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【キャリコン視点】リーダーシップのスタイルを考える①【お勧めドラマ】
ドラマ・映画好きのキャリアコンサルタント xyzです。
以前、日経新聞の土曜版NIKKEIプラス1で【リーダーシップを学べる映画】ランキングを発表していました。
映画やドラマは基本気楽に楽しみたい派のxyzですが、今回の記事では、NIKKEIプラス1のラインナップとはちょっと違う切り口で、リーダーシップが描かれたドラマについて語りたいと思います。
リーダーシップとは
リーダーシップ、と聞くと「先頭に立ってチームをぐいぐいと引っ張っていく」イメージが先行しがちです。
統率力、牽引力も確かにリーダーシップの一面ではありますが、リーダーシップにも様々な形がありますよね。
まず【リーダーシップ】とは何か。
リーダーシップとは集団をまとめ、その目的に向かって導いていく機能のことです。
「まとめる」「導く」がキーワードになりますね。
「まとめ」「導く」ことで人を動かす力が生まれます。
6つのリーダーシップ
リーダーシップには様々な形があると書きましたが、今回は、アメリカの心理科学者であるダニエル・ゴールマンの説、リーダーシップの6タイプを用いながら、ドラマを紹介したいと思います
ちなみに、ゴールマンの大学院時代の恩師は、達成動機(欲求)理論を提唱した、かのマクレランドだそうです。
ビジョン型
ブレない信念でチームを引っ張っていく。組織の変革時や急成長のタイミングに効果を発揮する。
『Dr. House』
(原題: House M.D.)
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ドラマの概要はこちらから。
解析診断医ハウスは、これまで数々の原因不明の病を治療して来た、誰もが認める非常に有能な医師……なのですが傲慢で偏屈で毒舌で、診察嫌いで患者嫌い。(それってどうなの……)「患者は嘘をつく」(原文ではEverybody lies. と言っています)が口癖。
同僚だとしても上司だとしても面倒くさそう、できれば避けたいと思うキャラクターですが、チームメンバーも文句や不平を言いつつも、カリスマ的とも言えるハウスの卓越した能力を認めざるを得ないのと【人命を救う】という不動のミッションを共有していることで、チームとして機能しています。
(とはいえ、シーズンが進むとチームメンバーがハウスの元を離れ、新チームが結成される、ハウスが逮捕される、などの事態も起きます!)
原因不明な難病、症状を前に、チームで活発に対話しながら次第に病理を解明していく様子は謎解きの要素もあり、もともとこの作品は『シャーロック・ホームズ』へのオマージュとして医療探偵(Medical Detective)ドラマに仕上げた、という話にも納得です。
この、チームでの対話から問題解決していく過程を見ていると、独善的で自分勝手に見えるハウスが実は皆の意見を引き出すのが上手で、優秀なファシリテーターだということがわかります。
コーチ型
リーダーの考えやスタイルを押しつけず、メンバーのやり方を尊重する。短期的な成果を求めず、仕事の現状と理想の間に差があるときに効果を発揮する。
『ミセン』
(原題: 미생(未生))
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以前、記事にしたことのあるドラマです。
オ・サンシクは商社の仕事がとにかく好きな猛烈商社マンで、社内の出世抗争には全然興味がありません。
主人公チャン・グレがインターンとして入社してから正式採用後も所属する営業3課の課長(後に次長)です。グレにとって仕事においても人生においてもメンター的存在です。
オ課長は「我が道を行く」タイプの上司で仕事のできるカリスマ的存在(でも出世欲はない)。
一見ビジョン型リーダーシップのように思えますが、後進を育成する、部下を信じて任せるという点でコーチ型に分類しました。
決して自分のやり方を押し付けない、必要に応じて最低限の助言はする、過程を見守る。
言うは易し行うは難し、なリーダーシップだと思います。
関係重視型
メンバーと同じ目線に立ち、信頼にもとづく有効的な関係を築く。メンバーが有能で、高い自律性を備えているときに効果を発揮する。
『ST 警視庁科学特捜班』
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ドラマの概要はこちらから。
簡潔に述べると「特殊能力を持つ5人の科学捜査官とキャリア警部が事件に挑む」なんですが、こんな文字数じゃ収まりきらない6人です!
警視庁キャリア組の百合根は、ある日特別捜査権を与えられた科捜研の優秀な科学者集団、STの指揮官を任せられます。
しかしSTのメンバーは皆、頭脳は優秀でも何かしらの問題を抱えた「はみ出し者」の集まり……対人恐怖症からのひきこもり(なので捜査会議に出ないでリモートワークしてる!法医学担当)、先端恐怖症(だけどずは抜けた嗅覚の持ち主で身体能力高い)、閉所恐怖症(だけどずば抜けた聴覚と絶対音感の持ち主)不眠症(の僧侶で、メンバーの調整役)、そして秩序恐怖症(だけど有能なプロファイラー)。
実は、エリートの百合根自身も、なんでもメモを取らないと気が済まない、潔癖症気味な傾向も。
束縛を嫌い、自分のペース、自分のスタイルで仕事を進めるメンバーたちは指揮官の百合根を敬遠。初めチームをまとめることに苦戦する百合根ですが、メンバーの自律性を尊重し、それぞれの持ち味を活かしながら事件を解決させ、ついにチームメンバーから「キャップ」と呼んでもらえるようになります。百合根がチームのリーダーとして認められた証でした^^
民主型
意思決定のプロセスにメンバー全員を参加させて、合意を得たうえで進める。問題を打開する方法として効果を発揮する。
『錐』
(原題: 송곳(錐))
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ドラマの概要はこちらから。
実際にあった事件を題材にしており、ウェブトゥーンが原作のドラマです。
(上で挙げた『ミセン』もウェブトゥーンから生まれたドラマでした。)
外資系大型スーパーで行われた非正規スタッフ解雇事件が発端となり、労働組合を結成し、会社と戦う社員たちの物語です。
立場が弱い、その上自分達の権利を主張できない非正規社員(その多くが女性)のために労働組合を結成するため奔走する課長イ・スインが主人公です。
スインはよく言えば真面目、悪く言えば四角四面で融通が利かない男。
前職は軍人でしたが、上役の不正を見逃すことができず軍隊を辞め、大手スーパーに正社員として転職しました。
そこでも、上層部から非正規雇用の販売員たちの人員削減をするようにと命じられるのですが、『違法』なのでいくら社命でも従えない、とパートさん達のために労働組合を作り会社と対決していきます。
とはいえ、真面目一辺倒で滅多に笑顔を見せない堅物のスインはパートさん達にもなかなか馴染むことができず。
つまり上層部には反逆者と目をつけられ、部下達には慕われず、となんとも報われない立場のスイン。社外の社労士(的な人)の協力も得て、苦労の末労働組合をやっと発足させてもなかなか組合員が集まらないという……。
そこでスインが白羽の矢を立てたのが、パートのおばさま達に人気のある、スインの部下で主任のチェ・ガンミン。彼を労働組合支所長に据えて、パート社員達のまとめ役、意見の調整役として期待します。組合の団結を図るには、まずパート社員達との心理的距離を縮めることが肝要です。
関係を構築してから、ボトムアップで組織からの意見を広く受け入れていく、そんなスタイルです。
スインの正義感や良心はやがて彼らにも伝わり、組合員がまとまるのかなと思いきや……それでも全員が一致団結するのは中々難しく。
ひと懐っこい人気者のガンミンのおかげで、組合員も集まり、非常に民主的な方法で組合員達の意見を聞いていくスイン。なんとかして組合員をまとめ、彼らの「働く権利」を勝ち得ようと不条理な会社上層部の方針に真っ向から対立していきます。
パートさん達それぞれの個人の事情、家庭の事情、境遇も様々で、皆それぞれに考え悩み迷い抜いた末、活動を続ける人、離脱する人、傷つく人が出てきます。スイン自身も第一子が生まれたばかりで妻子を養う身、会社と戦いながらもこれでよかったのかと思うこともあります。
結末は、正義が必ず勝つとは限らない、というなんともやりきれない気持ちになるもので、綺麗事では済まされない現実の厳しさを突きつけられたようでした。
ペースセッター型
高いスキルを発揮して、メンバーを引っ張っていく。実力が重視される職場環境において有効。
『リーガルV 〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』
(※リーガル・ハイではありません!)
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ドラマの概要はこちらから。
主人公、小鳥遊翔子は大手法律事務所に所属していた、元弁護士。
ある理由で弁護士資格を剥奪された過去があります。
翔子は、大学教授でペーパー弁護士の京極雅彦を説得して「京極法律事務所」を開設させ、自分は「管理人」の座に収まり、クライアントを集め始めます……。
ちょっと頼りない若手弁護士や、プライド高めのヤメ検弁護士、有能な(でもいろいろと曰く付きの)パラリーガル達など、事務所のメンバーをうまく動かして、自分は何もしない(ように見せかけてちゃんと陰ではいい仕事する翔子さん)。
決して模範的な行動でチームを統率する、と言うタイプではないのですが、メンバーへの指示出しが絶妙にうまいんですよね、翔子さん。
「私、弁護士資格ないもん!」と一見無責任に仕事を丸投げしているようですが、実は大局的に物事を見ていて、自分が出しゃばらないけれどしっかりとチームを統率している、陰の実力者です。その采配の巧みさからも有能な弁護士であったことは想像に難くありません。
自分自身は直接動かずに、メンバーをよく観察して適材適所で使い、動かす。翔子さんはまさにペースセッター型リーダーシップの持ち主でしょう!
強制型
強制的に指示・命令を行っていくスタイル。業務効率がよく、短期間で成果をあげられる。
『白い巨塔』
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何回かTVドラマ化されていますが、わたしの一番すきな、田宮二郎ver.のドラマから写真を拝借^^
ドラマの概要はこちらから。
財前五郎は浪速大学第一外科の助教授。驚異的なオペの技術を持ち、天才外科医の名を欲しいままにしていました。財前は、強いリーダーシップを発揮し、医局内の部下からの信頼も厚く、将来第一外科の教授の座を狙う野心家でもあります。
医局とは大学病院の教授が受け持つ講座や診療科に属する医師のグループ、人事組織で、厳格なヒエラルキーが存在します。
医局での教授は絶対的な権力者。病院長といえども、科内の人事に口を出せない、と言われた時代もあるようです。(最近では、2004年の新医師臨床研修制度の開始で、大学医局に属さずに医師として勤務するという働き方も増えてきたそうですが。)
強制型は、医局のような階層型組織にはハマりやすいのかもしれません。
トップダウン方式で指示を行き渡らせる仕組み、実行させる仕組みにはフィットしやすいリーダーシップですが、一方的で閉塞感に支配された組織となりがちで、メンバー達に自主性や積極性が失われ、硬直化した組織になる可能性も高まります。パワハラの温床にもなりがちです。
番外編〜移行型
ビジョン型→民主型へ移行
『恋ノチカラ』
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ドラマの概要はこちらから。
アラサーOL籐子は、大手広告会社勤務でも、さえない庶務課に異動となり仕事にもやる気が出ない日々を送っていました。
社内きっての売れっ子広告デザイナーの貫井が独立する話で会社はザワついていましたが、その貫井からなぜか籐子に「引き抜き」の打診が!
迷った末に籐子は会社を退職して貫井のオフィスに行くと、なんと「人違いだった」と言われてしまい……。と、波乱含みで始まるドラマです。
貫井は、社内の(籐子と同姓の)クリエイターを引き抜いたつもりでいたので、庶務課のOLの籐子は「戦力外」とばかりに初めはあからさまに失望した様子。
籐子は、元々クリエイティブな仕事を希望していて、しかも「憧れの貫井さん」から直々にお声がかかったので嬉しくてたまらなかったのに、貫井に勘違いと言われ冷淡な態度を取られ、貫井への好感度がだだ下がりますw
貫井企画が始動するまで紆余曲折がありましたが、この全く偶然に採用した籐子が、すごく良い働きをするのです!やがて籐子は貫井企画になくてはならない存在にまで成長します。
籐子だけではなく、他のメンバーも次第に本領を発揮していき、貫井企画は全員参加型の最高のチームになります。
初めはカリスマ貫井の才能に憧れ、貫井のビジョンに共鳴していたメンバー達は貫井の「鶴の一声」で動いていたチームでしたが、メンバーの成長とともにリーダーシップのスタイルが変化していきます。
貫井がメンバー全員の意見に耳を傾け、全員で方針を決めるという民主型リーダーシップをとるようになったのです。
メンバーの成長とともに、リーダーである貫井がメンバーの実力を認め、全幅の信頼を置くようになったからでしょう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今回は、ドラマから様々な形のリーダーシップを考えてみました。
映画編は、また別の機会に……!
最後まで読んでくださってありがとうございました^^