「面白くなかった」日記.2:『グラスリップ』
機会があれば見たいとずっと思っていた。どうにも暇なのでふと思い出してプライムビデオで検索してみたら、なんと全話無料で見れるようになっている。テンションの高い状態のまま、一気に見た。まことに残念なことだが、面白くなかった。
『グラスリップ』はP.A.WORKSのテレビアニメ。2014年7月〜9月に放送されていた作品だ。アニメ内の季節はちょうど現実の放送時期と同じ夏で、またこの頃の僕はアニメを見ることだけが生きがいのオタクだったので、人生の季節感としてもピッタリ。そんな絶好のコンディションに置かれたにもかかわらず、なぜか視聴を途中でやめていて、だからこそ今回見ることになったわけだが、そもそもなぜ途中で見るのを止めたのだろうか。……そもそもこの作品は絶好調のオタクだった昔の僕がつまらなくて投げ出した作品である可能性がある。
さっさと本題を片付けよう。この作品が面白くなかった理由は大きく二つある。
1、キャラクターの関係性の進展が地味すぎる。
『グラスリップ』は田舎町の仲良し高校生5人(プラス1人)の青春譚であり、作中では彼らの恋愛模様が描かれている。初めは険悪でこそなかったとはいえ、全く心が通っていなかったのだから、地味でも進展してるならいいじゃないかとも思える。しかし、やはり地味だ。終わってみても、今まですれ違ってた2人が向き合うようになった、以上の見ていてスッキリする展開はない。恋愛を通したキャラクターの変化も、もう少し劇的なものがあった方がいいと思った。
2、そもそもこれはどんな話なのか。テーマがよく分からない。
これは一応高校生6人がただ恋愛する話、にはなっていない。じゃあどんな話なのかというと、あくまで僕なりの理解に基づく表現になるが、生まれた町を離れず生きてきた女の子が、心の故郷をもたず転校を繰り返してきた少年の孤独を理解する、という話である。
メインの2人(主人公と転校生)には特殊な設定があって、未来の欠片が見える/聞こえる、ということになっている。というか、なっていた、のだが、途中からこの設定はよく分からない方向に走り出し、そして戻ってくることはなかった。最初は、未来が見えたらどうする?みたいなことで2人とも考えたり悩んだりしていたが、結局この未来が見える現象は謎のまま終わっている。この設定をもう少し分かりやすい形で展開するか、あるいはもうそういった幻想的な設定は捨て、リアリズムに徹して、恋愛を描き切った方がよかったのではないかという気もしてくる。
僕はP.A.WORKSのアニメがとても好きで、たとえば『true tears』なんかは素晴らしかった。この『グラスリップ』はじつは監督も同じで、作品にも共通点が多い。富山県の町が舞台になっていること、青春ものであること、他にもたくさん挙げられるだろうが、何より演出の方向性が同じである。謎めいたセリフや、映像技法、比喩的な表現など、経験としてはアニメを見ながら文学作品を鑑賞しているような感じだ。グラスリップでは、たとえば映像が止まって静止画に変わったり(ハーモニックなんとかという技法)、ショパンの曲が頻繁に流れたりという、他のアニメでは珍しい演出があり、それぞれ演出意図があることは分かるのだが、いかんせん同じ技が多用されすぎていたと思う。