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「なんで勉強するんだろう?」への応答

今回の記事の題名にもあるような「なんで〇〇を勉強するの?」は、学校の先生をやっていると耳に入ってくるフレーズです。
というか、学生のころ私もこの言葉を使っていました。
かなり切実に(笑)
主にテスト前に(笑)

「大人になってから数学使わないし」とか。
「物理に出てくる法則とか考えた人って暇人なの?」とか。
「古文漢文読めなくても生きていけるよね」とか。

先日、高校の歴史総合の時間に「小テストやるよ~」と言った時も同じような感じで、「先生、本当に歴史が苦手で、勉強しても頭に入ってこないんです。自分にとっての必要性が感じられないんです。助けてください」と懇願してきた生徒がいました。
(※おふざけ半分というか、「やばい!もうだめだー!!」と友達同士で頭を抱えて叫びながらの、この問いかけです。)
「わかる、わかるな~」と返します。「私もそうだったよ」と。

「なんのために、毎日あれこれたくさん勉強するんだろう」
古今東西おおくの高校生がそう思いながら机に向かっているのでは…。

今回は私自身がこの疑問に向き合ってきた中で、なるほどなぁ、と腑に落ちた話を書き留めておこうと思います。

①高校生のとき英語長文で読んだ話
高校時代にお世話になった英語の先生がいて、補講などの際にその先生が選ぶ問題集の内容が面白いものばかりでした。例えば、「なぜ人は熱いものをふーふーするのか?」という題名で、息を吹きかけるとどうして飲み物が冷めるのかを解説していたり(その英語長文を読んで以降、わたしはマドラーを使わなくなりました。「ふーふー」で混ぜています。笑)、「虹は何色に見える?」という題名で、世界各国の色の見え方を紹介したり、という具合です。
日本では一般的に、虹は「7色」と言われますが、とある地域では「2色」と答えるのがふつうなのだとか。日本は古来から色彩に対する感受性が豊かで、色を表現する単語が1000語以上あるそうです。例えば「赤」にしても「朱色・茜色・蘇芳色」など分けて表現します。そういうわけで、虹の色を「7色に分けて見る」というのです。反対に、色彩に関連する単語が多く存在しない地域では「明るい色と暗い色」という識別の仕方をするために、「2色に見える」のです。この文章は文化人類学のカテゴリーで、話はさらに深まっていきますが、冒頭部分の話は以上のような感じでした。
「これぞ色眼鏡?!」と高校生の私が言ったかどうかは忘れてしまいましたが、言葉(言語)が見え方(知覚)に影響するってすごいな!でもこわいな!と衝撃を受けたことは確かです。
物事の見え方や考え方の「当たり前」(=偏見や先入観)って、こんなに身近で根深いところに、ごく自然に存在してしまうものなんだな~と。
それと同時に、まだ知らないことがたくさんあるとして、知れば知るほど、違う見え方を体感できるようになるのか!とも。
これが、「勉強してると発見があるんだな」と思えた体験です。大学の講義で、『思考と言語』という課題図書が出たときに同じようなテーマに再会し、心理学ともつながっているんだ!とびっくりしました。

②大学4年生の講義で聞いた話
先生が講義中の雑談のなかでお話されていたことなのですが、妙に納得して聞いていたのを覚えています。
「中高生にあがると学習内容がどんどん難しくなって、勉強が嫌い・意味ないって思う子が増える。でも、その時期の学びって、言ってみれば一流の料理人になるのに必要な修行なんだと思う。一流の料理人は、素材の特徴を理解してその美味しさを最大限に引き出せる人で、かつ道具がきちんと整えられている。ぼろぼろの包丁では、せっかくの素晴らしい素材も台無しになるし、道具選びを間違えると、これまた素材の良さを引き出せない。”進路選択”は、”素材選び”のことで、自分がいいなと思った素材をさばくときに、きちんと手入れされた道具が手元にないと何もできない。だから、素材選びに進む前の段階で、道具の種類と手入れに詳しくなっておくといい。高校までの学習は、それ以降の学びの”道具”になってくれるけれど、本格的な調理に取り掛かる前の、退屈で平凡なメンテナンスの作業は、時に苦痛に感じられるかも。ただその作業の積み重ねこそが一流になるための土台になる」と言っていました。
それぞれの教科の好き嫌いもあれば、勉強そのものが苦痛だ!と思うときもあるかもしれません。でも、多くの道具の存在を知って使い方を覚えて、何に使えるかを考えてみて、いざ素材を目の前にして実際に使って料理して、出来上がったものが誰かの喜びや感謝につながっていくことを想像してみると、いませっせと苦労するのも悪くないかな、と思えます。
私自身、料理はあまり得意ではありませんが、「おいしい」「ママいつもありがとう」といって食べてくれる家族がいるから、日々いろいろ工夫して作ってみようという気持ちになります。

「虹」の話も、「料理」の話も、悩んでいる生徒の相談にのっているときなどに話すことがあります。
勉強が一番大事!学校の勉強についていくことが最優先!
という極端な考えはもっていませんが、勉強する過程でたくさんの気づきや成長をもたらしてくれることは確かです。

今後、「新しい学びの場」を創っていくにあたり、上記のようなことは丁寧に伝えていきたいなと思っています。
「新しい学びの場」の構想については、過去の記事をご参照ください。





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