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死体と操縦

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同僚が解体されていた。
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#SF

死体と操縦(連載版)

死体と操縦(連載版)

1.逃走
 同僚が解体されていた。

 流れていく部品を認識した瞬間、全身を過電流が走った。それでも《指先》は再利用可能な素材を自動的に選っていく。洗浄された神経網はおにぎりの管布みたいだ。私たちは管布おにぎりの集合体。さしずめ金属繊維は合飯で、皮殻はのりかな。そんなことを考えながら、跳ね上がった負荷が落ち着くのを待つ。
 全身に疎らについた感覚機を剥がしていく。脊髄は一世代前。視神経は中の下。免

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死体と操縦 2

死体と操縦 2

2.依頼/変身
「ここだけの話だけど」と彼は切り出した。「指、拡張したんだ」
 その言葉は種となって私の土に埋めこまれた。
「拡張?」
 彼が頷き、蒸留油を舐める。透明な油飲みのなかで冷却岩がからんと音を立てた。
 区画の外れにある安い油屋の店内。煮え油と端子の焼ける匂い、客たちのがちゃがちゃ喋る声が充満し、時折笑い声が大音量で発せられる。「電気泥棒ぅ?」と一際大きな声が響いて思わず視線をやると、

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