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体幹を固めるのは有効か?

固まってしまうのと固められるのは違う

10年ほど前でしょうか?
体幹トレーニングという言葉が流行し、
「プランク」=体幹トレーニング
という認識が広がりました。

当時、私自身もフットサルで“当たり負け”しないように一生懸命トレーニングしたのを覚えています。
この時の私は、そのようなトレーニングをまったくしていなかったので、かなり効果を実感できました。

しかし現在では、プランクで得られる効果も研究が進み疑問視する声(※)や、体幹を固めて使うことが実際の競技パフォーマンスの動作と結びついていないと指摘をする人たちもおり、固めるトレーニングを否定する方もいます。
(※プランクでは腹圧が競技パフォーマンスに必要なほど値が上がっていないなど)


この記事をお読みのあなたは、体幹を固めた方が良いと思いますか?
それとも固めない方が良いと思いますか?


私の考えは「その時の状況によって使い分ける」です。

どのような競技でも、固める方が力が伝達しやすい動作、緩めることで力が伝達しやすい動作があるからです。

自分自身が向上させたい動作が固めることで伝達効率が高まるのであれば、プランクのような固めるトレーニングは非常に有効です。

どのような動作の時に固めるのが有効なのか、あるいは固めずに緩んでいる方が有効なのかは次項で触れるとして、その前にまず前提として知っておいて欲しいことがあります。

それは、固める方が有効な動作だからと言って、固まる方向にばかりトレーニングしてしまって固めるしかできない、緩められない状態はよくないということです。

緩むこともできるし、固められることもできるというキャパシティは必ず必要です。
そういう意味で、固めるトレーニングだけ行うのはよくないとは思います。

「固まってしまう」のと、「固めることができる」は意味が全く違うのでまずはこの部分を整理しましょう。


固めることが有効な時

固まってしまうのではなく、固めらる身体状況がある上で、固めることで有効な動作とはどんなものがあるでしょうか?

例えば、対人コンタクトで力で押し勝とうとする時、床反力をもらって重心移動する時など、ベクトルを直線的に利用するような動作戦略を用いる場合は固めた方が力が伝達されます。

当時の私はこういうことまで考えていませんでしたが、たまたま対人コンタクトで“当たり負け”しないための方法が、固めることが有効だったので効果を実感できたんですね。
(“いなす”という戦略もありますが、ここでは純粋な押し合いの話です)


緩める時が有効な時

反対に体幹が緩んでいる方が良い時はどんな時でしょうか?

伸張反射や身体の捻りを使ってパワーを生み出すような時が有効になります。
例えば、ゴルフや野球のスイングなどは下肢から体幹、腕に力が伝わっていくことでパワーを生み出します。

このような場合、体幹(背骨や肋骨)の可動域がなければ身体が上手くしなりません。
ですが、ただ可動域があれば良いわけではなく、筋収縮するタイミングや動きの連続性が大事になってきます。

ファンクショナルトレーニングという言葉を近年は耳にするようになりましたが、それはこのような運動の繋がりを強化するようなトレーニングを指しています。


柔剛あわせ持て

体幹を固めると重心移動やタメが少なく力を発揮できるので、相手との距離が遠くても一瞬で距離を詰められたり、すぐに次の動作に移れるなどのメリットがあります。

サッカーでは、インサイドキックやスピードに乗ったドリブルからのシュートなどは重心移動の要素が強いと思います。


また、体幹を緩める時は回転運動や助走があまり取れない時などに有効で、すぐには次の動作にうつれないという点もあります。

こちらはサッカーではインステップキックやフリーキック、ワンステップでのキックなどでその要素が強くなると思います。


ただし、固める、緩めるという部分を完全に二極化させることは難しく、どちらの要素がより大きいかという見方になります。

上記の例もインサイドキックとインステップキックを比較しての話になり、回旋でのタメを使うインステップキックでも、軸足を接地するまでは重心移動の要素が中心になります。
さらにインパクトの瞬間にも体幹の割れといわれる左右の半身をセンター(中心軸)を中心に入れ替えるような動きには体幹の固定力も必要になります。

割合が3:7とか7:3とかパターンはいろいろありますが、同じ競技でも体幹を固めたり、緩めたりと、どちらも必要ですし、どちらも併用していることがほとんどです。

もう少し細かいことを言うと、軸足になる前足は固めるとか、下部体幹は固めるという部分的には固めて、他は緩んでいるなどのパターンもあります。


状況に応じて選択できる身体操作が必要なのはもちろんのこと、自分もしくは選手がどちらの要素の動きを得意としているのかというスペックの部分も把握することも重要です。

例を挙げるとサッカーのフリーキックで、日本代表時代の中村俊輔選手は助走の角度がかなり斜めから入っていますが、クリスティアーノ・ロナウド選手の助走はまっすぐに近い角度です。

同じキックの動作でも、中村俊輔選手は回旋要素が強く、ロナウド選手は重心移動の要素を強く使っています。
このように、自分の特性を理解してトレーニングを行わないとパフォーマンスアップに繋がらなかったりもします。


今回の内容をまとめると、

まずは知識として、各動作にどのようにして力を伝達するのかを知っておくことが大切です。

その上で自分、もしくは指導する選手の特性を理解し、どちらの要素をより強化して目的の動作のパフォーマンスを上げていくのかを選択します。

体幹の柔性、体幹の剛性、極端にどちらかに偏りすぎてもいけませんが、どちらもあわせ持って、より高いパフォーマンスに繋げていきましょう。


およみいただきありがとうございました。


謙虚・感謝・敬意
知行合一・凡事徹底
岩瀬 勝覚


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