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「殺人ロボット」(続編) その後の大塚愛子2

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次の日、愛子は婚約者の遺体と対面する。
悲しみも悔やみの感情も全く湧かない、涙も見せない
冷徹な愛子の態度は、誰しもに不審を抱かせた。

しかし、それが今の愛子の本心でもあった。

好きでも無い男との婚約。
政略結婚としか言いようの無い結婚は
愛子の精神のみならず、肉体にも変化を与えていた。
だが、愛子はその肉体の変化にはまだ気づいてはいない。

その日愛子は退院した。
そして愛子は事情聴取の為、警察に行く。

警察署に着くと、二人の刑事を紹介された。
一人は女性で美人刑事。
もう一人は、怖そうな髭面刑事。

愛子の動揺がまた始まった。
この様な刑事と会って平静でいられる女性は、
それほどいないであろう。

案内されたのは、こじんまりとした取り調べの部屋だった。

愛子は憔悴した姿で
テーブルを挟み刑事達と対面する。

化粧も充分に施す事も無く、青ざめた顔色は精神的な苦痛を存分に味わったからかだろうか。
普段の愛子の明るい姿は何処にも無かった。

事情聴取は、女性刑事の質問から始まった。

「昨日は本当に大変でしたね。・・・。」
と、気分を和らがせる様に優しく女刑事は云い

「昨日のどの様な事があったのか?教えていただきたいのですが?」

と、事件の真相を聞いてきた。

「・・・。どの様な事があったかと言いますと・・・・
私がバスルームにいる時に何か物音がしたのです。・・
はじめは気にならなくて、シャワーを浴びていたのですが、
・・。何だか変な気がして、バスローブを羽織りベッドルームに行くと、・・男同士殴り合いをしていたのです。
私、怖くなって隠れたの。でも見つかってしまって。・・・・」

愛子は一つ一つ、あの時の場面を思い出すかの様に答えた。

「どこに隠れていたのですか?」
と、女刑事が穏やかの声で聞く

「クローゼットの中です。・・・でも見つかってしまって・・・」

と、愛子の声は、だんだんと涙声に変わっていく
「男が私の髪の毛を、引っ張りあげて・・・・そして・・・・」

と言った後、愛子は嗚咽に変る。

「それから・・・・どうなりました?」

「・・・。その人が私を抱きしめて・・・・」

女刑事は優しく、愛子を見つめている。
刑事特有の眼光では無く、女としての同情か?

「・・・・その人・・・・私に優しくキスをしたの・・・
そして、何も言わずに、出て行ったの」

「優しくキスをした?・・・・乱暴せずに出て行った?
優しくキスですか!・・・・。
愛子さんは、その人を知っている人なのですか?」

女刑事の想像とは違っていたのか?
驚きの声をあげる。
[どの様な場面を想像をしていたのだろうか?]{筆者の声}





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