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何を片付けるの?#青ブラ文学部#ボケ学会(2分で読める800字の小説)
「世の中に片付くなんてものはほとんどありゃしない。
いっぺん起こったことはいつまでも続くのさ。
ただ色々な形に変わるからほかにも
自分にも解らなくなるだけのことさ」
と、うそぶいているのは何処かで見たことが有る
お年寄りだ。
「そんな事ないよ、片付くよ。断捨離って知らないの?」
と、僕は言ってみた
「断捨離?そんな言葉は明治には無いよ」
と、ぶっきらぼうに応えてくる。
「明治ってお爺さん明治時代の人?」
「君は、私を知らないのかい?
結構有名なはずなんじゃが」
と、悲しそうに言う老人。
「どこかで見た様な記憶があるんだけど・・」
と、少し考えて
「そういえば、お札で見たよ。1000円札の爺さんだ。
名前は知らないけど・・。誰だっけ?」
「吾輩の名前な夏目・・・」
「あぁ判った、夏目雅子だ!」 と、僕は思いついた言葉を口に出す。
「馬鹿な、俺は男だ!夏目雅子は女優。もう死んでいるが。
吾輩の名前は夏目漱石だ!」
「夏目漱石って、猫に名前を付けてあげなかった人ですか?」
「うん、そうじゃが・・・。それがどうした?」
「それに、四国で赤鬼と喧嘩した人?」
「赤鬼じゃ無いよ、あれは赤シャツだ、教頭の。
マドンナに手を出すから、懲らしめてやったんじゃ・・」
「それから、何があったっけ・・・。あとは知らないな
他の本など読んだ事も無い」
「私が最初に言った言葉、私の小説[草枕]の最後の部分だ。
どうじゃ、深い言葉だろう」
自慢気に言う夏目漱石。
「そうかな、片付いた、片付かないは、その本人が感じる事で
人から言われる事じゃ無いよ。片付いていなかったら、自分が納得するまで
片付ければいいじゃ無いの。」
「私はそんな事を言っているんじゃ無いんじゃ。
もっとな、哲学的なことを言っているんじゃ」
「だから、そんなに難しい事を言わ無くても、自分が満足すれば
片付いたんでしょ」
「そうじゃなくて・・・・・」
「だから・・・_・」
二人の議論はさらに続き、結局片付く事は無かった。