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変身スーツのその後(5)

男は目を丸くして言う
「素晴らしい!今鏡を持って来ますね。」
と、落ち着かない様子である。
私には何の事か判らず、様子を伺っていた。
私を冷ややかな顔でみている女性がいる。
美人ではあるが、何の感情も示さない鉄仮面を付けている様な人だ。

しばらくして、小さな手鏡を持って男が、
早足にこちらにやって来た。
「これで、見て下さい。すごいですよ」
と、手鏡を私に嬉しそうに渡してくる。
私は期待を持って手鏡を見た。
丸い鏡の中に美女がいる。
…誰!貴女は。その美しい貴女は誰?…
と、私は心の中で感動し絶叫していた。
「これが、私なの?」
と、何故か言葉も女言葉になっている。
それは、醜いアヒルの子が白鳥に変身したが如く、
また、醜い毛虫が、美しいアゲハ蝶に変身した時の気持ちに似ているのかもしれない。

「本当に凄いですね。このスーツは。
こんな美女を私は見た事が無いです。」
と、想いのたけを素直に語った。

「お気に入りなら、ここからレンタル開始ですがよろしいですか?
レンタルは最高3日間です。
一日三万円です。何日にしますか?」

「解りました。一日だけでお願いします。」
「では、ここに住所と名前と身分証明書をお出しください。
遅延延長も一日三万円です。
この様な事は無いと想いますが、
このまま着て逃げても、24時間で元の姿に戻ります。
このスーツは時間を読み取るスーツで、
その時間がきたら効果は有りません。
元の姿に戻ります。
また、このスーツを着て犯罪を犯した場合には直ぐに警察に通報されますので、お気をつけ下さい。」
と、説明された。
…そんな事は、先に言ってくれ!…
と、思ったがこのスーツを着るまでは疑っていたのだから、頭には入っては来ないだろう。

私は、手続きを済まし、美女の姿で街を歩く事になる。
男達のまばゆい視線を浴びながら、
私はモンローウオークみたいに
お尻を振り振り歩いていた。
憎きあの上司を目指して。

次に続く

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