見出し画像

デキる社会人の語彙力を身に付ける #04

#03からの続きになります。これまでのコラムで参考になった語彙はありましたでしょうか? 引き続き紹介していきますので、「語彙力」をガシガシ上げていきましょう。各語彙の「ジャンル」の定義については、#01のコラムをご参照ください。


【No.020】
・語彙:つぶしがきく

・意味:特定の技能や経験が、他の分野や状況でも役立つこと。どんな環境でもその人の能力や経験が活かせるということを指す。
・ジャンル:慣用句・ことわざ
・用例:彼は営業だけでなく、マーケティングや人事でも活躍できる、つぶしがきく人材だ。
・解説:
 この表現は、ある特定の能力やスキルが他の場面でも応用できることを意味します。もともとは、金属や材料が壊れても、再利用して他の用途に使えるという意味で使われていた言葉が転じて、個人の能力やスキルに対して使われるようになったようです。ビジネスの世界では、特定の業務や役割に縛られず、さまざまな部署や職種でその人の能力が活かせることが重要視されます。たとえば、営業経験を持つ人がマーケティングや顧客サポートなど、他の分野でもその経験を活かして働ける場合、「つぶしがきく」と評価されます。別のコラムで詳しく解説するつもりですが、要は『抽象化力』が高い、と言い換えることもできるかもしれません。これからの社会では必須能力と感じています。


【No.021】
・語彙:喉元過ぎれば熱さを忘れる

・意味:一度困難や痛みを経験しても、それが過ぎ去ればその辛さや苦しさをすぐに忘れてしまうこと。また、過去の苦い経験から教訓を得ないことを指す。
・ジャンル:慣用句・ことわざ
・用例:彼は病気で苦しい思いをしたのに、すっかり元気になった今では健康の大切さを忘れてしまい、まさに喉元過ぎれば熱さを忘れるを地で行っている。
・解説:
 このことわざは、喉を通るときには熱く感じた飲み物や食べ物も、喉を過ぎてしまえばその熱さを忘れてしまうことに由来する表現で、困難や苦しみを経験しても、その状況を脱すれば痛みや教訓をすぐに忘れてしまう人間の性質を表しています。たとえば、ビジネスの場面で、失敗から学ばずに同じ過ちを繰り返すことを戒めるために用いられます。人は危機感を感じているときには真剣に考えますが、ひとたび問題が解決するとその意識が薄れ、再び同じ問題を起こす可能性が高まります。経験から学び、同じ失敗を繰り返さないために過去の教訓を常に心に留めておくことの重要性を伝えたい時などにこのことわざを引用するとよいでしょう。


【No.022】
・語彙:必然性

・意味:ある物事が起こることが避けられないことや、ある出来事が必ず起こると決まっていること。
・ジャンル:熟語(梅)
・用例:成功するためには努力の積み重ねが重要であり、それが結果に結びつく必然性を理解することが大切だ。
・解説:
 対義語は「偶然性」であり、つまり「必然」は”偶然”ではないことを表します。ある物事が避けられずに起こる性質や、ある結果に至る原因が当然のこととして存在する状態を表し、論理的な関係や因果関係に基づいて使用されます。例えば、ビジネスの場面で新しい市場に参入する際、成功には綿密な市場調査と戦略の立案が必要であり、その努力が成功に導く「必然性」を持つと考えられます。このように、「必然性」は物事の結果や出来事の発生が偶然ではなく、論理的に予測可能であり高い確率でそうなるであろうことを強調する際に使われます。


【No.023】
・語彙:表裏一体

・意味:表と裏のように、切り離すことができない密接な関係にあること。
・ジャンル:熟語(梅)
・用例:成功と失敗は表裏一体であり、挑戦する過程でどちらも経験することになる。
・解説:
 この表現は表と裏が一つのものであるように、二つのものが切り離せない密接な関係にあることを示し、互いに対立するかのように見える事柄が、実は本質的に結びついていることを強調する際に使われます。例えば、ビジネスにおいてリスクとチャンスは「表裏一体」であると言われるシーンは皆さんもよく聞くと思います。リスクを取ることなしに新たなチャンスを得ることは難しく、逆に大きなチャンスには相応のリスクが伴うことが多いのです。また、人間関係において象徴的なものとして、信頼と裏切りが「表裏一体」の一例に挙げられると思います。信頼があるからこそ裏切りは痛手となり、その逆もまた然りです。このように、「表裏一体」という表現は、表面に現れる現象の裏にある要素やその密接なつながりを理解するための重要な視点を提供します。日常生活やビジネスシーンで、目に見えているものだけでなく、その裏にある本質を見極めることが求められる場面で、この表現が有効です。


【No.024】
・語彙:分相応

・意味:その人の地位や能力、経済力などにふさわしい程度であること。
・ジャンル:熟語(竹)
・用例:彼は分相応の生活を大切にして、無理な出費を避けている。
・解説:
 「分相応」とは、無理をせず自分の実力や環境に合った選択をすることで、その心がけにより安定した生活や仕事の進め方が可能になります。例えば、収入に合わない高級品を買い続ける生活は、いずれ経済的に破綻するというのは言わずもがなと思います。このような場合、分相応の範囲での消費をしていれば、ということが教訓になります。また、キャリアにおいても、分相応な目標設定は重要です。自身のスキルや経験に見合った目標を設定し、それを達成することで、次のステップへの道が開けます。過大な目標は挫折を招くことが多く、逆に過小な目標は成長の機会を逃すことにつながります。したがって、「分相応」は、自分を過大評価せず、かといって過小評価もしないバランス感覚を養うために必要な考え方です。この熟語・表現を手の内化し、常に自分を客観視できるスキルを身に付けたいものです。


【No.025】
・語彙:便宜上

・意味:状況や事情に応じて、特定の目的や便利さを考慮して行動すること。実際の状況とは異なるが、その場の便利さのためにあえてそうすること。
・ジャンル:熟語(梅)
・用例:便宜上、この会議はオンラインで行うことに決定した。
・解説:
 この言葉は、特定の状況や目的に合わせるため、実態の事実や事情を多少無視してでも、その場にとって最も便利で効率的な方法を選択することを指して使用します。たとえば、会議の開催方法を選ぶ際に、本来は一堂に会して開催したいところ、全員が集まるのが困難であれば、”便宜上”オンラインでの開催を決定する、といったことが考えられます。これにより、全員が参加しやすくなり、時間とコストを節約できます。ビジネスシーンや日常生活においては、よく”便宜上”の判断が求められますが、その結果が長期的にどのような影響を及ぼすかを考慮することも重要です。「便宜上」には、”必ずしも最適ではないが”という前置きのニュアンスが含まれています。したがって、便宜上の判断は短期的な効率を重視する傾向があり、場当たり的な対応になりがちで長期的には問題を引き起こす可能性も含んでいます。ビジネスシーンでは特に、便宜上の選択が一時的な解決策であることを理解し、その後の計画や対応を考慮することが重要です。


【No.026】
・語彙:水を差す

・意味:他人の話や行動が盛り上がっている時に、不用意な言動をしてその雰囲気を壊したり、興を削いだりすること。
・ジャンル:慣用句・ことわざ
・用例:せっかくのパーティーだったのに、彼の発言が場の雰囲気に水を差してしまった。
・解説:
 「水を差す」とは、文字通りには火を消すために水をかける行為を指しますが、比喩的には盛り上がっている場の雰囲気や話題に対して否定的な発言や行動をして、その勢いや流れを止めてしまうことを意味します。たとえば、会議が順調に進んでいるときに、突然問題点ばかりを指摘して話を遮ることや、楽しんでいる場面で不愉快な話題を持ち出すなどがよくある例かと思います。この表現は、他者の気分を害したり、場の和やかさを損ねたりする行為としてネガティブな意味合いを持ち、ビジネスシーンでは、共感やサポートが求められる場面で特に注意が必要です。対話や議論が活発に行われる中で、不用意に「水を差す」発言をしてしまうと、関係者のモチベーションが下がり、チームワークにも悪影響を及ぼすことがあるため、状況をよく把握し、周囲の反応に気を配り、適切なタイミングでの発言や言動を取ることが大切です。


【No.027】
・語彙:無邪気

・意味:悪意や疑念がなく、純粋で素直なさま。
・ジャンル:比喩表現
・用例:どんな質問でも受け付けますと言ったら、無邪気にレベルが低い質問が山ほど出てきた。
・解説:
 「無邪気」という言葉自体の、日常生活におけるユースケースはおおよそ認識にギャップは無いと思われます。具体的には、何の疑いもなく、悪意や打算を持たずに行動するさまを指し、そのためにポジティブに言えば他人に安心感や温かさを与えます。しかし、大人に対して使う場合には、その人が社会的な駆け引きや計算から離れていることを示すとともに、世間知らずや単純さを表すために使われます。たとえば、ビジネスの場で無邪気に振る舞うことで、相手から信頼を得ることができる一方で、状況によっては、無知や配慮の欠如と捉えられるリスクもあります。仮にあなたの言動が「無邪気」と表現された場合は、必ずしもポジティブな受け止めをされていない可能性を考えましょう。


【No.028】
・語彙:利己的/利他的

・意味:
  利己的:自分の利益や欲望を最優先に考えるさま。
  利他的:他人の利益や幸福を考え、(自分より)他人を優先するさま。
・ジャンル:熟語(竹)
・用例:
  - 彼は利己的な考え方を改め、チーム全体の利益を考えた。
  - ボランティア活動は、利他的な精神の表れといえる。
・解説:
 「利己的」と「利他的」は、互いに対立する価値観を表す言葉で対義語の関係にあり、人間の行動や意識の動機を説明する際に用いられます。「利己的」とは、自分自身の利益や快楽を優先する態度や考え方を指し、自己中心的であることが多いです。一方、「利他的」とは他者の利益や幸福を考えて行動する態度や考え方を指します。利他的な行動は他者との信頼関係を深め、コミュニティや社会全体に貢献することができます。一般には利他的な考えが重んじられますが、ビジネスは戦いの場でもあるので利己的な考えが必ずしも絶対悪というわけではありません。ビジネスや日常生活の中で、利己的な行動と利他的な行動のバランスを取ることこそが重要です。


~~#05に続く~~


いいなと思ったら応援しよう!