「透明の色」

なんだよそれ、というタイトルだが。
今週、今年度前期の朝ドラが最終週を迎える。
脚本担当者が推しアニメの脚本家チームの一員だから、という理由で、朝ドラは苦手な私が珍しく、毎日のように見ていたのだが。

学生時代、一応は女性学を「かじった」人間としては「ふむ」と感じるところがいっぱいの作品だった。
その中で気になったのが、主人公の学生時代(「女子部」を経由してある私学の法学部を卒業している)の同窓生である、ある男性のことだ。
轟というその男性は、戦後、山田という主人公の(女子部時代からの)同窓生と再会し、弁護士事務所を開く。
のちに山田も司法試験に合格し、轟と二人三脚で弁護士事務所を運営するわけだが。

実は轟は同性愛者(というか、パートナーが男性)である。
ただ、この作品では、轟は「作中の時代を生きてきた『一般の男性』であり、たまたま『性的志向が男性』である人物」として描かれている。
言葉遣いも一般的な「男性」のそれであり、記号としてありがちな「男性同性愛者」としては描かれていない。
(むしろ一般的にいう[この言い方、ゼミの担当教授の授業中のセリフもあり、あまり使いたくはないが]「男性同性愛者の記号」で描かれてないことがありがたかったが)
市井の人がたまたま「マイノリティな部分を持ち合わせている」人物(そこが本質ではない、轟はあくまで主人公の知人であり同じ法律の世界に生きるもの)として描かれていることに共感を覚えた。

そこでつい、個人的に比較してしまうのが、この脚本家氏を知るきっかけとなったあるアニメである。
「TIGER & BUNNY(タイバニ)」という作品は、シュテルンビルトという架空の都市を舞台にした「NEXT」と呼ばれる特殊能力を持つ人たちに焦点を当てたヒーローものであり、2011年のアニメ版1期から劇場版2作品を経て、2022年のNetflix配信→2023年のNHK地上波放送による2期で一応の完結を見ている。
その中に「ファイヤーエンブレム(本名:ネイサン・シーモア)」というヒーローがいる。
このヒーローはある意味「被差別要素てんこ盛り」な人物である。
所属企業のヒーローかつ、企業オーナーという立場なのだが、カラード(職業上の立場から鑑みるにいわゆる「上流黒人」)・セクシャルマイノリティ(同性愛者:作中ではそのことを強調するためか、いわゆる「オネェ」として描かれている)・NEXT(企業オーナー兼ヒーローなので、いわゆる「ギフテッド」として描かれていると考えてもいいと思う)な男性として「ファイヤーエンブレム」は描かれている
舞台となっている架空の都市のモデルがアメリカのある都市ということもあり、そういった状況を反映してるんだろうな、と納得はしていた。

その時の「タイバニ制作陣の限界(考え方という意味での)」を、劇場版2作目のファイヤーエンブレムのセリフに見てしまったのだ。
それは、精神に影響を与える(悪夢を見せる)能力者の影響下に陥り、専門病院に入院したファイヤーエンブレムが、生中継されているヒーロー活動特番のTV画面から聞こえてきたヒーロー仲間のセリフに我に返るところから始まる。
能力の影響から解放され、ヒーロー「ファイヤーエンブレム」として、惨状夥しい現場に戻る。
自分を陥れた敵方の能力者と対峙し、その際にこんな趣旨のセリフを吐いたのだ。
「男は『度胸』女は『愛嬌』というでしょ。じゃぁオカマはなんていうか知ってる?? 『最強』よ(という感じだったと思う。記憶に頼っているので、細部は異なっているかもしれない)」
ここでの「オカマ」というセリフに、私は何かひっかかるものを感じた。

たしかに、いわゆる「オネェ」として男性同性愛者を描くのは(一部そういう人たちがいるとはいえ)、わかりやすい記号ではある。
また、作中「度胸」・「愛嬌」・「最強」と韻を踏む関係上、この言葉しか選択肢がなかったのかもしれない。
でも、なにかがひっかかる。
「虎に翼」のセリフでいえば「はて??」だろうか。
ヒーローであり、所属企業のオーナーでもあるファイヤーエンブレム/ネイサン・シーモアが、自身のことをこう評するだろうか?? と
と、同時に、今の状況下では、これがある種の限界なのだろうな、という感想も抱いた。

そんな劇場版2作目から10年、2期配信から2年。
「市井の人物」のひとりとして「虎に翼」の中で轟が描かれていることにほんのちょっとだけ安堵したのだった。

この記事に対する感想である。
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