悲しみの色って何? 色見本帖
「悲しみ色ってどんな色?」
って、君が聞くけど僕は言葉に詰まるが、
「嬉しい色は、薔薇色って答えるけど、
悲しみ色って、その反対の色かな?」
「薔薇色ってどの色を言うの?」
「赤色かな、それともピンク色かな」
「じゃ、その反対の色って青い色なの?
空の色みたいな青色」
「そうだね、空の青じゃ無いな。
僕には暗い冬の空の色が悲しみ色に見えるよ
今日の様に暗い冬の空の色。
重い鉛の雲の色が」
「そうなの、貴方には暗い冬の空が悲しみの色なんだね。
私には悲しみには色が無いの。
透明だけど何も見えないの。
悲しみには、何も希望がないの。」
あの時の僕は、君の悲しみはいったい何かを考える事なく
聞き流していた。
それから、1か月過ぎたある日
彼女は、入院した。
そして彼女は帰らぬ人に。
僕はあの日見た、彼女の吐く透明な息が
本当の悲しみの色になった。