(新々)三つ子の魂百までも 32
「妖怪と違うって?・・・・。妖怪なら人を殺せるけど悪霊では
人は殺せない と云う事ですか?」
と、林田は驚いたのか、身を前に乗り出す。
私も裕美さんの言葉には驚いてはいるが、
修は冷静な表情のまま無言である。
「以前の事件は妖怪が人間に化けて男の人を襲ってきたわ。
明確には言えないけど、物質として存在しない霊が人を殺す事が出来るのかな?私には出来ないと思うのだけど・・・」
と、語尾は自信の無さそうに弱く裕美さんの声は、小声であった。
「でも、霊に呪われて殺されたりしていますよ。
貞子もそうだし・・・」
と、僕は疑問をぶつけ不思議そうに言った。
「それはフィクションでしょ!小説や映画の世界なら霊が人を呪い殺すけど、実際にそんな事があるのかな?
私には、そんな事出来ないのでは無いかと思えるのよ。」
「言われてみれば、そうですね。幽霊が人を殺した と云う事例が
実在するのか?調べてみても判らないと思いますね。」
と、修が言葉を発する。
「それはそうだけど、でも霊は存在しますよ。
私は、実際に霊の写真を撮ってますし、存在します。」
と、林田は強く云うが、誰も霊の存在を否定している人は居ない。
「それよりも、裕美さんはその縛られた殺人鬼の霊と交信したのですか?」
と、修は訊ねてきた。
……そうだ!僕もその事を聞きたい……
「・・・・・。」
裕美さんは、何も語らずに姿勢を正した。
時刻は午前3:33 ゾロ目だ!
「何を交信したかと云うと・・・・
最初、あの場所にいた女の子に話しかけたのよ。でも何も答えてくれなかった。
凄く怯えているみたいで、・・・・。
可哀想に、( ̄▽ ̄)・・・・・」
と、裕美さんの声が段々と涙声に変わる。
「そうしたらね。その子のお父さんの声が聞こえたの。『その男は突然、襲ってきて包丁で・・・。娘を刺した』・・」
昔の事件の様子を裕美さんは語り出した。
これは、とくダネである。
林田はさらに身を乗り出し、録音の準備をしている。
林田の目が輝きを増している。
「何故、そんな幼い子を最初に狙い殺したのでしょうか?どの様なトラブルがあったのでしょうか?」
と、疑問を持つと積極的になる修が、聞く。
「その殺人鬼とは、隣どうしで、殺人鬼は
以前、奥さんの元彼だったのよ。
と言うか、ストーカーだったのよ。」
「奥さんのストーカー?」
林田はビックリの声をあげる。
「要するに、奥さんを追って隣の部屋に越してきたのよ。それは、奥さんが語ってくれたわ。間違い無いと思うわ。」
「その男の殺人動機は何でしょうか?」
と、林田は聞く。
「要するに、奥さんに対する横恋慕と
振られたことによる恨みと、
幸せそうな家族を見ての嫉妬よ。
あいつ、明確には言わなかったけど、
私には解るわ、あいつの心は。
いじけた奴よ。」
今度は怒りの声に変わった。
「裕美さんは『おまえはそのままで、居ろ」
と言ってましたが、その殺人鬼の霊に言ったのですか?」
と、裕美さんの顔を近くで見つめ僕は言った。
「私、そんな事言ったの。 ・・・・。
あんな殺人鬼の霊なんか、縛られていればいいのよ。
牢獄に入っている様に、自由なんて無いわ。」
「その犯人はどの様な順番で殺していったのですか?
最初は子供を殺して、次に誰を殺したの?
その場所はどこですか?
部屋の中?それとも廊下ですか?」
林田は事件の解明を急ぐのか、事件記者の様に聞いてきた。