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名器と言われるお皿(最終回)ユニシロシリーズ(2分で読める小説)


僕はユニシロの店に入るなり、大きな声で店員を呼んだ。
1秒でも早くこの絵皿を返したかったからだ。
僕はこの絵皿を購入した時は、この絵を見るたび、
癒される想いであった。
ところが今では、癒されるどころか
恐怖と汚さを感じてしまう。
それが残念でならない。
星太郎にこの様な絵になった事を知らせるべきかと
悩んだが知らせずにいた。
思い出は美しい方が良い。
だが、現実を見つめ無ければいけない。

出て来たのは女店員。
背の高い女性で、笑顔で出迎える事も無く僕に接して来た。

「何のご用件でしょうか?」
と、機械音のような声である。

「男の店員はいますか?」
と、僕もぶっきらぼうに言った。

「男の店員は、店主しかいませんが、呼んできますね」
と、きびすを返し店の奥に入って行く。

すると、愛想笑いの揉て手男が出て来た。
「お客様、お久しぶりです。
いかがでしたか?あの絵皿は。」
と、笑みを浮かべて僕の顔をみて言う。

「確かに、絵が変化して行ったのですが、
最初の可憐な少女から、
今では、凶暴で汚らしいカッパになったのですが、
何故でしょうか?」
と、僕の想いをぶつけて聞いてみた。

「それは、私にも判りません。
何故その様な姿になってしまったのかは」

「あの〜、この絵皿、怖いので返したいのです。
もちろん、お金は要らないです。ダメですか?」

「お金が要らないのであれば、いいですよ。
そこに置いて下さいね。」
と、快く引き取ってくれた。

僕は安心して家に帰る事ができ満足であった。

それから数日過ぎたある日、
ふとあの絵皿の事が気になり
また、あのお店に顔を出した。

笑顔で出迎えてくれる店主。
この笑顔に僕は惹きつけられてしまう。

「何の御用でしょうか?お客様」

「ちょっと、この前の絵皿が気になって来たのですが?
どうなりましたか?」

「ああ、あの絵皿ですか?
もう売れましたよ。
外人さんが買っていきましたよ。」

「外人さんが!あの絵皿をですか?」

「そうです。『美しい』と言ってました。
そして『これは名器だ』とも言っていました」

「そうですか?名器ですか。
私には怖い絵でした。
最初のイメージと全く違ってしまったので
残念で仕方がないのですが、
少し気になって今日ここに来てしまいました。
外人さん、大事に使ってくれますかね?」

「さあ〜私には解らないですな。外人のする事は、
飽きたら捨てるんじゃないかな。どっちにしろ
私には関係のない事ですから」
と、店主は冷たい言い方だった。
その言い方に、僕の心に冷たい風が吹いてくるのを感じた。
外人さんは、あの様な気持ちの悪い絵皿
を、何故名器と思ったのだろうか?
外人と日本人の文化の違いだろうか?
それとも、その外人の好みだったのだろうか?
どこの外人さんか解らんないけど、
僕が毎日磨いて拭いていた絵皿
を、粗末にしないで欲しいな〜
と、何だかセンチメンタルになる僕だった。

あの絵皿、大事に使われて欲しい。
僕には無理だったけど、大事にしてあげて欲しい。
身勝手な僕の想いだけど。



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