(新)ブラックドクター(最終回)(3分で読めると思います)➕追伸

松原千恵子は自分のクローンの卵を大切に持ち帰り
意気揚々として、魔法瓶の中にそっと入れた。
…これで、私の赤ちゃんができる。
私の赤ちゃん！
私自身がここに誕生する…
彼女の喜びは隠せ無かった。

彼女は自分の人生を振り返り想ってみた。

松原千恵子。
彼女の両親は彼女が赤ちゃんの時に事故で亡くなった。
何の事故なのかは不明である。
赤ちゃんの彼女は養護施設で育つ事になる。
彼女の親戚が彼女を引き取る事を拒んだ為であった。

千恵子は親の愛情も知らずに育つ。
彼女は子供の頃から、いつも冷静に感情を表に出さず
育って行った。
彼女が感情を表に出すのを拒んだ理由は、恐怖からだった。
他人から、嫌われない為にも怒ったりしてはいけない。
泣いている顔など見せられない。
この様に想い続ける事で、彼女の表情は鉄仮面の様になってしまった。
だが、彼女はそんな自分が嫌いだった。
彼女の心はいつも絶叫したり、悲しんだりしていた。
それを上手に表現できたらどんなに良いだろうか？
いつもいつも、想ってはいたが、
身体がそれを受け入れてはくれない。
そんな彼女だった。

人生をやり直したい！
彼女の想いは、それだけであった。
もし、時間を戻せるなら、子供の頃に戻りたい！
そして、感情溢れる自分に成りたい！
いつもその様に考える彼女であった。
時間を戻す事は不可能であるが、
その想いは自分のクローンで達成出来る。


…この私の赤ちゃんが誕生したら、
私は愛情持って育てるわ。
そして、別の私を作るのよ。感情豊かな、明るい子を
育てるの！私の夢が叶うのよ。やっと夢がかなうのよ！…
と、夢心地の彼女だった。

クローンの卵を魔法瓶に入れてから、
1か月は経っているのに
何の変化も無い！
「10月10日、待たないといけないのかな？」
と、誰も居ない部屋で寂しく呟く彼女。
彼女は待ちどうしくて仕方ないみたいだ。

彼女の想像は果てしなく続く。
私が私を育てる。
愛情持って育てる。
その子の名前なんてつけようか？
千恵子で無くて万恵子にしようかな？
でも、マンエコって変だし、マチコにしよう！

まだ、見ぬ子の名前を楽しいそうに考える、
千恵子だった。

そう、赤ちゃんの服も買わないと、
紙おむつも必要だし、ミルクも哺乳瓶もいるわ。
子育てを想像している千恵子。
生まれてくる私には、明るく表情豊かな
子供に育てるわ。
私とは違う喜怒哀楽のある娘。
そうすれば、多くの友達も出来るわ。
恋人もできるわ。
だって私と同じ顔だし綺麗な美人よ。
私とは違う可愛げのある人に育ててみせるわ。
今の自分自身を否定するかの様に、彼女は考えていた。

そして、待望の日が訪れる。
その日、魔法瓶の蓋が静かに開く。

だが、産声が聞こえない。
何も声が聞こえない。
…まさか死産⁉️…
恐怖の想いが走る。
じっと魔法瓶を見つめる千恵子。
魔法瓶が揺れている
明らかに動いている。
…生きている！…
と、嬉しく明るい気持ちなる松原千恵子。

聞こえてくる声は、産声では無く
「よっこいしょ」

…「よっこいしょ」って何よ！？…
と、頭の中が混乱している松原千恵子。

魔法瓶から出てきたのは！？

ゆっくりと杖を突いて出てくる、お婆さん。

齢75歳の松原智千恵子のクローンの老婆。
それを、言葉も無く見つめる千恵子。

子育てでは無く、
老人介護に陥った松原千恵子！
紙おむつを赤ちゃん用から老人用変え、
今日も松原千恵子は老人介護の、
忙しい日々に追われている。

完

追伸
人間思い通りにはならないものですね。

でも、人間誰しも生きていると、後悔はありますね。
あの時あの様にしていたら違った人生が
あったかも知れない。
また、子供の時からやり直しが出来るならば、
もう一度戻りたい！
と、思うのは、私だけでは無いと思います。

また、ブラックドクターが変身スーツを
どの様に使うのか気になります。
いったい、何に変身するのでしょうか？