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【書評】バーチャル美少女ねむ「メタバース進化論」を読んで

はじめの戯言

自己表現の重要性が浮き彫りになってきている。メタバースだとかVRだとかは手段に過ぎない。

はじめに

2000円足らずでメタバースについて原住民視点で知ることができる!!!

「メタバース」を初めて聞いてからどれくらい時間がたったでしょう。それから長いこと全然気にしていませんでした。よく本屋で「メタバース進化論」は目にしていましたが、手に取るに至るまでにかなりの時間が経ったと思います。もっと早く読んでおけばよかった、そう思うばかりですが・・・

書評というかただの感想

本書を手に取った経緯

なぜこの本を手に取るに至ったか、それはできる限り色々な体験をしたいと思うようになったのが何より大きいかと思います。本書にも「スピアマンの順位相関係数」で登場したスピアマンさん。彼はg因子の発見でも知られています。このg因子は「異なる認知テストの結果が単一の因子に帰せられること」(参考*1)を示す因子です。これから転じて、さまざまなことを体験すれば、転用性が高い能力が身につくのではないか、そう考えています。この「さまざまなこと」の一つとしてメタバースに関する本書を選んだ次第です。

データをもとに議論を展開

驚いたのがメタバース世界で「国勢調査」をしてそれらのデータをもとに議論を展開していた点です。メタバースってこんな世界ですよ〜、という感じの本かと思っていましたが(実際そういう側面もありそれがかなり読者視点では重要ですが)データをもとに議論を展開しています。

気になる技術について解説

メタバースのようなVR空間を実現するためにはさまざまな技術が必要不可欠です。例えば、通信や映像の技術、身体情報のトラッキングなどです。これらのリアルタイム処理が必要なので非常に高度な技術がVR空間実現のために利用されています。これら技術について広く解説してくれているので後学に非常に役に立ちます。

ソーシャルVR用語がいくつかピックアップされている

例えば「お砂糖」と「お塩」。恋愛パートナーのことや恋人関係を解消することをソーシャルVRではお砂糖とお塩と呼ぶようです。「メタバース進化論」は「メタバース入門」としても有用に思えます。

なんてかっこいい「ファントムセンス」

名前がかっこいいファントムセンス。「「視覚」「聴覚」しか再現されない現在一般的なVR体験中に、本来感じるはずのないそれ以外のさまざまな感覚を擬似的に感じる現象」(参考*1本書より引用)のことを指すようです。一番顕著なのは落下みたい。目を瞑ってブランコに乗るとゾワゾワしますが、そんな感じなんでしょうか。

僕が思うVRの利点

性別や容姿、アイデンティティについて
僕は、性別とか容姿とか、アイデンティティのためにVRが”大きく”貢献するとは思えません(貢献しないと言っているわけではないし、実際に少なからず貢献すると思います)。「アイデンティティのため」をいくつか列挙すると、1)異性の姿で在れる、2)より美しい容姿で在れる、等ですが、これらは現状肉体的にも実現可能です。ただ代償は少なくないだろうし、手軽さの面でもVRがかなり有効であると思います。ただ、当然ではありますが、現状は物理現実(*1で利用されている語)がベースであるため、VR住民には有効であっても、物理現実の住民特定個人には必ずしも有効でない点指摘できます。ただ、この考えはVR空間が物理現実の真に部分的な空間だと認識しているから生まれるものだと思います。VR空間と物理現実の優劣意識が取り除かれたならば(例えばVRが十分に普及し、ある時刻にそれぞれの空間に存在する人口に大きな差がないのであれば)払拭される点だと思います。

移動コストの削減
移動は時間とエネルギーの浪費である側面を抱えています。移動での楽しみもあるじゃないか、という意見は当然あると思いますが、それならば常日頃の移動として、ではなく、それとは切り離して同様の効用を得られる時間を確保したら良いと思うしだいです。

VR空間で認められるならば物理現実でも認められる
分人主義の話が本書で登場しましたが、現実の自分もメタバースの自分も、どちらも自分的側面に他ならないわけです。これはVRないしメタバースの世界での自分が認められるのであれば、現実世界での自分も認められるであろうことを示唆していると思います。物理現実での自信をつけるために、逆にVR空間での自信をつけるために双方が上手く利用できるのではないかと考えます。

最後に

冒頭付近でも書きましたが、たった2000円足らずで何時間もの間特殊な体験(物理現実から見て)を部分的ではありますが買えるわけです。これが書籍最大の醍醐味だと考えています。VRゴーグルやゲーミングPCを用意して実際に体験してみるのが一番だと思いますが、まずは本書を「メタバース入門書」や「メタバース歴史書」として一読するといいかと思います。VRゴーグルとゲーミングPCが欲しくなりました。

参考

*1 バーチャル美少女ねむ著「メタバース進化論」
*2 Wikipedia「チャールズ・スピアマン」


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