(新)ブラックドクター(2)(1分で読めます)

松原千恵子が、ブラックドクターと待ち合わせをした場所は、ある喫茶店。
巷では「紅茶の美味しい喫茶店」と噂の店である。
彼女は、約束の時間の十分前から待っているのだが、
彼は約束の時刻を過ぎても、まだ姿を表さない。
時計は17:50を過ぎていた。

この喫茶店は、小ぢんまりとした質素な感じの店で
テーブルは４つ備えられている。
それぞれ四人掛けである。
その他に六人ぐらい座れるカウンターがある。
何処にでもある喫茶店が
この店の特徴なのかもしれない。
松原千恵子は一番窓際のテーブルに腰を掛けて待っていた。
何処を見つめる事も無く、ただ一点を見つめている。
彼女は30分以上待っているのだが、
その顔には、怒りの表情はない。
無感動、無関心まさに鉄仮面女。

他の客は誰一人居ない。
店内には、
ロミオとジュリエットの映画音楽が静かに流れていた。

「カランカラン」と、乾いた鐘の音が鳴り響き
入り口の扉の開くのを伝えている。
入って来た男は店内を見渡し、
静かに松原千恵子に歩み寄って来る。

だがその顔には、笑みがない。
一見すると理知的な男の雰囲気。

フェースは鼻筋が通り瞼も二重で
顔の線もシャープで美形であり
クールさが彼の魅力なのかもしれない。

松原千恵子は、その美形男子を見ても
心が揺れる事もないのか、いつもの様に
無表情である。

次に続く