Photo by tomekantyou1 待っている美少女(前) 9 ボーン 2022年10月2日 06:26 男は、もがき悩み苦しんでいた。生きる希望も薄れ、ヤケになる自分をどの様に抑えるかだけしか、考える事は出来なかった。妻は夫の苦しみを手に取る様に理解していたが、もはや解決の余地は無く、この地から逃げ出す事しか想い浮かばなかった。しかし、どの土地に行っても借金取りは追いかけてくるであろう。夫婦が悩んだ挙句に出した答えは、・・・・・。美少女がいる。名前は大塚明子。端正な顔立ちと聡明な人柄と、160cmを超える身長、スタイルの良さは、中学1年生とは思えない大人びた風貌である。だが、その並外れた資質の為に、明子は同性からの嫉妬からか、イジメを受けていた。異性からもその美貌故に一歩引かれ、明子に寄り付いてくる男子は、一人も居なかった。「みんな、私をイジメる。無視されている」その悩み苦しみは、自らの命を絶つ事と、明子は判断を下していた。明子は、両親宛に遺書を書いた。だが、自ら命を絶つ事はそう簡単には出来ない。妻は、夫から提案を受けた。「これ以上、生きていても借金取りに追われ苦しむだけ、いっその事こと、三人で心中しよう!」と、憔悴した夫の答えは、自ら死を受け入れ逃げる事であった。「そんなの嫌よ。死ぬ何て、絶対に嫌よ」と、泣きじゃくる妻を見て、夫は「俺だって嫌だよ。だけどもうこれ以上どうしようも無い。借金取りに捕まったら、何をされるか判らない。明子だって、どの様な目にあうか、・・・・・。お前だって、そうだ!奴らは、何をするかわからないんだ。」と、腹から搾り出す様な声である。しばらくの沈黙が流れた。沈黙を破って、妻が言った。「この前、・・・・明子の遺書を見たの。明子、死にたいと思っているの。・・・」と、妻は言葉を詰まらせながら、少しづつ喋った。「お前、何が言いたいんだ?」と、不審に思い聞いた。「明子、死にたいと想っているのなら、明子だけ死んでもらうのよ。」と、母とは思えぬ言葉である。そして更に続けた。「明子に保険金が掛かっているわ。あの子が3歳の時から入っていた保険よ。あれを利用するの」と、悪魔が乗り移ったとしか思えない言葉である。「あの、保険金で借金を返済してもまだ、余るわ。私達が助かる道はこれしか無いのよ。明子は死を望んでいるのだし、私達が罪悪感を持つ事は無いわ」父は否定する事も無く、その言葉を受け入れた。「どうやって、明子に自殺させんだ?!」「明子に三人で心中しようと言うのよ。そして三人で死ぬ様に見せかけるのよ」「だが、どうやって、見せかけるのだ?」と、夫婦の会話は先程とは違い熱が帯びてきている。「今、考えたんだけど、・・・・・・。ね、これなら上手く行くでしょ」「なるほど、それでやってみるか。善は急げだ。明日決行しよう」次の日の夜、博人は娘に深刻な表情で、「お父さんは、多額の借金をして、その返済が出来ない。もう家族はバラバラになるしか無い。お父さんには生命保険が入っているから、お父さんが自殺するので、その保険金で払ってくれ」と、淡々と語った。「お父さんだけ、死なせるわけにはいかないわ。私も、一緒にいくわ。いいでしょう」と、妻の律子は感情を押し殺すかの様に言い、明子に演技をして見せた。その会話を聞いた明子は、何が起こっているのか、判断出来なかったが、両親が死にたいと言っている事だけは、理解出来た。大人びていると言っても、まだ13歳である。物心ついてから、10年ぐらいしか経っていない。子供が、この様な両親の会話を聴いても、直ぐには理解できないのは、当然と言える。「お父さん、お母さん、一体何を話しているの?」と、悲しげに明子は聞いた。「お父さんね。悪い人からお金を借りてしまったの。返す事が出来ないと、その人達、何をするか判らないの?お母さんさんだって、危険な目にあうの。明子もそうよ。どんな事されるか判らない。怖い人達なのよ」と、律子は明子に判る様に説明した。「お父さん、その人達怖い人なの? それで死んじゃうの?」と、涙ぐんでいる。博人は俯き、娘の顔を見る事は出来ないが、「お父さんは自殺する」と、明子に聞こえる様にはっきりと言った。「お母さんも、死んじゃうの?」と、明子の瞳から涙が停めども無く流落ちる。「そうよ、明子。貴女一人になるね!でも、保険金で返す事が出来るから明子は心配要らないわ」と、律子は力強く言った。「そんなのイヤよ。私も一緒に死ぬわ。」と、少女は母に抱きついた。少女の体は既に、母よりも大きくなっている。だが、まだ13歳である。律子は明子の背中を優しく撫ぜながら、言った。悪魔が囁く様に。悪魔の気持ちを押し殺して。「明子、一緒に死ぬ?家族みんなで旅行すると思えば、怖くわないわ。」「うん、お父さんとお母さんと、一緒なら怖く無いよ。一緒に旅行に行くと思えば、楽しいわ。私、みんなからイジメられてるし、みんなから、無視されてるし。生きていても仕方無いよ」と、泣きじゃくる娘を抱きながら、律子は言った。「じゃ、明子は後悔しないね」そして、明子に差し出されて物は、睡眠薬だった。先ずは、父が大量の睡眠薬を飲んで見せた。そして、明子に本物の睡眠薬を飲ませ、母が次に飲んだ。明子は眠りにつくかの様に、静かに死んで逝った。明子の死後、警察からの捜査はあったが、明子の遺書が発見され睡眠薬も父の物を飲んだと、判断され事件性は無いと報告された。その後の二人は、借金の返済が済み、優雅に暮らしていると、言われている。 完これは2000文字のホラーの「待っている美少女」の前編です。この様な経緯があり、明子は終着駅で両親を待ってましたが、今も待っているのか?どうかは不明です。 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #自殺 #少女 #列車 #睡眠薬 #遺書 #返済 #運転手 #売れないKindle作家 #保険金 #明子 9