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魔法瓶(4)(一分で読める小説)



「叔母さん、この魔法瓶に精子と卵子を結合させて入れると、赤ちゃんが出来るのですか?」
と、松原千恵子さんは、弾んだ声で言いました。
私は、魔法瓶に受精卵を入れても、赤ちゃんが誕生するかどうかは、解らないけど返事をしました。
「そうだと思いますが、それは生物的にみてどうでしょうか?不自然な事でもあります。
やはり、あれをやってから出来た方が楽しいですよ」

「私は子供は欲しいと思うのですが、男は要らないです。人を好きになるのは面倒くさいですよ」
と、何の感情も無い、いつもの松原千恵子さんの言い方です。
「最初から人間で試すのでは無くて、
他の動物で試して欲しいです。
でも、その様な事をするのは、
神に背く事になるかもしれません。
怖い事です。」

「この魔法瓶は、このひと瓶だけですか?」

「そうです。これを試供品で作ってみたの」

「試供品ですか?でもこの魔法瓶が欲しいです。
おいくらでしょうか?」

松原千恵子さんは、積極的に聞いてきます。

「そうだね・_・・・・」
と、思案していると、松原千恵子さんは
指を一本立てて
「これぐらいですか?」
と、聞いてきました。
…十万円か?もう少し欲しいな…
と、思い指を二本立てて
Vサインをしました。

「解りました」と、松原千恵子さんは
財布から2万円を抜き取り、
その2万円を私の手に握らせ、言いました

「ありがとうございます。早速持ち帰り
使ってみます。」
と、AIの様な愛の籠らない声で
明るくいって帰って行きました。

私は
…損をしてしまった。…
と、言う虚しさが残りました。
これからは、はっきりと値段は伝えようと
決意しました。

次に続く


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