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自分に贈りものをするということ

贈りものをすることが好きだ。
家族や友人が好きそうなものを見つけたときやお礼の気持ちを伝えたいときなど、これまでにも色んなものを贈って、わたし自身も喜ばしい気持ちになっていた(し、私のまわりの人も素敵なものを贈ってくれるひとが多い)。

「贈りもの」と聞くと、一般的にはだれかのためにするものだという印象も強いかもしれないが、わたしは大人になってから、誕生日やなにかの節目に自分自身へ贈りものをすることが増え、自分へも贈りものをするという行為や贈りものについて考える時間、使っていく時間がとても気に入って、日常が彩りのあるものになったと感じている。
また、「古道具と雑貨 田園」をはじめてから、ものがのひとの手によって受け継がれたり、ものを求めたり愛でたりすることが人の暮らしを面白くしたり、灯りをともすものだとも思うようになった。

そして、これからは自分がどんなものが好きでどんなことを考えていて(またはどんなことが苦手で、とか)、ということも少しずつ言葉にしていきたい。
今日はこの数年で自分へ贈ってきたものたちのことを綴っていきたいと思う。

2019年の誕生日:服部克哉さんのマグカップ

少し大きめのマグなのでお花を生けてもかわいいのです

以前「物語のある食卓」という記事でも書いた、服部克哉さんのマグカップ
このマグを買ったとき、私生活や仕事、すべてがしんどい時期だったので、自分を少しでも元気にするために買った。
この頃から毎朝朝食を必ず食べる(飲む)ようになったので、自宅を空けていた日などをのぞいても、1,500日以上くらいの朝をともに過ごしてきたことになる。
一般的なマグカップよりも少し大きめのサイズ感とさわりごこち、夜空のような色合い、すべてがしっくりくるマグカップにはこの先めぐり合えないような気がする。
休日や時間があるときは午前中にコーヒーを2杯飲んだり、紅茶を飲むからとうつわを変えることもあるけれど、毎朝のカフェオレは必ずこのマグ。きっとこれからもわたしの相棒だ。

2020年の誕生日:骨董屋さんのおじちゃんが金継ぎしたおちょこ

2019年後半に金継ぎをはじめてから古いうつわへの関心が高まり、骨董屋や骨董市に足を運ぶようになった。
このおちょこは富岡八幡宮の骨董市で見つけたもの。
当時は練習のためにと欠けたり割れたうつわを譲っていただいたり購入していたが、このおちょこには一目ぼれ。骨董屋のおじちゃんは「俺が金継ぎしたんだよ」と照れくさそうに話していたことを思い出す。
…といっても自宅では日本酒はほぼ飲まなくて、実はあまりたくさんは出番はないのだけれど、今はちいさなオブジェとして自宅に飾っている。
友人を家に招いてごはんを食べるのも好きなので、たまにはそんなときに使えるといいな。

2021年の誕生日:「FUTAGAMI」の栓抜き

以前から気になっていた真鍮メーカー「FUTAGAMI」
はじめてみたとき「これはなんだ…!?」と美しいデザインに惹かれていたことと、その栓抜きの磨きの仕上げを行なうワークショップが誕生日と近い日に開催されることになったので、「体験も記念」と思って参加した。お酒もめっきり弱くなってしまい、これも使用頻度は高くないのだけれど、キッチンの引き出しからちらりと光る栓抜きを見ると心躍る。たくさん使うことだけがものの良さではないと思わせてくれる存在だ。そしてこの栓抜きは私の好きなKIRINJIの堀込高樹さんも持っているらしくてさらにうれしい…!(どんな表情で使っているのかしら、と気になるファン心)

この年の10月にはじめての北陸・鯖江に行った。目的はクラフトイベント「RENEW」のため。以前一緒に暮らしていた人とペアで買ったお椀をそのまま使っていたのも何だかなぁという感じだったことと、汁ものをほぼ毎日いただくこともあり、新調の機会を探していたのだった。たまたまセール品で理想の汁椀にめぐり合えたし、はじめての漆器デビューなのもうれしい。

高台が浅くて水がたまらないところも好き

お茶碗や汁椀など、使用頻度の高いうつわはやっぱりとびきり気に入っているものが良いなぁと思う。

山形への移住が決まった記念の茶筒

半分勢いで決まった山形への移住。応募したころ、西荻の「fall」で心惹かれた茶筒。在宅勤務で(当時は)自宅で飲み物を飲む機会がこの数年で増えたので、お茶もいろいろいただくようになった。「なんだか東北っぽいパターンだなぁ」と思い、もし移住することになったら購入しようと思っていたのだが、先になくなったらやだなと採用通知が来るよりも前に買ったら、その数十分後に採用の知らせが来たのだった。そういえば、書類が届いたと前職の上司から連絡が来たのもfallの前だった。もしかしてfallは私にとってのパワースポット?

ちなみに購入したとき、店主さんにどこの地域のものか聞いたら、おそらく東北だと言っていた。
今は茶筒のとなりに、山形の友人から贈ってもらった赤べこのお箸おきを飾っている。

2023年の誕生日:高橋ヨーコさんの写真集「WESTSIDE HOTEL」

実は2020年から「自分の誕生日には食生活に関わり、長く使えるもの」を買うというテーマを設けていたのだが、昨年はいったん小休止。昨年は「田園」をはじめたり、パラレルワークにも関心が高まっていったこともあり、平日は〇〇をして週末は△△(お店など)をしている方の記事などをよく読んでいた。そんなときに心惹かれたとある雑貨店の店主さんがいて、その方の世界観を見てはときめき、何度もインスタのページを遡って保存したりしていた。その店主さんが気に入っているという、高橋ヨーコさんの「WESTSIDE HOTEL」という写真集を購入。高橋ヨーコさんの写真は雑誌などでお見かけしたことはあったが、さらに好きになった。私は写真を仕事にしていないけれど、こんなふうな写真をいつか撮ってみたい。(簡単にいうなって感じですが…)
最近は好きなひと、ものがどんどん別の「好き」を連れてきてくれるなと思うことが増えた気がする。

そして心惹かれたと言っておきながら、恥ずかしながらわたしはまだその雑貨店に行けていない。今年こそ必ず行きたい、松本の「REVONTULI」さん。長野には行きたい場所がたくさんあるから、できるだけ日数をとって行きたいと思う。(あと長野といえばツルヤにも行きたい!!)

2023年のクリスマスプレゼント:「キクス制作室」のマフラー

ラッピングに添えられていたドライフラワーも芳賀さん宅のお庭のものらしい

移住一年目の誕生日かクリスマスには、山形に来たからこそのものを贈りたいと考えていた。そんな中インスタの投稿を見て惹かれた、草木染めをしている「キクス制作室」さんの草木染めのマフラー。明るい色かつ春先まで使えそうなやさしい色合いのマフラーがほしかった…!と思い、制作している芳賀さんとお母さんに会いに行った。芳賀さんとも少ししか話したことがなかったし、友人の家族と話す機会もそう多くはないけれど、はじめましての私をあたたかく迎えてくださったのがとてもうれしかった。芳賀さんのご実家は家族の好きなものや心地よさが詰まったやさしくてあたたかい場所で、夢を見ているような気持ちになった。

今年の冬はマフラーをたくさん使うほどは寒くなかったし私は東京に戻ってきたけれど、これからもこのマフラーを愛でていこう。山形に行くときに「キクス制作室」さんから草木染めも習いたい!

協力隊として一年過ごした記念:成井窯の湯呑み

なにかの節目にはやはり食べものかうつわ、な私。
協力隊として山形で一年を過ごし自分をねぎらうために求めたのは「成井窯」の湯呑み。マグカップはいくつか持っているが実は湯呑みは持っていなかったことと、ひとつの漢字がどんと描かれているのが面白くて、どのマグにしようか長い時間悩んだ。(どれも可愛らしくてよ…)「福」の文字に決めたのは縁起がよさそうだったことと色味も気に入ったこと、それから「福」の文字の中に自分のお店「田園」の「田」が入っているから。

この湯呑みを求めたときは「東京に戻ろうか」と悩んでいる時期だったが、いま東京の部屋でこの湯呑みをそばにnoteを書きながら、東京に戻ってきて良かったと思っている。それは山形がいやだったからというわけではなく「いまの自分は東京に戻る方がいいな」と判断したためだ。「たった一年しかいなかった」とか「移住失敗」でなく、山形で過ごしたからこそ得られたもの、さまざまな出来事、感じた気持ち、関わったひとたちへの想いをむねに暮らしていきたい。ここではまだうまく言葉にできないけれど、山形でのことは別で記事を書いたり、東京にいても山形(地方)のような暮らしをちょっぴりでも実践していきたいと考えている。

「自分へもの、あるいは体験などを贈ること」は日々を忙しく過ごす私たちにとってそう頻繁にできることではないかもしれない。
ただ、なにかの節目や記念に自分へ贈ったものやそのものと過ごす時間は、自分のことを励ましたり勇気づけてくれたり、よりすてきな未来へ導いてくれると私は信じている。


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