大きな砂時計(2分位で読める小説)

暑い日差しを浴びながら、
僕はユニシロに向かっている。
この前購入した「笑いの壺」のクレームを言いに
ユニシロに行くのだ。
ユニシロは、いつもの様に閑散としていた。
…あんないい加減な物を売っているから、
お客が来ないんだ…
と、僕は怒りと同時に腹で笑っていた。

店に入るなり僕は勇んで店長を呼びつけた。
店長はいつもの様に揉みてをしながら、
僕のところにやって来る。
「あの〜、この前購入した笑いの・・・」
と、喉まで出かかったのに、店長に気勢を制され、
僕は言葉を飲み込んでしまう。
「お客様、今回は優れものが入ってきましたよ。
これは凄い物です。」
と、口角を上げて無理に笑顔を見せる店長。
好奇心の強い僕は、その言葉に体が反応してしまう。
「何ですか?その優れ物って?」

「これはですね。・・・・」
と、店長に案内されるまま、
僕は店長の後を着いて行った。

店長は、1mぐらいの大きさの砂時計を指さし、
「この砂時計は、そんじょそこらにある物とは
全く違います。驚きの砂時計です」
と、少し興奮気味に言う。
「こんなに大きな砂時計、見た事が無いですよ・・・」
と、後の言葉が続かなかった。

「でしょう、大きさだけでは無いのです。
この砂時計の秘密は・・・」
と、ニコヤカに言うが、前の時もこの顔に騙された。
でも、後の言葉が気になり
「秘密って何ですか?」と、興味を示してしてしまう。

「それはですね。・・・・」
と、急に小声になる店長。
僕は自然と耳を近づける。

店長は内緒話をするかの様に僕の耳元で、
「この砂時計は、時間を戻せるのです。
解りやすく言うと、この砂時計が作動している時に
失敗や嫌な事、もう一度やり直したいことが
出来た時に砂時計を逆さまにすれば、
時間が戻ってもう一度やり直す事が出来るのです。」

「・・・・・はあ?!
一体何を言っているのか解りません。」
と、僕の声は不審の感情そのままだった。

店長は僕の耳元から離れ、
「要するに、この砂時計の作動している時に
失敗や取り返しのつかない事があっても、
砂時計をひっくり返せば時間が戻り、
もう一度やり直せるのです。」
と、今度は興奮したのか、大きな声で言った。

「そんな馬鹿!そんな時間が戻せる?
そんな事、信じられないよ。」
と、言ったが、店長は僕の言葉を無視して言う。
「ただし、この砂時計を使えるのは一回きりです。
また、砂時計の砂が落ち切ってしまったら戻す事は出来ないです。
更に、この砂時計のあるところで無いと効力は有りません。」

「は〜あ(о´∀`о)と言う事は、この砂時計をいつも持っていないといけないのですか?
こんな大きな物持ち運び出来ないですよ。
それに、いつ失敗するか解らないのに、砂時計を作動出来ないでしょう。
しかも、砂時計の砂が落ち切ってしまったら終わりでしょ。
こんな商品は、買う事が出来ないですよ。」

「誰が、これを売り物と言いました?
これは貴方に無料で差し上げますよ。
いつもご贔屓いただき感謝の気持ちを込めての
プレゼントです。お持ち帰りください」

僕は只と聞いて安心して、砂時計を頂いた。
帰り道は大きな荷物で大変であったが、
楽しみな物を貰い満足であった。

…只で貰ったのだから、笑いの壺の事は許してやるか…

意気揚々として部屋に大きな砂時計を置いたのだが、
これをいつ使うかを思案中だ。
失敗する前提で物事を為す何て考え難い。
取り返しのつかない事っていつか解らない。
また、どの場所で起こるか解らないのに、
砂時計を持っていく事は大変だ。

狭い部屋に大きな砂時計。
それと、笑いの壺。
居住空間が少ないと感じながらも、
僕は今日も元気で暮らしている。


「店長、良かったですねえ。
あんな売れ残りの砂時計。
処分するにも費用が掛かるし、
只で処分できましたね。
この前は壺だったし。」

「そうだね。アホは何処にでもいるね。」

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