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(再掲載)私は誰⁉️パラレル版(3)警察署にて(読むのに5分は掛かる小説)
私は竹中刑事の態度に、少しイラだった気持ちで言った。
「私の記憶はまだ戻っていません。ただ、大学の教授の話によれば、『私は小山内教授と同じ研究をしていた』と言う事です。
でも、その研究の詳しい事は、大学の教授達も知らない。
私が一番知っているみたいですが、記憶が未だに回復していません。」
小林教授も私の言葉を補うように、竹中に告げた。
「小山内教授は優れた科学者でした。彼のしていた研究も
完成したらノーベル賞を取れるぐらいの研究でした。」
「それほどの研究をしていたのかい?惜しい人を亡くしたな」
と学長が残念そうにつぶやく。
「小山内教授の交友関係を洗っているのですが?
知っている人、誰かいませんか?」
と田中刑事が聞いてきた。
小林教授が
「何か、美人の女の人から援助を受けていたと、大学の事務員が言っていました。
もしかして、男女のもつれか?金銭トラブルでもあったのでしょうか?」
と、少し嫉妬と僻みを込めた言い方である。
二人の刑事は黙っていたが、しっかりとメモは取っていた。
「詳しい事は、その事務員に聞けば良いですか?」
と田中刑事は聞いてきた。
私は疑問に思っている事を思い切って、
「小山内教授はいつ亡くなったのですか?
またいつ発見されたのですか?発見された場所は?
身元の確認はどのようにしたのですか?」
と矢継ぎ早に聞いた。最も関心のあるところでもある。
「この事に対して、詳しい発表はしていないのですが、
特別にお話します。警察の方では、小山内さんは殺されたと
確信してます。
また、遺体の状況から見ると、死後一か月以上は経っているとおもわれます。
発見された場所は、◯◯のところにある森の中で、違う場所で殺され、遺棄されたと思われています。」
「遺体の身元は、どの様に確認したのですか?」
と、聞く私に、田中刑事は、
「歯型に特徴があり、それで断定しました。」
「確かに、小山内君の歯型は特徴的ですね。
それ以外に何かありましたか?それと死因は何でしょうか?」
と今度は、小林教授が積極的に聞いてきた。
「死因に関しては、まだはっきりとわからないのですが、
おそらく暴行されたのでしょう。」
「何故、死因がはっきりしないのですか?遺体の損傷がそれ程
酷いのですか?」
と私は不思議に感じ聞いた。
「実は小山内教授の遺体が発見された場所は、野犬や獣の多くいる場所で、遺体が食い散らかされた様に損傷しているのです。
木には首を吊ったかの様にロープが有り、何らかの弾みでロープが切れ、落下したとも考えられるのですが、これは犯人が自殺に見せかけるために作った物だと断定しました。」
と、田中刑事が自信を持って言った。
「何故、犯人が自殺に見せかけて作ったものと断定したのですか?」
と学長が不思議そうに質問した。
「一人で首を吊るには、木の枝が高すぎる位置にあるのです。
首を吊ろうとしたならば自殺する為には、協力者が最低一人以上は必要です。
小山内教授だけで首を吊ろうとしたら、梯子か脚立がいる。
でも現場には、梯子も脚立も無かった。協力者が居ないと、
脚立また梯子を持って帰る事は出来ない。
今のところ、小山内教授の自殺を手伝う様な人物がいたと言う報告はありません。
犯人が、首を吊ったように見せかける為の仕業だと断定したのです。」
「要するに一人では、首は吊れないと言う事ですね。
一人ならば、梯子か脚立いる。それが現場に残っていないと言う事ですね。小山内教授に自殺を手伝う人は居ないと言うことですね。
犯人は首を吊った様に見せかける様にしたけれど、簡単にバレたのですね」
と、私は刑事の言葉を、再度確認した。
もしかすると、犯人は愚か者かも知れない。
だが、最初から小山内教授の遺体を獣に食わせる事を目的で
その場所に遺棄したならば、犯人は緻密な計画ができ、
尚且つ非常残酷な人間だ。
未だに存在の掴めない犯人に対して改めて恐怖を感じた。
「そうです。簡単に見抜きました。しかしテレビの報道は自殺の疑いもあると、伝えたのです。犯人を欺く為に。」
私は犯人に怒りを込めて強く言った。
「刑事さん、私は小山内教授と深い関係がありました。
小山内教授が殺されたと言う事は、私は何者かに暴行を受けていたのでは無いのですか?
警察は私の事を、交通事故と言っていますが、医師はその様には言っていません。私も犯人に殺されたかも知れませんよ。
私も捜索のお手伝いをしますので、いままで調べてある小山内教授の事を私に教えて下さい。」
二人の刑事は黙って考えている。
私は、その刑事の態度に苛立ちを覚え、
「それと、私が思うには犯人は、小山内教授の研究しているものを欲しいのだと思います。
だとすると今度狙ってくるのは、私だと思います。ところが、私が記憶喪失になってしまった。
もし犯人がこの事を知らずにいたら、必ず私を狙うでしょう。
私が記憶喪失になっている事を知っていたならば、犯人は私に何らかの形で繋がり、記憶の回復を待つでしょう。----。」
(妹、家族を疑っていると言いかけたところで、妹がいるのに気がついた。)
妹は私の話をどの様な想いで、聞いていたんだろう。
私は妹をこの場所に連れて来た事を悔やんだ。
二人の刑事は、何も言ってはくれない。
何を考えているのだろうか?
それとも、小山内教授のことを話す事はできないのか?
竹中刑事が重い口を開いた。
「詳しい情報は言えませんが、貴方の協力はこちらにとって、必要だです。
ところで、水原君、ショカツさんとはお知り合いでは無いですか?」
「ショカツと言う人は全く知りません。仮に私の記憶が無くなる前に交友があったとしても、憶えていません。
そのショカツさんがどうしたのですか?」
「詳しい事は言えないが、小山内教授の知り合いみたいなので、
貴方に聞いてみたのです。」
「ショカツさんと連絡取れたのですか?」
「これ以上は、ちょっと、、、。個人情報なので、、」
と竹中刑事は口濁した。
確かにもし妹が、悪の人間ならば、ショカツさんの住所も言えない。
色々話した後、遺体の引下げの手続きを済ませた。
遺体の確認は、損傷が余りにも酷く目を覆うような物であった。
妹は立ち会う必要が無く、部屋に待たせておいた。
私は二人の刑事に私の思っている事を素直に伝えた。
「妹と両親を調べて欲しい。もしかすると犯人の手の者かも知れません。
早急にお願いします。また、私の身に何かあったら、妹と両親と名乗る者を最初に疑って欲しいです。お願いしますね」
二人の刑事は了解してくれた。
わざとらしく竹中刑事は紙を落とした。
私はそれを拾って刑事に渡そうとしたが、
竹中刑事はそれを拒んだ。
その紙には 所轄孝明の住所と連絡先が書いてあった。
「これは、私が落としたのだ。この所轄という人は、小山内教授との関わりは深そうだし。
警察もまだ、所轄君には会っていないのだが、
住所を知ったのも、ついさっきの事で、たまたま、交番で犬を拾った事でわかった。
一度、所轄君に連絡してみたらどうかな?
水原君に言われた通り、妹と両親の事は直ぐに調べてみるよ。
君の連絡先を教えてもらえないか?」
「私、携帯電話持って無いのです。どうしましょう?」
「それなら警察に有る携帯貸すよ。
妹さんにバレない様に取りに来てくれ」
「わかりました。竹中刑事さんは今からどうされるのですか?
まずは、所轄さんに会いに行くのですか?」
と私は聞いた。
すると、田中刑事が答えてくれた。
「所轄さんに会いに行くつもりで連絡をとりましたが、
今日は都合が悪いみたいです。
仕事で出ているみたいで、今日の夜遅くに帰ってくる様です。
私は貴方の大学の千秋さんに会う予定です。」
「千秋さんと会うので有れば、私も同席したい。
でも、妹が一緒にいると厄介です。」
私の言葉を受けて田中刑事は、
「そうですね。今日のところは、妹さんを連れて帰った方がいいですね。直ぐに妹の身元の調査しますので。」
私は、安堵したこれで、妹と両親の事が判明する。
だが、不安と恐怖は消す事は出来なかった。