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バイオ系特許明細書で用いられる"treatment"の訳

バイオ系の英文特許明細書に必ずといっていいほど登場する"treatment"という単語ですが、ほとんどの場合「治療」と訳されていると思います。

これは当然、翻訳という視点では正しいと思うのですが、私は「治療」ではなく、「処置」という言葉を用いるほうが良いのではないかと考えています。

その理由は、バイオ系の英文特許明細書には、たまに"therapeutic treatment"という言葉が出てくるからです。

この"therapeutic treatment"という語は、用いられる場合は、"prophylactic treatment"という語と併用されることが多いです。すなわち、明細書に記載されている製剤などを、"therapeutic treatment and/or prophylactic treatment"のために投与することができる、などの意味合いで用いられます。

こういう記載があると、"treatment"を「治療」と訳していると、"therapeutic treatment"の訳が「治療的治療」となってしまい、どうもしっくりきません(ちなみに、"prophylactic treatment"は「予防的治療」)。


英文明細書だと、"treatment"という語とは別に"therapeutic"や"therapy"という語も同時に登場することが多く、これらの後者の単語に対しては、必然的に「治療法」「治療的」という語が充てられることになってしまうかと思います。


なので、"therapeutic treatment"の訳出における表現の重複をなくすために、"treatment"は「処置」としたほうがいいのではないかと考えています。これだと、「治療的処置」「予防的処置」という表現を自然に用いることができます。


この、"therapeutic treatment"という表現は、英文特許明細書で出てくることは、"treatment"ほど多くはありません。ですが、"treatment"を「治療」と訳すことで、訳し進めているうちに"therapeutic treatment"を「治療的治療」と訳さないといけなくなってしまう場面に遭遇することが稀にありますし、それは避けたほうがいいと考えます。


たった1つの表現が出てくるだけで、表現の重複が起こってしまうのは修正が大変なので、そういう手間を省くために、"treatment"は「処置」と訳すほうが、翻訳者目線では楽だと思います。

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