できることが分かりました。しかも印刷完了次第なるはやで送って頂けそう(ただしベストエフォート)だったので、最悪前日に届いても午前中指定なら朝のうちに受取&発送までできて14日に到着させられそうだという見込みが立ちました。

スタッフさんにはこまごまと対応していただき感謝しかありません。今回は対面で相談しながら進められる直接持込にしてよかったと思います。

基本料金 79,520円(表紙込み50ページ・400部)
早割20%OFF ▲15,900円
Pixivプレミアム割引 ▲3,970円
現金還元 ▲3,030円
発送料金 1,000円(自宅分納分)
合計 57,620円

イベント直前編へ続きます。

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