(再掲載)私は誰⁉️パラレル版(9)ハンバーグ(2分で読める小説)
「遅かったわね。一体何処に行っていたの?」
と少し低い声で妹は聞いてきた。
包丁が私の方向に向いている。突き刺さる様に。
私は、少し恐怖を感じたが、妹には殺気が無いのが分かった。
だが、本当の事は言わず
「将棋クラブで、将棋をしてきた。」
妹はその言葉を信じたのか、台所に行って料理を作り始めた。
料理の途中らしく、ハンバーグを作っているみたいであった。
「お腹空いたでしょう?ハンバーグ作っているから、
待っててね。それとも、何処かで食べてきた?」
と、お嫁さんみたいに聞いてきた。可愛い娘である。
この人が悪の組織の人間とは思いたく無い、彼女を信じたい。
と思ったが、だが、料理に毒が入っているのかも知れない。
という想いも同時に浮んだ。
私は妹の質問には、答えずにテレビの電源を入れた。
「お父さんとお母さんは、家に帰っているのかな?
何か聞いていない?」
「分からないけど、旅行に行っているかも知れない。
しょっちゅう、旅行に行ってるから。
まだ、帰っていないかもしれない」
刑事から聞いた通りの答えであった。
「お父さんってどんな仕事をしていたの?」
「良く知らないけど、会社の重役してたみたいよ。
大きな会社だって、お母さん言っていた。」
「お父さんって歳、幾つだった?」
「70近いじゃ無いの?はっきりは知らないけど。」
妹は親に興味が無いのか、親の年齢も知らない。
でも、答え方によどみが無く嘘を言っている様には感じ無かった。
「ハンバーグ、幾つ食べる?私は二つ食べるけど。
お兄ちゃんは?」
と、可愛いく聞いてきた。
ここは妹を信じよう。
妹も食べるのだ。毒など入れるはずが無い。
と、私は決断して
「大きさはどれ位?、、、。これなら、三つでお願いします」
二人で食べる夕食は、まるで恋人同士であった。