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ある骨董屋(3分で読める小説)(1600字)➕追伸

退屈な午後、僕は街をぶらついた。
街を歩いていると、同年代の若者に目が向いてしまう。
多くの恋人達。嬉しそうに手を繋ぎ歩いている。
その楽しそうな笑顔を、僕は嫉妬の目で見ていた。
僕は一人、惨めな独身男。
虚しさが強まるだけだった。

道なりに進んで行くと、骨董屋らしきものが、目に入ってくる。
…骨董品か、珍しい物あるかな?…
と、興味が自然と湧いてくる。
僕は誘われているかの様に店内に入って行った。
店の大きさはそれほどでも無く、
壺や掛け軸、
古い壁かけ時計などが置いてある。

その中に不思議な人形が僕を見つてくる。
まるで生きているかの様に僕を見つめる。
気持ち悪く感じたが、その瞳に魅せられて僕は、
自然と人形を手にとっていた。

大きさは50cmぐらいで、どっしりとした重みがある。
鼻筋が通り、つぶらな瞳、髪型はロングヘヤーでブラウン。
少し憂いを帯びた表情が、何ともいえないペイソスを醸し出している。
服装は、ピンク色のワンピース。
豊かな胸の膨らみに、色気を感じる。
僕は、人形と知り尽くも抱きしめたい衝動に駆られていた。


店主が揉み手をしながら、
「どうですか、お気に召しましたか?
この人形は、由緒ある方から譲って頂いた物です。」
と、愛想を振り撒きながら、私に語りかけてきた。

「ええ、この人形は生きているみたいで、
少し怖いですね。でもすごく魅力的で惹きつけられますね。
お幾らぐらいするのですか?」
と、一応聞いてみた。
「この人形ですか?8万円です。
本当は10万以上はする品物ですが、大特価の商品です。」
と、自信を持って店主が言う。
「8万円ですか・・・・」
と、人形を見つめる僕であったが、持ち合わせの現金がないので諦め
店主に人形を渡そうとするが、店主は受け取ってくれない。
「この人形をお買いになると、必ず幸福が訪れますよ。」
と、不思議な事を言う。
「どんな幸福が来るのですか?」
と聞く僕に、店主が笑って応えてくれた。
「それは買って頂いたら解りますよ。
5万円でどうでしょうか?お買い得ですよ」
と、甘い言葉で僕の心をゆさぶってくる。
…5万円か!5万円なら持っている。この人形が欲しい…
と、強い気持ちが湧いてくる。
「5万円なら、頂きたいです。」
と、僕は購入する事を決めた


帰宅すると直ぐに、人形をテレビの上に乗せ飾った。
殺風景の部屋に、綺麗な人形が目立っている。
僕に話しかける様な目で見つめてくる、美少女人形。

たまらず僕が人形に話しかける。
「ねえ、君はどの様に僕を幸福にしてくれるの?」
だが美少女人形は無言のまま。
「当たり前だ、人形が話しかけてきたら怖いよ」
と、独り言を言う僕。

その日の夜中、僕は急に寒気に襲われる。
季節は夏なのに何故?
寝ぼけた頭で考えるが、答えは出ない。
あまりの寒さに僕は目を覚ます。
そこには、見知らぬ世界が広がっている。
白じろとした透明な世界。
冷気が僕の身体を包む。此処は氷の世界か!?

いったい、どうなったの?
何故僕はここにいるの?

「貴方はここで暮らすのよ。」
と、微笑みながら呼びかけてきたのは、あの美少女。
僕が今日購入したあの人形。
僕の頭の中は、この氷の世界に同化するかの様に真っ白になっている。

「貴方は私の生きたお人形よ。
今日から貴方は私のペット。私のコレクションの中の一つよ。
貴方は美男子で、私のコレクションの中でも価値があるわ。
これから、此処で暮らすのよ」

と、冷酷な表情を浮かべ言う美少女。

「ちょっと待て!どう言う事だ?僕をどうするつもりだ!」
と、叫んでも虚しい。
美少女人形は僕の目の前でフェードアウトするかの様に消えて行った。

今、話題の失踪事件。
警察を混乱させている失踪事件が、また一つ追加された。

「おっ、戻ってきたか!今回は早かったな。
お前のおかげで今回も丸儲けさ。
本当にお前は俺を幸福にしてくれるぜ。
ありがとうよ。」
と、美少女人形に語りかける店主がそこに居た。

追伸
この骨董屋はユニシロとは全く無関係なお店です。









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