見出し画像

古畑任三郎の凄さを、令和になってやっと理解した。



私はドラマがあまり好きでは無い。
高校生位から、毎週決まった時間にテレビの前にいるのが苦痛になってきたからだ。
最終回までちゃんと見る事がほぼできない。


けれど、無類のドラマ好きな姉と流行り好きな母のお陰で、リビングのテレビで勝手に流されるドラマを見ながら自然と成長した。
東京ラブストーリー、人間失格、ロングバケーション、最近なら同期のサクラ、サイレント…
話題になるドラマは、一通り内容や演者を把握していると思う。



どちらかというと、大笑いできて気軽に見られて読み切り漫画の様に満足させてもらえる、バラエティの方が好きだった(めちゃイケ大好き!)


というわけで、繰り返し見たい!と思うのは断然バラエティ。
天才たけしの元気が出るテレビ、生ダラ、なんかの動画をYoutubeで見つけると、物心ついていない未就学児の頃に見た、うっすらとモヤのかかった記憶が掘り起こされる懐かしい感じが、宝物を発見した様で動画を夢中になって見てしまう。



そんな私なのですが。
今ハマっているドラマがあります。


ご存知、古畑任三郎です。


…ドラマ好きな皆さんなら、
当たり前に面白いだろ、
とツッコミたくなると思うんですけど!ど!


リアルタイム放送されてる時、ちゃんと見た事ありませんでした。子供だったし。
芸人が物真似してるのなら記憶にあったんだけど、何でそんなに絶賛されてるのかわからなかった。


今、三谷幸喜脚本の新作映画公開のタイミングで再放送されていて、何気なく見たら…何だこれ⁉︎となった訳です。
子供の頃には気づかなかった事にたくさん気づいた。

⭐︎田村正和の演技が一級品すぎる


あの長台詞を揚々をつけながらも、見ている人に飽きさせず伝え、でもでしゃばり過ぎずゲストを引き立たせながら、真正面から演技をしている。

あっぱれ。
あっぱれ過ぎる。

古くは「NY恋物語」で母が夢中になり、話題に出てくるのでその存在は知っていた。
私は「パパはニュースキャスター」「パパは年中苦労する」
なんかのホームドラマを幼稚園頃に再放送で見ていたので、
テレビの中の超スターと言うイメージ。
NGを出さないプロフェッショナルな仕事ぶりで有名。
気難しそうな、洒落たオジサンだなーと思っていたのだけれど。
大人になって気づいた。


あんな演技できる人、田村正和以外、いない。


人への気遣いや芸の細やかさ。
唯一無二。
繊細さを残しつつ、お茶目で人が好きな古畑像を違和感なく表現している。

今泉を救った「喋りすぎた男」では人情味あふれる古畑の一面を垣間見れる。
ラストの法廷で畳みかけるシーンは圧巻で、物静かに見える古畑の感情が揺さぶられていて、こちらまで今泉を助けたい気持ちに感情移入できる。
(もう!今泉!しっかりして!て気持ち)

私の好きなめちゃイケを作った総監督、片岡飛鳥が
「テレビ画面からはその人の人間性が匂い立つ」なんて事を言っていたけれど、まさにそう。

それまでの積み上げた華麗な演技経験と、天性のセンスの良さが融合され、集大成となったキャラクターになっている。
助手の今泉に嫌味を言っても、ちょっとふざけた事をしても、崩れない品の良さ。


三谷さんは田村さんの役作りには関与していないらしい。

『古畑は事件が起こったら、そこに現れて、解決したら去っていくだけなんで。どこに住んでるなんて、僕は考える必要がないんだよ』

田村さんが三谷さんに残した名言。
身体の中に上手く染み込ませて、演技に説得力があるし、古畑に乗っ取られない様距離を置きつつも、役を尊重しているのがわかる。

⭐︎共演者が豪華


毎回登場するゲストは勿論、名の知れた大御所ばかりだけれど、脇役など1時間に数回しか映らない役でも「あ!あの俳優さん!」となる事が多い。
他のドラマで主役やってた人が、ポッと脇役で出てきたりする。
最近のドラマより層が厚いと言いますか。



そして俳優さんそれぞれの個性が強い!
みんな自分で考え、古畑の世界観を壊さないよう役作りに余念がない感じ。
みんな愛すべきキャラクターに見えるんだよな…。
犯人すら愛おしく感じる。
これは三谷脚本ならでは。
子供の頃、今泉は頼りないなぁと思って見てたけど、
今見ると黙ってる所なんて色気あってカッコいい(笑)
男前なんですよ…!
でも今泉に徹してる感じがね。
素晴らしい!

⭐︎脚本の素晴らしさと、丁寧な作り


最初から犯人が解っているのに面白い。
その訳はよく練られた伏線にあると思う。
最初からゲストを狙って見ていても、犯人と断定できる鍵を解くのは難しい。
そこが見ている人を更に引き込む。

古畑もただ難しい顔をしているだけじゃなく、犯人との会話を楽しんで物語が進んでいく。
毎回違う場所で起こる事件が不自然に見えない様、セットやロケの場所も完璧だし、画面の細部まで行き届いている。劇中にマッチするメインテーマ曲など、作り手側の熱意が伝わってくる。
見れば見るほど小さな仕掛けに気づくはず。


『刑事コロンボ』と似ていると言われているが、コロンボは合成など不自然に思われる映像もあった(当時の最先端の映像技術だったのかも。コロンボも昔日曜の昼間に放送していた記憶が…。)
そう言う意味では古畑の方が世界観に違和感を感じづらい、丁寧な作りになっている様に思う。




私の中で、大絶賛、古畑任三郎。

現代ではこんな手の込んだドラマ、作れるだろうか??



実は全シリーズまだ見終わっていないけれど、一気に見るよりは、美味しいお菓子や、お気に入りのお酒(飲酒できない体質だけど)をゆっくり味わう様に、ソファに深く腰掛けて、集中できる時間に1人で見たい。


そんな作品である。


そして大物俳優と言う人は、脚本上で字だけで作られた人物、役柄を立体化し、生きてるスターに押し上げられる人なのだな、とも感じた。



いいなと思ったら応援しよう!