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(再掲載)私は誰⁉️(14)信じる事の出来ない辛さ(2分で読める小説)



早紀さんは、「大学時代のサークル仲間と連絡を取ってみる。」
と、言い残して私の元から去って行った。

人を信じる事のできない、辛さをあらためて実感した。
早紀さんが、本当に大学時代のサークル仲間である事を、
素直に信じる事が出来ない自分自身が残念であり、
人の話を疑いながら聞くなんて、
おそらく今までの人生で多くは無かったはずだと思う。

それが此の何日間は、絶えずそうである。
妹を疑い、両親を疑い、また大学時代の友達をも疑う。
私に絡んでくる人達を私は信用して、今後話が出来るのであろうか?

人を疑い信じる事が、心からできないと思った時、悲しくなった。
人が生活をするにおいて、無意識、意識に関わらず、
信頼、信用から始まる。
それが不信から始まっては生活など出来ない。

街の中を歩いてみても、何一つ思い出すものは無かった。

ただ、太った女性が連れていた犬だけ、何故か心に残った。

途中で妹と別れ、私は一人部屋に戻った。
この部屋の中を観察するためだ。
妹がいたならば、監視カメラや盗聴器の隠し場所を探す事が
できない。
監視カメラをあからさまに取り除いては、
相手に私が気付いた事がバレてしまう。
相手に気づかれる事無く、カメラの位置を変える。

部屋を見渡すと、カメラの置いてありそうな場所には、
カメラは見当たらなかった。
と言うよりも、私は、隠しカメラの形状をよくは知らない。
「カメラです。」と訴えてはいないだろう。

また、一人で帰ってきた理由は、
自分の痕跡を探す為でもあった。
自分は何を好み、どのような物を使っていたのか、興味があった。

おかしな話である。よくある話で「自分探しの旅行」という言葉は
聞きた事があるが、「自分探しの、部屋探し」という言葉など
聞いた事が無い。

先ずは、本棚を見た。
何冊あるのか、数えられないがかなり有る。
本の種類は、小説がありそのジャルも様々だ。
推理小説、歴史本、将棋の本、恋愛小説、
夏目漱石の坊ちゃん、
数えたらキリがない。
ただ、専門書が無いのに気づいた。
私はエンジニアとか言われていたが、
その専門の書籍が無い。
野球の雑誌はあるのに不自然だ。
ベースターズの本がある所を見ると、ベースターズファンか?

次に、服を見て見た。
背広、セーター、ジャンパー、トレーナー
パーカー、等いろいろあったが、色は地味目だった。
僕は地味な事を好むタイプみたいだ。

食器は綺麗に洗ってあり、整頓もされていた。
僕は几帳面?だったみたいだ。

冷蔵庫には、物が入っていないが、ビールが三本あった。
酒類はビール以外に無く、酒に強くは無いみたいな気がする。

現金や貯金通帳を探した。
金庫らしき物は無い。
仮に有ったとしても、鍵もわからないし、
キャッシュカードの暗唱番号も覚えていない。
まさに、僕は暗礁に乗り上げた感じがした。

僕は、貴重品をどの様に管理していたのかも分からない。
部屋の中を観察しながら、隠しカメラを捜索していた。

テレビの横に不自然に花瓶が置いてある。
よく見るとソファーの辺りの前に位置する。
怪しい、と直感した。
花瓶を手に取り見て見ると、カメラらしき物が、嵌め込んでこんある。
(これだな、隠しカメラは)と思って、対処法を考えた。
花瓶の場所を変えよう。玄関の靴箱の上に乗せて置いた。
これなら、不自然に思われない。
他にも無いかと探したが、見当たらない。
何故、隠しカメラがあるのか、不信はドンドン深まっていった。

私は誰何だ⁉️泣きたくなるくらい辛い。




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