三つ子の魂百までも番外編(9)
9
「厄介な事を引き受けたな。幽霊を探し出すなんて、・・・
何処の世界に行けば、幽霊に会えるんだ。」
と、伊東五郎は眉間に皺を寄せ見上げながら、呆れた様に静かに言った。
伊東は、裕美の叔父にあたり元刑事で今は、探偵の仕事を手伝っている。風貌は伊東四郎に似ている。
「そんな事件引き受けて大丈夫なの!
相手は幽霊かも知れないよ。」
と、姉の直美は心配そうに裕美の顔を見ながら言う。
杉田は、何も言えずに黙っている。
時刻は、午後の6時を廻っていた。
「大丈夫よ。お姉ちゃん。大丈夫!心配しないで。
だけど、こーちゃんを私に付けてね。二人でやるから。
いいでしょう。依頼者の人、困っているの!
もう、着手金も貰っているし。」
「何でこんな案件を一人で決めたのよ!」
と、直美は少し語気を荒げた。
「あの〜、僕想うのですが、この案件は裕美さんじゃ無いと解決出来ないと思います。」
と、杉田公一は、身体に似合わず弱々しく言った。
「また、裕美の霊感商法か?!」
と伊東は、呆れた顔をしている。
裕美は、むすっとした表情で、伊東を見ている。
……どうせ叔父さんには判らないわ。私の凄い能力が……
「でも、裕美さんの霊能力は・・・」
と言って、杉田は言葉を濁した。
「ふっ〜と」直美さんがため息をついた後、
「引き受けた以上、やるしか無いわ。私は霊能力なんて信じないけど、裕美のことは信じてるわ。裕美、絶対に解決して。
この事務所の命運を賭けるつもりで、頑張りなさい!」
と、代表者として、しっかりと言い切った。
裕美の表情は、決意にみなぎり、
「お姉ちゃん。私 頑張るよ。」
と、力強く熱い声で言ったが、
その光景を冷静にそして不安気に観る、伊東であった。
二人が事務所を出て行った後、裕美と公一は打ち合わせした。
依頼者の要件を詳しく伝えた後、裕美は言った
「私の霊能力を信じてくれるのは、公ちゃんだけよ。
叔父さんは全く信じていないけど、お姉ちゃんは、少し信じかけてはいるの。でも認めてはくれないの。そんな事はいいのだけど、
公ちゃん、先ずはこのマンションで事件があったかどうか調べてみて、マンションで無ければ、近くでもいいわ。なんでも良いから調べてみて。」
「解りました。一度刑事の友達に聞いてみます。」
「それと、大島晃子さんのマンションで張り込みをしないといけないの!しかも夜から朝方にかけて。」
「えっ!私と大島晃子さんと、二人っきりですか?
そんな事は・・・。やっても良いですけど・・・・」
と、何故か照れながら杉田は言った。
「馬鹿!」と言って裕美は杉田の頭をコツク。
「そんな事ある訳無いでしょ。私も一緒よ!本当に馬鹿なの」
と、呆れて物が言えないと言う顔で言った。
「だと、思いましたが、裕美さんの言葉が足りないし・・」
と、杉田公一は残念そうに頭を掻きながら呟いた。
「二人で張り込んで幽霊と会話するのよ。
幽霊を見つけるのよ、判った!
馬鹿 公一!」
と、言葉が荒い。
……これってパワハラでは無いのかな……と公一は思っていたが
……もしかすると、裕美さんの嫉妬かも知れない……
と、公一は良い様に解釈していた。
少し、にやけた表情で裕美を見ている。
「何、笑っているのよ!」と、またもや杉田の頭はコツかれた。
「明日から、真剣勝負よ!ここの事務所の命運を賭けて戦うのよ。」
と、裕美は杉田に気合を入れたが、
杉田の表情は、にやけていた。
https://note.com/yagami12345/n/ncc25bc2a934d