見出し画像

少しずつ「人と違う選択をすること」を練習する

こんにちは。

NHKクローズアップ現代で『日本人が海外で出稼ぎ!? 若者たちが海外を目指す背景にあるもの』という特集が組まれたそうです。

安定した職をも捨てて、若者たちが続々と海外に出稼ぎに向かう!オーストラリアの農場で働く男性は1日6時間の作業で月収50万円。介護施設で働く女性はアルバイトを掛け持ちして9か月で270万円貯金、念願の大学院進学の準備が整った。背景には経済成長と同時に賃金を上昇させる先進国のトレンドに日本だけが取り残される現実が。さらに外国人労働者から見た日本の魅力も低下。安いニッポンで今、何が?専門家と共に考える。

NHKクローズアップ現代
“安いニッポンから海外出稼ぎへ” ~稼げる国を目指す若者たち~
初回放送日: 2023年2月1日

日本に「働きにくさ」を感じて海外に出る人が増えている

私はまだこの番組を観れていないのですが、サイトでかなりのコンテンツが紹介されていて、それだけでも勉強になりました。(>放送内容をテキストで読む

こうした若者たちに取材を続けていると、(日本が低賃金なのに対し、海外では稼げるといった)金銭面以外にも、「働き方」という面の魅力を感じる人が少なくなかったそうです。

私自身は海外在住者ですが、特に出稼ぎ目的で移住したわけではないですし、そんなに稼げている身分ではないのでそこは彼らと違うのですが、この番組で彼らの口から語られている「日本ではこうだったけれど、海外に来てみたらこうだった」という彼らが感じていること・体験が、私が普段から感じていることが非常に近いことに驚きました。

  • 年功序列(上が詰まっていて自分の裁量で仕事ができない)

  • 男女の賃金格差

  • ピラミッド型の組織

  • 仕事量に給与が見合っていない

  • 上司を見ていても、将来そうなりたいと思えない

この番組は日本に向けて警鐘を鳴らしているのかもしれませんが、私個人としては若者が日本を出て海外に行くというのは、彼ら自身にとってだけでなく、日本の社会にとっても、とても良いことのように思えます。

たとえ一度海外に出たとしても、なかにはまた日本に戻る人たちも一定数いるはずですよね。二度と日本に帰らないという人ばかりではないはずです。

海外と日本を行ったり来たりすることによって、植物の受粉に貢献してくれるミツバチのように、彼らが海外で感じたことを自分の周囲半径3メートルほどのコミュニティで「自分はこうだったよ!」と話すだけで、少しずつコミュニティの価値観がアップデートされると思うからです。

そして社会のあちこちで小さなコミュニティの価値観がアップデートされると、結果的には社会全体の価値観もアップデートできると思えるんです。

まさに今度Voicyで対談させていただく予定のCKさんこと唐渡千紗さんは、『ルワンダでタイ料理屋をひらく』(左右社)というご著書のあるように、30歳でリクルートを辞め、シングルマザーとして縁もゆかりもないアフリカのルワンダに息子さんと2人で渡り、なんと現地でタイ料理店を開業したという経験をお持ちの方ですが、最近は日本に戻られ、ルワンダのタイ料理店はリモートで経営されていらっしゃいます。

そしてVoicyでは、結婚という契約をしない状態でスペイン人男性との間に娘さんを出産された話や、海外で経営をしてみて得た学びなどを広くシェアされています。

こういうことがたくさん起こっていけば、バトンリレーのように経験や想いを繋いで、日本も価値観をアップデートできるのではないでしょうか?

海外移住を選択した私は、もしかしたら小さい頃から少しずつ「“人と違う選択をすることを練習できていた”のかもしれない」という仮説

もう一点、クローズアップ現代のこの番組から感じたのは、私自身もシングルマザー時代に台湾への移住を決断していますが、取材などを受けるとよく「すごい覚悟ですね」「ぶっ飛んでますね」などという反応が返ってくることが多いのです。

海外出稼ぎを選択した若者たちがいるのと同じように、その選択をしていない若者もいると思います。そこにはさまざまな事情があると思うのですが、そうした大きな選択をする/しないの差は何だろう?と、ぼんやり考えていました。

そしてふと思い至ったのが、もしかしたら私は小さい頃から少しずつ「“人と違う選択をすることを練習できていた”のかもしれない」という仮説です。

もちろん、父が海外出張によく行っていたとか、そうした背景はあったかもしれません。でも、それ以外にもこれは影響がありそうだと思ったことがあります。

私は中学1〜2年生の頃に、足をケガして、松葉杖をついていたことがありました。登下校や教室の移動にも時間がかかるし、縫ったり抜糸で病院に通うために学校を早退・遅刻する必要がありました。それまでは自然に学校での団体生活を過ごしていたけれど、その時「あ、別にちょっとくらい人と違っても全然大丈夫そうだ」と思いました。今でもあの感覚をはっきり覚えています。

その後、高校一年生の夏休み、1ヶ月間ほどニュージーランドにホームステイしました。普通、高校一年生の夏休みといえば「高校生デビュー」という期間で受験勉強から解放され、みんなおしゃれに恋愛にと輝かしい夏休みを過ごすものだったのですが、私はまたここでもみんなと違う選択をしました。

こうして、小さいことから大きなことまで、少しずつみんなと違うことを選択する練習を重ねてきたから、シングルマザーで海外移住といった、人から見るとぶっ飛んだ選択をしたのかもしれないなと思った次第です。

子どもたちを育てるなかで、こうした練習をさせることを意識するのも大切なのかなと思いました(我が家の場合、子どもたちは生まれた瞬間から外国人として暮らすことになるので、人と違いすぎることでアイデンティティが揺らいだりすることをフォローする必要に迫られるような状況ではあるのですが…)。

皆さんはいかがでしょうか。

Voicyでも同じ話を音声配信しております


いいなと思ったら応援しよう!

近藤弥生子 | 台湾在住ノンフィクションライター
こちらでいただいたサポートは、次にもっと良い取材をして、その情報が必要な誰かの役に立つ良い記事を書くために使わせていただきます。

この記事が参加している募集