見出し画像

(再掲載)私は誰⁉️パラレル版(1)衝撃的なニュース(3分で読める小説)



テレビからニュースが流れている。
私にとって非常に衝撃的で重大なニュースであった。
私の目と耳はテレビに釘付けとなる。

それは「小山内氏の遺体が発見され、警察では殺人と自殺の両面で捜索する」
と、伝えたニュースであった。

私に関わる人物が殺されたかも知れない!いや、殺されたと考えた方が自然だ。 
自殺する理由もない。

記憶に関わる研究が、殺される理由だったのであろうか?
それ以外には、考えられない。
だとすると、私も事故ではなく、何者かに暴行されたと考える方が自然だ。
明日もう一度大学に行く事を決めた。

なのに家族達は、事件の事など我関せずと楽しそうに雑談をしている。

「今日、僕の通っていた大学に行って来た。」
と唐突に家族に言ったが、家族達は聞いていない。

「ねえ、ちょっと今のテレビのニュース聞いていたの?」

と少し大きな声で言った。

「聞いてなんかいないけど、どんなニュースだったの?」
と母が言った。

私はこの人達を疑っている。
どこまで話すべきか迷ったが、今日大学で聞いて来た事を
話すと決めた。
「今のニュースに小山内という人が、殺されたと言っていた。
 僕は、その小山内と言う人知り合いみたいだ。」

「それは、びっくりだね。」
と父が言った。でも驚いたそぶりでは無かった。

「聞きたいのだけど、さっきお父さんの血液型がAで、お母さんO型と言ったけど、僕はB型。おかしいでしょ。」

「どこが?」と母が聞いてきた。
母親は全く知識が無いみたいだ。
それともボケを入れてるのか?
父が意を決するかの様に、言葉を改めて話してくる。

「学、本当の事を言おう。
私たち夫婦は再婚なのだ。お前が子供の時、この人と結婚した。
ケイコはヒロコの連れ子なのだ。」

「お父さん、それは言わない約束だったでしょ。」
と、ヒロコが諌めるかの様に言う。

「ばれてしまっては、仕方が無いだろう。
実はお前とヒロコの仲が余り良く無いので、お前が記憶を無くしたついでに、昔のことを言わずに実の母親として振る舞ってもらう事にした。
その方が良いと思ったので。
みんな賛成したよな。ケイコも賛成したよな!」

と、父は責任を一人で負わずに、みんなの賛同を求めた。

私は複雑だった。この言葉を信じて良いものか?

「もうひとつ疑問があるのですが、僕がこの部屋に帰ってきた時に、
生活感も無く綺麗に片付いていたのは?何故ですか。」

「その事なら母さんに言ってもらおう。」

「学の部屋があまりのにも散らかっているし、汚いし、おまけに犬は居るし、
掃除屋さんに頼んで清掃してもらったのよ。
私、悪いことしたのですか?!」

と、母は私の事が嫌いだったのであろうか、少し不機嫌に言った。
…犬を飼っていた?…


「その犬は何処に行ったのですか?此処には居ないけど」

「掃除屋さんが『扉を開けた時に何処かに行ってしまった』と
言っていたわ。何処に行ったのかは知らない」
と、母は無責任で冷たい言い方をした。

私が母を嫌っていた理由が、何となく分かる様な気がした。

家族の事は分かったが油断はできない。
全てが解明されるまでは。
しかし真相を知らずにいた方がいい場合も、あるのかも知れないと思った。

もっと複雑な気持ちにさせられたのは、妹のことであった。
妹とは血が綱がっていないのだ。

それを知ってしまったからには、どの様に対応すればいいのか?
子供の頃とは違うのだ。

なのに両親は、妹を残して帰って行った。

妹はいつも通りに振る舞っている。
私は、いつもの様に振る舞っている、いや振りをしている。

私の胸の内はドキドキだ。
そして妹に言った。

「今日からは、此処で泊まってはいけない。
自分のアパートに帰って欲しい。」
と本心でない事を告げた。

「何で、私が嫌いになったの?子供頃からお兄ちゃんは私に優しかったのに。
何で!記憶が戻ったら、私を嫌いになったの!」

「記憶はまだ完全には戻っていない。ケイコの事も良く覚えていない。
だから一緒にいると、複雑な気持ちになってしまう。」

「複雑な気持ちって?  
やだーお兄ちゃんHな事考えてる。
やだー。」
と、言って妹は帰って行った。

複雑な気持ちがより複雑になって行った。

判明した事は、僕の名前は水原学。B型。将棋は強い。
大林と言う友達がいる。
大学時代は優秀で教授たちにも名前が知られていた。
小山内氏と同じ研究をしていた。
誕生日は平成8年8月8日

明日、また、大学に行ってこよう。今度はタクシーで。
と考えている時、持ち金が無いことに気がついた。
まずは、妹にお金をもらわないといけない。















いいなと思ったら応援しよう!