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じぶんなりのグレーを

これは、読書感想文。
ある本を読んで、ある場所に行って、私なりに考えたことの記録。

少し前に美ら海水族館に行った。
前は行けなくて、「今回こそは」と楽しみにしていた。
どれくらい楽しみだったかというと
美ら海水族館についての本を調べ、図書館で取り寄せ依頼をして、事前に読み切ってしまうほどだ。
ちなみに、この本である。

この本は、元館長さんが書いたものだ。
ジンベイザメの捕獲、飼育過程や
その他にもさまざまな挑戦と苦難の道のりが記してあった。
私にとっては初めて知ることばかりで、興味深く読んでいた。

と、
水族館の運営についても触れてあった。
著者がこのようなことを述べていた。

水族館も動物園も"悪行"

『沖縄美ら海水族館が日本一になった理由』より引用

・野生の海洋生物を捕獲、飼育し繁殖を試みる。その過程で亡くなってしまった個体もいたこと
・それに対し、人間のエゴだという反対の声も実際にあること
・水族館は悪行。だからこそ、生き物の健康管理に責任を持つべきこと
といった旨が書いてあった。

これまで水族館運営側の立場で考えたことがなかった私は、突然の命に対する倫理観の問いを前に、うろたえてしまった。

正直にいうと、私はこういう議題にめっぽう弱い。

大自然のなか自由に生きてきたのに
捕まえられ、せまい水槽に入れられる。
二度と故郷へ帰ることはないだろう。

水族館運営は、人間の都合だ。
人間が海洋生物を見たいがために、
研究するために存在している。

水族館だけでなく、競走馬や闘牛も同じだろう。
一度考えはじめると、
居た堪れないという純粋な憐れみと
可哀想に、と思う優しさに似た偽善と
どうしようもないといった諦めが入り混じる。

こういう倫理の問題は、できれば触れずに、考えないまま生きていきたいと逃げの姿勢になってしまう。

が、著者のことばから

水族館で暮らす生き物は幸せなんかな?
生き物にとっての幸せを考えたとて、それも私の主観でしかないか
水族館、行っていいんかな?
今さら大海原に放り出すことこそ残酷やろ
生態系を壊さない、養殖のためにも研究は必要
研究の結果、水族館での繁殖だって成功してる

なんて、いろ~~~んなことを考えた。

水族館が楽しみで仕方なくて読み始めたのに、いつのまにか興奮は冷め切り、なんとも言えない気持ちになっていた。

当日。
すこしだけ複雑な気持ちを抱え向かったが、結局私は自分でもびっくりするくらい楽しんだ。

オキちゃん劇場(イルカショー)に拍手を送り
生まれたてのウミガメの赤ちゃんに「きゃー!かわいーー!」と奇声を浴びせ
ジンベエザメの優雅さや壮大さに、それはもう長いこと見惚れていた。

前日までの心のモヤをかっさらうほどの、大迫力だった。

さんざん楽しんで、お土産なんかも買っちゃって、帰りのバス。

本で読んだことを思い出し
「楽しんでよかったんかな」と考えだす自分に
「都合よすぎるな」と冷めた気持ちで思ったり
「でもほんまに楽しかったし!」と開き直ったり。

人は、こんな錯綜した感情をどう対処しているんだろう。
どう、自分を納得させているんだろう。
いまだに処理の仕方が分からない。

バスに揺られながら
だんだん疲れて眠くなってきて
半ば、やけになって
(もういい。これは白黒つけられへん。)
との考えに至り、そのままストンと眠りに落ちた。


後日、気付いたことがある。

白か黒かを決めるのは、簡単なのだ。
2つに1つでいいのだから。
複雑な問題ほど、どちらを選んでもそれっぽい理由はある。

どちらでもない、白寄りあるいは黒寄りの、自分のグレーを持つこと。
それが、考えるということなんだ。
自分で考えることそれ自体が、もっとも大切なんだ。

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