軋む恋(三分ぐらいで読める小説)(1600字)
二人が出会ったのは、ある出会い系のサイトだった。
最近出会い系サイトは数多くあるのだが、
何の目的でそのサイトに登録しているのだろうか?
遊び相手を得るためなのか?
または、真剣な交際をして結婚相手を探しているのか?
それとも、会うつもりも無くひやかしているのか?
そんな出会い系サイトに申し込んだ者同士が、
今日初めての出会う事になる。
彼は嬉しさと不安と少しの恐怖を抱えていた。
…彼女と会うのは今日が初めて。
サイトでのメールの交換では話が盛り上がっていた。
気も合いそうだが、実際に話をしたら
どうなのか?写真でしか顔も知らない。
あの写真の顔通りならけっこうな美人であるが、
本人とは限らない。
あれほどの美人が、何故出会い系のサイトに申し込みするんだろうか?
また、僕の顔を見たら嫌われてしまうかも知れない。
彼のアイコンはイラストだった。
そのおかげで顔は知られてはいない。
また、彼女のバックにはもしかすると、怖いお兄さん達が居るかも知れない。
だが会ってみたい。会いたい!…
揺れる心の彼だった。
そして、悩んだ挙句に答えを出す。
彼女は悩んでいた。
今日会うべきか、会わずにすっぽかすべきかを。
何故なら、サイトに掲載した写真は彼女の友達の写真。
友達の写真を無駄で加工して掲載したのだ。
会ってくれる人が居るなんて思ってもおらず、
ひやかしのつもりで、登録してしまった。
ところが、ある男からのメールに面白さと喜びを感じて
何通ものメールを交換してしまう。
まさか、会う事になるなんて!
顔を見られたら、嘘がバレるどうしよう!
彼女の結論はこれしか無かった。
彼は悩んだ挙句に、遊び人の知り合いに電話をした。
その遊び人の男の名は、豊田進。
彼は以前ホストクラブで働き、かなりの蓄えを持っているとの噂の男。
豊田に事情を話し、「今日女性と会って欲しい」と頼みを入れた。
豊田は二つ返事で快く了解してくれる。
私は、豊田の後を付け二人を観察することにした。
彼女の結論は写真の友達に相談し、
今日その彼と会ってもらう事であった。
その彼女の名前は、鈴木エリカ。
エリカは最初は拒んできたのだが、
好奇心の強いエリカは、渋々ながら引き受けてくれた。
そして、出会いの場所の
「ケーキの美味しい喫茶店」に出向いて行く。
彼女もエリカの後を付け、その喫茶店に向かう。
紹介が遅れたが、彼女の名前は、日野敦子。
彼の名前、本田健。
本田も豊田の後を付け、
「ケーキの美味しい喫茶店」
に行く。
そして、豊田の様子を伺う。
しばらくすると、写真の彼女が入店してきた。
写真通り綺麗な人である。
豊田の目が輝きを増し、好色な目付きで彼女を見ている。
会話が弾んでいる様だ。楽しげな二人を見ていたら、
嫉妬の気持ちが本田の心に湧き起こる。
本田は豊田に頼んだのを後悔したが、後の祭りである。
二人は仲良く喫茶店を後にして出て行った。
…豊田の事だ!この後ホテルのベッドを揺らすのだろうか?…
と、卑猥な妄想をする本田だった。
それと同時に虚しい心が湧き起こる本田。
ふと、前を見ると一人でコーヒーを飲む女性。
出会い系の美人とは違うが、質素で控えな感じの女性。
…何故一人でいるのだろうか?…
好奇心が彼を奮い立たせる。
普段はおとなしく、女性に対して臆病で勇気のない本田であるが、
豊田達の姿を見ていて、嫉妬を感じたのだろう。
自然に彼女に声をかける本田。
「お一人ですか?」
驚き、顔を上げる日野。
目と目が会う二人。
運命の二人か?
日野敦子も感じていた。
豊田と鈴木のあの様子を見て、寂しさと羨望と嫉妬を!
日野敦子は本田の同席を拒む事なく許す。
二人は何故か意気投合して話しが弾む。
本田進は日野敦子と楽しい会話を交わす事になる。
そして、二人は交際することを約束しあう。
軋む恋とは何だろうか?
この出会い方は普通とは違い軋んでいるのか?
本田と日野には恋の軋む音は無い。
だが、この場所では軋む音が聞こえないが
違う所では聞こえる音。
これが軋む恋か?