NHK大河ドラマ「麒麟がくる」最終回
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」(全44回)が終了。
https://www.nhk.or.jp/kirin/
大変に不運なドラマだった。沢尻エリカの麻薬取締法違反容疑逮捕で撮り直し、コロナ禍で撮影延期。二度のアクシデントで、その都度に放送順延。これは主演の長谷川博己の責任では全くないし、制作サイドの落ち度でもない。おそらく放送回数も数回短縮されたことだろう。終わりも急いだ印象がある。本能寺の変の後に、山崎の合戦の放送回がないことは、光秀史上ふつう考えられない。
前半は斎藤道三との物語。「誰にも手出しができない、大きな国を作る」という壮大な建国の夢に酔わせてもらった。後半は織田信長との物語。信頼し合っていた二人の歯車が次第に狂い、本能寺の変の悲劇に至る過程を描く。アサヒ芸能2/14号には、謎に満ちた「本能寺の変」明智光秀の動機一覧を、光秀原因説、黒幕原因説、その他説の中で17に分類。さらにその理由を23挙げている。前後編を通してのテーマは「王が仁のある政治を行う時に必ず現れるという聖なる獣、麒麟」の到来への期待。結果的には戦国の世を統べたのは徳川家康だったが、麒麟のイメージとはほど遠い。弥勒菩薩やキリストの降臨のような、見果て夢なのであろう。
今回のドラマで最もインプレッシブだったのは、織田信長を演じた染谷将太の快演怪演。若き信長の持つ未知の可能性や、天下を制した後の苛烈さは鬼気迫るものがあった。歴史資料によれば面長な信長だったので、最初はイメージが合わない印象だったが、演技力で固定イメージを覆した。本木雅弘演じる斎藤道三も、実態はもっと悪辣だったのだろうが、天下国家の理想を語れる一国の将として魅力的に演じられていた。肝心の明智十兵衛光秀だが、長谷川博己の演技は、理知的かつ良識を弁えている従来のイメージの範疇だった。むしろ川口春奈演じる信長の妻・帰蝶や、門脇麦が演じた薬剤師の駒に慕われる、色男の面目躍如というところだった。そして何より音楽が良かった。大河ドラマの最大の魅力は音楽だと思うが、ジョン・グラムの楽曲は抜きん出て秀作だったと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?