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(続)避暑地を求めて(410字の小説)


「貴方は、いつ此処に来たの?」
と、恐る恐る私は聞いた

「昨日だ。洞窟に入ったら、出れなくなった」
薄暗いので表情は見えないが、声だけは鮮明に聞こえる。

「私も出られ無い、困った事になった」

「そんな、泣き声で言うな!此処はいい所だよ」

と、何故か声が明るい。
「何故、そんなに明るいのですか?」
と、不思議に思って聞いてみた。

「入って来たんだから、出口はあるよ。
無かったら可笑しい。此処で暫く暮らすよ」
と、能天気な男だ。
「食べ物はあるのですか?」
「まだ、あるよ。」
と、不気味な声。
「でも、いつかは食べ物、無くなるでしょ?」

「俺は此処から出て行っても、行き場が無いんだよ。」
と、投げやりに言う男。
「でも、餓死するよりも、ましでしょう」
「うるさいな!ほっといてくれ」
と、怒る男。
雰囲気の悪さを感じて、この場を去り出口を
探した。

神は私に味方したのか、無事に出る事が出来た。
外に出ると警察の人達が喧騒としている。

「脱獄犯を追っている」との事。

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