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Happy New Year of Serpentine!

あけましておめでとうございます。
岩手で絵を描いている絵描きです。
一月も末になって年頭のあいさつ、だいぶ遅いですか。
遅くはありません。今日1月29日は今年の旧暦の元旦です(書いてるうちに30日になったけど)。
いままで、出遅れ感を払拭するチャンスを待っていました(結局出遅れたけど)。

今年は郵便料金の値上げやらで年賀状の往来は半分以下になり、自分も木版画で年賀状を作ったりする気もなくなり、干支のことをあまり考えなくなっていました。
しかし今年は巳年でした。蛇、といえば蛇紋岩です(?)
蛇紋岩(じゃもんがん)とは、主に蛇紋石という鉱物でできている岩石です。
でき方としては火成岩(または変成岩)というやつで、地球の内部でできる岩石です。マントル物質であるかんらん岩が海洋底近くで水の作用を受けて蛇紋岩化するという…詳しくは調べてみて下さい。

なぜ「蛇紋」の名がついているかというと、表面の模様が、黒・深緑・緑・碧・白といった色が流れるような模様で蛇の皮の色に似ているからです。元はといえば西洋でそう思ってSerpentine(Serpent が蛇の意)と名付けたのを日本語訳しているんですね。

それで、今年はへびどしだから蛇紋岩の年でもあると私は言いたいのです。
なんでそんなことを言うかというと、私は蛇紋岩が好きで蛇紋岩の絵を描いているからです。このチャンスは12年に一度しかやって来ません。だから言わせてください…今年は蛇紋岩の年だと。

まず蛇紋岩がどういうものかですよね。
こちらです。

蛇紋岩(東京都日の出町)

こういう石がどこにあるかというと、こんなところにあります。

蛇紋岩の露頭

これは東京都の日の出町にある蛇紋岩の露頭です。蛇紋岩が見られる地層は日本全国にありますが、どこででも見られるというわけではありません。
私がいつも見ていて、絵にしているのは岩手の早池峰山という山の蛇紋岩です。

早池峰山

北上山地の最高峰、早池峰山(1917m)です。早池峰山の西に伸びる縦走路からの眺めです。見えている岩がみんな、蛇紋岩です。
あるいはこちら。

早池峰山小田越コース一合目

早池峰山で一番やさしいコース、小田越(おだごえ)コースの一合目です。登山口から20分くらいで到達できます(ちなみに今見えているのは二合目までです。よくあれが頂上ですか?と聞く人がいますが、頂上まではここからまだ2時間かかります)。
このやや赤茶色の岩が全部蛇紋岩です(真ん中のグレーの石柱は花崗岩で作られた標柱)。早池峰山の蛇紋岩は約5億年前にできたもので、日本で見られる最古の部類の地層に数えられます。
さっきの黒っぽい石とは見た目が違いますね。これは風化のためにこんな茶色をしているのだそうです。それでも歩きながらよく見ると、こんな色に出会います。

蛇紋岩(早池峰山)
蛇紋岩(早池峰山)

これらは採掘して来たわけではありません。山にくっついている岩の表面です。
早池峰山の岩石は許可なく採取することは禁じられています。
そして、私はこれらの岩の表面の写真を撮ってきて、絵に描いているのです。

「不連続面の研究 010」 水可溶性油絵具 キャンバス 194.0×324.0cm 2009年
「不連続面の研究 019」 油彩 キャンバス 227.3×363.6cm 2022年

結構大きいキャンバスに描いています。なぜ大きいキャンバスに描いているかというと、山で岩石の小さな表面を見つめている時、その映像は脳内一杯に広がっていて、私は蛇紋岩の生成された海洋底にダイブしているような感覚になる。その吸い込まれるような感覚を、身体を超えるサイズの絵画を見ることで新たに体験しようとしているのです。

「不連続面の研究 014-017」(左)、「不連続面の研究 010」(右) 岩手県立美術館  2022−2023年

この蛇紋岩を描いた絵画は「不連続面の研究」というシリーズ作品です。どうぞ私のウェブサイトでご覧ください。


それでは、蛇紋岩の話に戻ります(干支にちなんで自作の絵画に誘導する記事はここまでなので、ここで退場して頂いても構いません)。

私は元々鉱物マニアではなく、早池峰山が好きで歩いていたら早池峰山が蛇紋岩の山だったのですが、今では蛇紋岩を訪ねて歩くようにもなりました。大体は近場ですが、前出のように東京の蛇紋岩を訪ねたりもしました。
蛇紋岩の元のかんらん岩をたずねて北海道のアポイ岳に登ったこともありますが、至仏山や谷川岳にはまだ行けていません。
蛇紋岩には植物の成長を妨げる物質が含まれているため、蛇紋岩地帯ではそれに適応した蛇紋岩植物と呼ばれる植物が生育することも知られています。早池峰山にハヤチネウスユキソウなど希少種が多いことの理由にもなっています。

2022年〜2023年には蛇紋岩好きにはたまらない展覧会が、埼玉県立自然の博物館でありました。その名も、「The 蛇紋岩」。

すごいインパクト
蛇紋岩は「岩手県の石」
世界のあんな蛇紋岩こんな蛇紋岩
あれやこれや
ほほー

この展覧会は蛇紋岩に魅せられた人間にはたまらない展覧会でした。埼玉でやっていたので一回しか行けなかったのが残念でした。図録も充実していました。

さてそんな蛇紋岩ですが、建築材料として装飾に使われてもいます。

国連総会議場

国連総会で演説している人の台と後ろの台がどう見ても蛇紋岩です。
また、いま写真が出て来ませんが、岩手県立美術館のトイレの壁が蛇紋岩のパネルで装飾されています。黒っぽい蛇紋岩で、トイレとしてはあまり落ち着かない。
西洋では蛇紋岩を装飾に使うことが多いようです。独特の色と紋様が人々を魅了するのでしょう。イタリアやイギリスに産地があるそうです。

グラナダ(スペイン)の広場で
これ蛇紋岩だと思う
これも

また、米国カリフォルニア州の「州の石」も蛇紋岩です。

蛇紋岩の話、だいぶ飽きてきましたよね。私は飽きませんけど。

最後に、最近知ったところでは私の世代ではヒーローだったハードロックバンドGuns N' Roses の超有名曲"Welcome To The Jungle"に蛇紋岩が出てきます。
いや、正確には蛇紋岩ではなくてserpentineという単語が出てくるのです。
ボーカルのAxel Roseが悶えるように歌う部分、高校生の頃は歌詞カードも見てなくて何歌ってるか分からなかったのですが、最近になってSpotifyで歌詞を見ていて気づきました。

serpentineって言ってる!

俺の蛇紋岩を感じろ…?
蛇紋岩を何百回となく踏んで歩きながら無知な私は辞書を引きました。

…そうではなかったんですね。ここではserpentineは「男根」の意味でした💦
蛇は男根の象徴でもありますからね。
ということはYear of Serpentine って言っちゃうと男根の年っていうことになるのかあ。年賀状に書いちゃったよ。

今年もよろしくお願いします。

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