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ホスピタリティケア④ケアの軸

 The Harmony Inc.独自の認知症ケアメソッド『ホスピタリティケア』のご紹介、第四弾です。
 前回の記事ではホスピタリティケアを実際に行う際の4つのステップをご紹介しました。
 今回の記事ではホスピタリティケアをただの技術にしないために必要なケアの軸についてご紹介させていただきます。


ゲスト様の立場になって考える。

そして「ありのまま」を受け入れるところからケアをスタートさせる。

 ホスピタリティを有効に発揮するためには、サービス提供者達がケアを行うにあたっての前提を揃えておかなければなりません。そうしないとメンバーが皆それぞれに自分が正しいと思うケアを(悪気なく)行ってしまい、結果バラバラのケアをゲスト様に提供してしまうことになるからです。

 その前提となるのが「ケアの軸」です。

 介護業界では「その人らしさ」ということを重要視し、それをサポートすることが大切ということがよく言われます。それは全くその通りで、ゲスト様がその人らしく生活を送れることが何よりも幸せなことですし、それをサポートするのが介護です。

 しかし「その人らしさ」とはどういうことでしょうか?全員一律に穏やかであることでしょうか?その「その人らしさ」を介護者側が考えてはいないでしょうか?知らず知らずのうちに介護者が考える「その人らしさ」を押し付けていないでしょうか?

 例えば、夜なかなか眠られず施設内を歩き回っているゲスト様がいらっしゃったとしたら、その状態をすぐ「問題」として認識していないでしょうか?「夜は良眠すべき」「歩き回るのは徘徊という症状」「静かに座っているのが良い状態」と決めつけていないでしょうか?中々眠られないことにイライラしたりしてないでしょうか?

 そのゲスト様は元々就寝されるのが遅いライフスタイルなのかもしれません。徘徊ではなくただの散歩なのかもしれません。体を動かすことが好きなのかもしれません。そういった生活者としてのゲスト様を見る視点を忘れてないでしょうか?

 「認知症の人」として見るのではなく、認知症もその人の一部であるという認識で全人的にゲスト様のことを捉えることが、「ありのまま」を受け入れるということです。

 「その人らしさ」とは一見素晴らしい概念に見えますが落とし穴もあります。この落とし穴に落ちないためには、「その人らしさ」からケアをスタートさせるのではなく、まずその人の「ありのまま」を受け入れるところからケアをスタートさせることが重要です。

 この「ありのまま」を受け入れるためには、「ゲスト様の立場になって考える」ということが必要になります。これがザ・ハーモニーのケアの軸になります。

  •  例)症状により怒りっぽくなっているゲスト様

 「その人らしさ」からケアがスタートすると、怒りっぽくなっている今の状態は「その人らしくない」=「良くない」という視点で関わることになります。今この人は良くない状態だから、良い状態に戻すためにはどうしたらいいか、という関わりになります。怒っている理由についても「調子が悪い」などという言葉で片付けられてしまいます。

 一方「ありのまま」からケアがスタートすると、怒りっぽくなっている状態を「良い・悪い」ではなく、まず「何故怒りっぽくなっているのか?」を考えます。そのとき「自分がゲスト様の立場だったら」と、一度立ち位置を変えて物事を見てみることが重要です。ゲスト様の立場になって置かれている環境や介護者の関わりを見てみると、怒りっぽくなって当然と思えることが見つかったりします。そうすることでゲスト様に寄り添う気持ちや、どうしたら満足してもらえるかという思いに基づいたケアを行うことが可能になります。

 もちろん「ゲスト様の立場になって考える」にはゲスト様の家庭環境や生活歴などを把握しておく必要があります。普段からゲスト様に関心を持ちながら接していないと「ゲスト様の立場になって考える」ことは出来ないのです。

 上の例を見ると「その人らしさ」からスタートするケアと「ありのまま」からスタートするケアのどちらがゲスト様に寄り添ったケアが出来るかは明らかだと思います。そしてゲスト様に寄り添ったケアを続けていった先に、本当の「その人らしさ」があるのだと思います。

ケアの軸と4つのステップ

 
 次回で『ホスピタリティケア』のシリーズは最終回になります。
 よろしくお願いします。

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