あなたを提案型人材に変革するイボルブ提案術 #1
プロローグ ストーリー
*喫茶店にて、今、私は藁にもすがる思いで掛け合っています。
●ナナセ:先生!はじめまして、ナナセと申します。
初対面でいきなりですけど、相談があります!
勤務先の和菓子屋が倒産しそうなんです。
先生は中小企業診断士なんですよね。
なにか、経営を立て直すような起死回生の策を教えてもらえませんか。
*私はナナセ。100年続く老舗和菓子屋B社の総務で働く27歳のOLです。B社では数少ない若手社員です。
今日は、B社営業のガクさんに頼んで、中小企業診断士のサカイヤ先生にお話を聞いてもらう場を作ってもらいました。
なんでも中小企業診断士というのは経営コンサルタントの国家資格を持つ人のことらしく、B社の危機的状況を打開するような秘策を教えてくれるのでは、そんな期待を持って臨みました。
先生は40代かな?温和そうな印象だけど、いろいろな企業の改善に実績があるって聞いたけど。
あ、私がいきなり「教えて!」って言ったから、面食らってる感じかも。
◆先生:ナナセさん、はじめまして。中小企業診断士のサカイヤです。
なにやらお困りのようですね。
ガクさんから、お聞きしています。
お勤め先の経営が厳しくて、立て直したいってことですね。
▶ガク:サカイヤ先生、そうなんですよ。
ナナセは僕の2年後輩で、年齢層高いB社では20代は僕とナナセの二人だけなんです。
*この男性が営業のガクさん。優しいけど、ちょっと頼りない私の先輩で、B社を憂いる一人です。社内ではどちらかというとイジられキャラで、営業先でも可愛がられているみたいです。
◆先生:ガクさん、先生はやめてください。
空手サークルではガクさんが僕の大先輩なんですから。
いやー、空手を始めてみたものの、未だに白帯なんですよ。
なかなか昇級できなくって。
▶ガク:いえいえ、ここではぜひ先生と呼ばせてください。
僕もナナセも現状どうしていいか分からないんです。
経営コンサルタントの知り合いがいるって言ったら、ナナセがどうしても会わせてくれって無理をお願いしているんですから。
●ナナセ:先生はB社のことご存知ですか?
◆先生:もちろん、あそこの羊羹は美味しいですよね。
私もファンで、定期的に食べたくなります。
でも、直営店か百貨店にしかおいてないんですよね。
・・・でも、最近は百貨店でも見ないなぁ。
●ナナセ:先生も羊羹、お好きなんですね!
私も好きなんです。美味しいですよね。
私は小さい頃からおばあちゃんと一緒に、よく買いに行っていました。
おばあちゃんとの思い出の味なんです。
だから、B社に新卒で入社できて嬉しかったんです。
でも、うちが潰れたら、おばあちゃんも悲しむと思います。
◆先生:ナナセさんはB社の思い出の味を守りたいってことですね。
●ナナセ:いえ、私達だけじゃないんです。私達のようなうちのファンは多いと思うんです。
私は事務職だから直接和菓子を作るわけではないんですが、店頭に立つこともあるので常連のお客様たちが楽しみに買いに来られているのをよく知っています。
あの美味しい味が食べられなくなると思うと…。
だから、なんとかしたいんです!
◆先生:ナナセさんの熱意はわかりました。
でも、そんな老舗がなぜ倒産の危機に陥ったんですか?
▶ガク:まあ、大きくは常連さんが減っているのとコロナの直撃、あと、大きな声では言えませんが、社長の息子さんとのケンカですかね。
常連さんもお年を召されて、来店されなくなりましたね。常連さんはおやつとして買いに来る方が多いんですけど、おやつ需要は減っていますね。加えてコロナでお出かけが減ったのか、贈答用の売上も下がっている。
ナナセ目当ての男性客は増えてる気がします。看板娘ですからね。
●ナナセ:ガクさん!
◆先生:うーん、新しい顧客層の開拓ができていないんですかね。
どの業種でもいえますが、新規のお客様を常に開拓していかないと、先細りしていきますもんね。
▶ガク:そうです。うちは社員も高齢ですが、お客様も高齢です。
ただ、今の若い人は和菓子をあんまり食べないみたいで、苦戦しています。
あと、百貨店で販売しているんですが、コロナで百貨店自体のお客様も減っているようで、こちらの売上も落ちています。
僕は百貨店のルート営業が仕事です。まだ取り扱ってもらっているんですけど、販売数は低下しています。
◆先生:そうですね。流通全体で見ても、百貨店は苦戦していますもんね。
▶ガク:そして、社長と息子さんのケンカですね。
息子さんも専務として入社されたんですけど、販売方針が合わなくって結局、出ていかれたんです。
息子さんも現状を憂いて、生産数を増やしてスーパーなどでの販売を進めたみたいなんですけど、なにせうちの社長は職人さんだから、
「大量生産なんて断じて許さん!うちの伝統を汚す気か!」って激怒しちゃって。
●ナナセ:それで専務は出ていかれたんです。
私たち、専務に採用されたから、残念です。
社長もこだわり強いから、相容れなかったんでしょうね。
◆先生:社長も後継者に理解してほしかったんでしょうね。
となると、現状では後継者は不在ってことですね。
ちなみに社長と専務はおいくつですか?
▶ガク:社長は3代目で65歳、専務は30代後半だったと思います。
◆先生:専務も4代目として「何とかしなくては」って思われていたかもしれませんね。
●ナナセ:そうなんです!
でも、老舗という伝統も守らなきゃいけないという社長の想いも分かるんです。
あんなに美味しいのに、あんなにこだわっているのに、なぜ売れないんだろう!
多分、売り方や宣伝方法に問題があるんだと思います。
悔しいんです!
◆先生:ナナセさんの危機感は分かりました。
それで、ナナセさんたちは何か動いたんですか?
●ナナセ:...いえ、まだ何も。
社長にネットで売りましょうって言ったことはありましたけど、即却下されてそれっきりモンモンとしています。
社内の先輩たちにもお話したんですけど、皆さん消極的というか、諦めムードな感じでした。
まあ、60歳越えの方も多いので、今から新しいことをしようとは思われないのかもしれません。
ガクさんだけです、共感してくれたの。
私も気持ちはあってもただの事務員ですから、何をしていいのか分からないんです。
▶ガク:新しいことをしようとしても、伝統を壊さないようにって思うと、なかなか動けないんですよね。
●ナナセ:だから、経営の専門家に起死回生の策を教えてもらいたいと思って。
◆先生:フムフム、なるほど、よく分かりました。
...一つ、解決策があります。
●ナナセ:ホントですか!教えてください!
◆先生:はい。これは簡単なことではありませんよ。
覚悟はできていますか?
●ナナセ:はい!
B社を救うためなら、なんだってやります。
ね、ガクさん。
▶ガク:お、おお。
●ナナセ:教えてください。その秘策を。
◆先生:その解決案は、お二人が問題解決の提案力を身に付けること、そして、社長にケンカを売ることです。
●ナナセ:えっ?ケンカを売る!?
それが起死回生の策になるんですか?
それに私は提案なんて、何をどうしていいか分かりません。
社長とケンカしても、説得できるとも思いません。
できれば先生に「こうすれば上手く行く」というような答えを教えてほしいんです!
◆先生:ハッハッハ。すいません。そういう反応になりますよね。
理由を今から説明しますね。
仮に起死回生の策があっても、皆さんに実行はできますか?
専務も大胆な策を提示されて、却下されてましたよね。
起死回生の策を打って、かえって寿命を縮める企業は後をたちません。
盛大な親子ケンカをした挙げ句、倒産してしまった大手家具屋さんの事例を覚えていますか?
経営の改善は博打みたいな、ド派手なことをするのではありません。
もっと地道なものです。
今B社の問題は複合的なものです。例え私が介入して現状を打破したとしても、世の中は常に動いています。
企業を運営する上で常に問題が発生します。その度に、誰かに助けを求めるんですか?
それに私のコンサルフィーは高いですよ~。
それよりも、誰よりもB社を憂うお二人が、B社の問題を解決する力を身に付けた方が近道だとは思いませんか?
●ナナセ:…たしかに先生の言う通りです。
でも私たち、そんな知識も技術もありません。
◆先生:ご安心ください。
現在知識も技術もなくても、問題解決ができる提案術を伝授します。
その名は「イボルブ提案術」です。
魚をあげるのではなく、魚の取り方を教えましょう。
▶ガク:そのイボルブ提案術を先生が教えてくれるんですか?
そんな、お忙しいのに。
◆先生:ただし、条件があります。
●ナナセ:その条件とは...?
◆先生:ガクさんが空手のコーチをしてくれることです。
今度の昇級試験、是非とも合格して、万年白帯の汚名を返上したいんです。
●ナナセ:そんなのお安いご用です。
ね、ガクさん。
▶ガク:え~、他人事だと思って!
でも、自分のスキルアップにもなって、その上で会社も救えるなら安いもんか。
●▶ナナセ・ガク:先生!よろしくお願いします!!
●ナナセ:ところで、社長にケンカを売るって意味はどういうことですか?
◆先生:ケンカを売る?
それは提案を上手く行かせる秘訣です。
イボルブ提案術の根幹です。
その理由は後のお楽しみということで。
*ひょんなことから、サカイヤ先生の研修を受けることになりました。
たしかに先生の言う通り、自分で改善案を作って、提案して、実行できたら、いろいろなことがデキるかもしれない。
B社の味を守るため、不安ではありますが、がんばります。
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