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ユニシロに来店の不思議な客(4分で読める小説)

今日、変な格好をした少女が来店してきた。
大きな帽子を被り、雨が降っても居ないのにカッパを着ているのだ。
顔が幼く、身長も低いのでまだ子供であろうと、推測した。

その子は、店内をうろつきながら僕の元にやって来た。
本来ならば、お客様には愛想の良い私だが、
子供の相手はしたくはない。
金を持っている訳が無い。
その子を女店員に任せようとしたが、
彼女はお昼休憩に入っている。
…しかた無い、子供の相手でもするか…
と、いやいや子供の相手をした。

「君は小学生?ランドセルを背負っているの?」
私は背中が妙に膨らんでいるのが気になったので聞いた。
「うん私、小学生。ランドセルを背負って来たのよ」
と、声が幼く可愛い。

「何で、カッパ何か着ているの
雨も降って無いのに?」
と、あつかましく聞いてみた。

「いつ雨が降ってくるかも知れないから、
お母さんが着せてくれたの。」

「大きな帽子被っているね、大き過ぎない?
被っていてもズレるでしょ」

「これもね。お母さんが帽子を被せてくれたの。
大人物の帽子だけど、雨に濡れるといけないから」

「雨も降らないのに?用心深いね、君のお母さん。
で、今日は何の用かな。
子供物など何も無いんだが?」
と、私は横柄にそっけなく振る舞った。

「ここに、キューピーットの矢ってないですか?」

「キューピーの矢、何だそれは?
聞いた事ないよ」

「キューピーットの矢が刺さると、その人は恋人になるのよ。
おじちゃん知らない」
と、子供の癖にませた事を言う。

「キューピーの矢は無いが、キューピーのステッカーはあるよ。
これを相手に貼り付ければ、貼り付けられた人は、
貼り付けた人の事を好きになるんだ。
それなら有るよ。
欲しいか?少し高いぞ。値段は、
それでも、買うか?」

「幾らなの、お金なら持っているわ。
幾らなの?」
と、子供のくせに立派な財布をもっている。
隙間から札束が見える。

「こちらに来ていただけますか?
こちらにご用意させて頂いております」
私は札束を見て態度が変わった。
お客様は大事にしなければいけない。

「お嬢様、これは世界初の商品で御座います。
想う人の背中にこのステッカーを貼り付けるのです。
そうすれば、そのお方は貴女と恋に落ちるのです。
そして二人は結ばれていくのです。」

「本当ですか?おじちゃん。
その人、私の事を好きになってくれるのですか?」
と、目を輝かせて言う少女。

「ただし、条件があるのです。ここが大事なところです」

「何、条件って!」
と、身を乗り出して聞いてくる。

「条件と言うのは、このステッカーを貼る時は
絶対に人に見られたら駄目なのです。
ましてや、貼る人にも勘づかれたら駄目なのです。
解らない様に貼らないと駄目なのです。
だからと言って、その人が寝ていても駄目なのです。
起きている時に気づかれず誰にも見られずに
ステッカーを貼れば成功です。
だけど気を付けてください。
貼れたからといっても、後でステッカーが貼ってあるのがバレたら
その効果もなくなるのです。」

「そうなの、・・・。貼ってあるのがバレたら駄目なのね。・・・」

と、塞ぎ込む少女。
「大丈夫です、そんな簡単にはバレません。
この前来たお客様、『これを彼に貼って恋人同士になれた』って言ってました。
大丈夫ですよお客様。簡単に貼れます。
そしてその方と・・・(^^)」

「うん、買うおじちゃん、買うよ。
幾らですか?」
と、声が急に元気になった。

「これはね、大人だと10万円はする商品だけど、・・・
そうだな・・・子供だから、
3万円で良いですよ」

「三万円、安いわ。」
と、財布から三万円を抜き出す少女。

…しまった、もっと高く言えばよかった…
と、後悔したがもう遅い。

彼女はお金を支払って意気揚々と店を出て行った。

「店主さん、あの子は人間ですか?」

と、急に不気味な声が耳元で聞こえた。
女店員だ。

「人間だろう、何故そんな事を聞くんだ、君は」

「だって、後ろの丸みは、どう見ても
カッパしょう?」

「もちろんだよ、カッパを着てるのだから」
と、素知らぬ顔で言ってやった。

「そうでは無くて、あの子は河童だと思うのよ」
と、冷ややかに言う。

「河童!そんなのいる訳ないじゃないか、
河童なんて居ないよ」
と、驚きの声を出す私。

「お金を調べた方が良いですよ。
木の葉に変わっているかも知れませんよ」

鉄仮面の女店員は、冷静に言うが、
私は直ぐに貰ったばかりのお金を確認した。
木の葉ではなかったが、水草の葉っぱだった。
「騙された!警察を呼んでくれ!
あの子、河童を隠す為にカッパ着ていたのか?
クソ、騙された!」

と、怒鳴ってみても売った商品も偽物。
お互い様だの騙し合い。

仕方無いか!
今日は諦めよう。
今度来た時、あの河童を捕まえてやる!
と、元気を出す私であった。

追伸

ユニシロに河童の「かりん」が現れました。
「作家かりん」が誕生させたキャラクター、
「河童少女かりん」が、
ユニシロにやって来たのです。

初めてのコラボです。







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