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(新)ブラックドクター(3)(2分で読めます)



彼は席に座ろうともせずに、
彼女を見下ろし、

「君が、松原千恵子さんかね?」
と、低い静か声で言う。

松原千恵子は静か立ち上がり、
彼と目線を合せ
「はい、松原千恵子と申します。
あなたは、ブラックドクターさんですか?」
と、彼女しては珍しく声が嬉しさを伝えていた。
彼は右手を差し出して
「そう、私は人からその様に呼ばれている
ブラックドクターです。宜しく」
と、握手を求めた。
握手を交わした後、両者は向い腰を下ろした。

ウエートレスが、氷の入った水を
もってきて、注文を聞きに来る。
彼は、ためらう事も無くホットコーヒーを頼んでいる。

「待たせてしまったね。少し手間の掛かる手術だったので、
連絡もせずに申し訳ない」
と、謙虚に詫びた。

「私は、それほど忙しくもないので・・・
気になさらずして下さい」

と、彼女は冷静に答えているが本心で言っているのかどうかは判らない。

「貴女からの手紙を読んでみたんだが
『難しい事を私に頼みたい』
と言う事が書いてあったのだが?
何かね。難しい事って」
と、静かな口調で話してくる。

「実は私、子供が欲しいのですが、
男と交わるのが嫌なのです。
かと言って、体外受精では無く
私自身のクローンが欲しいのです」

「クローンですか?・・・
クローンを作るのは、私に取ってそれほど難しくは無いですよ。
でも、それを育て誕生させるのは難しい!
それに、倫理的に見ても可笑しい。」
と、否定的な態度であるが、目が輝いている。
「仮にクローンを作ったとして、どの様にするつもりですか?
貴女の子宮に注入するのですか?」
と、興味があるのか尋ねてくる。

「それは、今は言えないのですが・・・
私のクローンの卵子を作った時に教えます」

その時ウエートレスがコーヒーをもって
やって来た。
ブラックコーヒーをブラックドクターの前に
置き去って行った。

次に続く






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