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『ニュー・トリックス〜退職デカの事件簿』から【人生100年時代のキャリア】に思いを馳せる

ドラマ、映画好きなキャリアコンサルタント xyzです。

今回ご紹介するドラマは

『ニュー・トリックス〜退職デカの事件簿』


英国BBC制作の刑事ドラマ。
原題は『New Tricks』

ドラマシリーズの概要はこちらから
⬇︎

老犬デカ、大いに吠える!

原題は、からとられた言葉だそうです。

“You can't teach an old dog new tricks

直訳すると「老犬に新しい芸は仕込めない」です。老木は曲がらぬ、とも。

「もう歳だから新しいことは覚えられないよ」という老人たちのボヤき?
それとも「老人に何をさせてもムダ」という周りの諦めの声?

しかし、このドラマのおじさん(というよりはおじいちゃん)3人組は、新しい芸を覚えないどころか「昔取った杵柄」とばかりに、長年の経験と地道な捜査(いわゆる足で稼ぐ)と見た目を裏切る身軽さと大胆さで次々と未解決事件や冤罪案件を解決してしまい、新設窓際部署でも大活躍!
自分の席を温める間もなく外に出る出る!

そういえば、以前記事にした『インターンシップ』という映画も、時代の先端をいく巨大IT企業Googleに40代のIT音痴のアナログおじさん2人組が新風を吹き込むというストーリーでした。

昨今「働かないおじさん」が話題に上ることが多いですが……ばりばり「働くおじさん」達です!

人生経験豊富で仕事やる気あるおじさん最強説‼️

3人のおじさん達の個性や、失敗も含めた豊富な人生経験、誰にも負けない「強み」のコンビネーションが捜査に活かされる様子は楽しく、全く期待されていない4人(3人のおじさん警察官+左遷されたバリキャリ警視サンドラ)が期待以上の働きをして、上層部の鼻をあかす活躍ぶりは見ていて痛快です。

また、4人それぞれの抱える傷や過去がエピソードに織り込まれ、4人の人間味を知るにつれ、ますますドラマにハマってしまいます。

イケメンや美女は出てこないし派手な銃撃戦もアクションシーンもありませんので一見地味に思えますが、とても楽しめる異色刑事ドラマです。

(その証拠にキャストの入れ替わりはありますがシーズン12まで続いたBBCきっての人気ドラマです……と言っても最終シーズンはスタート時のメンバーは誰もいなくなってしまい、このシリーズの持ち味も薄れてしまったのが残念!おすすめはシーズン9までかなと個人的には思います。)

女性警視、左遷される

スコットランドヤード(ロンドン警視庁)にUCOSUnsolved Crime and Old Case Squad 未解決事件捜査部門)という部門が新設され、警視サンドラ・プルマンが指揮をとることに。

サンドラ・プルマン

上昇志向強めです


サンドラは非常に上昇志向が強く、警察官だった亡き父の後を辿るように警察官としてのキャリアを積み出世のために頑張ってきたのですが、ある事件での失敗からUCOSに左遷されてしまいます。その上、不倫の関係にあった上司にも別れを告げられ踏んだり蹴ったりなサンドラ……。

イチからチームを作ることになり(要は上層部からの丸投げです💦)途方に暮れた彼女は、退官した元上司ジャックに声をかけ、チームの人選などについて相談します。

三人寄れば文殊の知恵〜D&I〜

ジャックがUCOSのために集めた人材はなかなか個性的な面々です。ジャックも含めて全員が退官した元刑事です。今で言えば、定年後の再雇用、嘱託的立ち位置でしょうか。世間では第一線から降りた、と見做される面々です。しかし大人しく席に座っているだけではない、まだまだガンガン働きまっせ!という気概十分なおじさま方3人です。

ジャック・ハルフォード


いつもスーツにネクタイの英国紳士


警視総監賞をはじめ数々の表彰を受けたこともある、敏腕エリート刑事の元警視正

サンドラの元上司であり、サンドラの父親のことも知る人物です。ユーモアや茶目っ気もあり、真面目一辺倒ではないのが良いです。

最愛の妻を轢き逃げ事故で亡くし一人暮らしです。普段は3人の中では一番紳士的かつ冷静沈着なジャックですが、シーズンが進んで妻の轢き逃げ犯がジャックの宿敵のギャングだとわかった時は復讐以外何も見えなくなってしまい周りを慌てさせるほどの血の気の多さもありました。


ブライアン・レイン


知識欲と探究心がハンパない



「メモリーレイン」の異名をとる驚異の記憶力の持ち主である元警部補

アナログオンリーなこの世代には珍しく、IT機器に明るいのも強みです。

アルコール中毒症に苦しんだ過去があり禁酒している身。
探究心旺盛で細部へのこだわりが強すぎ、時に空気を読まずに暴走……偏執狂的な捜査に周りはついていけないけれど、その細かな部分への気づきが捜査解決の糸口になることも!

なかなか気難しく制御困難なブライアンを、辛抱強くサポートしてくれるやさしい奥様がいます。

ジェリー・スタンディング

UCOSきってのモテ男



風俗班で活躍した元巡査部長

結婚と離婚を繰り返していて今でも美人を見るとデレデレの現役っぷりですが憎めないタイプ(ちなみに中の人も結婚歴4回だそうです‼︎)。

別れた後も元妻達全員が仲良く、みんなで家族ぐるみで付き合っているという奇跡の男。これぞ真のビッグファミリー。

料理が得意で歌とワインが大好きで賭け事が好き、伊達男を自認していて……と、とにかく明るいジェリー。

人好きのする性格から人の心を開かせる、懐に飛び込むのが上手で、その特技が捜査の突破口になることも。

初めは「年下の」「女」「キャリア組」で、見た目可愛げもない、上司のサンドラに猛反発していたジェリーですが、次第にサンドラに素直に従うようになります。


経歴も個性も何もかも違いすぎる3人+サンドラが、事件を解決するという共通目標に向かって、互いの個性や多様性を認め合いながら能力を発揮していきます。


これぞ、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を実現している組織です!実はUCOS、時代の先端をいっていましたね。


それぞれのキャリアアンカー

この3人の元刑事たち、警察での経験も退官時の階級も退職した理由もキャリアアンカーも何もかも違います。

キャリアアンカーとは、仕事の経験を指す「キャリア」と、船の錨を指す「アンカー」を掛け合わせた造語で、組織心理学者のエドガー・シャイン博士が提唱。キャリアの選択や形成を行う際に、譲れない価値観のことを指します。


キャリアアンカーは8つに分類されます。
ドラマの登場人物たちはどのアンカーを持っているのか考えてみました。

1 管理能力(Managerial Competence)

かつてのジャックサンドラはこのタイプでしょうか。
専門的な職務よりもスケールが大きく、組織を動かすような仕事に興味や価値を見出すタイプです。


2 専門・職能別能力(Technical/Functional Competence)

ここはブライアンでしょう。
特定の分野のエキスパートを目指すタイプで、現場で活躍し続けることを好み、専門性や技術力が高まることに意義と幸せを見いだし、専門家として能力を発揮する高い意欲を持っています。しかし、別の職種や向いていない仕事を任されると、仕事への満足度が下がる傾向も。


3 保障・安定(Security/Stability)

「保障・安定」をキャリアアンカーとする人は、社会的・経済的な安定を求めるタイプです。大企業や公務員といった安定した組織に長期間所属することを望みます。リスクを回避することを優先し、将来が見通せる環境で堅実にキャリアを歩みたいと考えます。

このドラマの登場人物には該当者がいないかもしれません。一番程遠いタイプの4人です^^


4 起業家的創造性(Entrepreneurial Creativity)

新しいものを生み出す起業家や芸術家、発明家タイプです。リスクを恐れずクリエイティブな挑戦を続けます。企業に就職しても将来的に独立や起業を目指すケースが多く見られます。刺激的な仕事が好きなので、困難な課題や変化の激しい状況に立ち向かうことにモチベーションを見いだす傾向があります。



5 自律と独立(Autonomy/Independence)

キャリアアンカーを「自律と独立」に置く人は、自分のスタイルで仕事を進めることを重視するタイプで、組織のルールや規則に縛られることを嫌います。ジェリーブライアンが該当しそうです。自分が納得できる方法でマイペースに仕事に取り組む反面、集団行動やルールを強制されたり、上司から強く叱責されたりすると、やる気が減退し退職の意向が強まることがあるそうです。



6 奉仕・社会貢献(Service/Dedication to a cause)

「奉仕・社会貢献」をキャリアアンカーとする人は、世の中に貢献したいと考えるタイプで、仕事を通じて世の中を良くしていくことを目指します。この部分を見ると4人全員このアンカーは持ち合わせていそうです。警察官という職業を選んでいる時点で人の役に立つこと、社会貢献意識が強いといえます。


7 チャレンジ(Pure Challenge)

困難に挑戦することやそこから受ける刺激に喜びを感じるタイプです。ハードワークにも対応できますが、ルーティンワークは好まず、仕事を覚えると違った業界に飛び込む傾向があります。一貫性なく多様なキャリアを持つことになる人も。困難をものともしないため、異動や配置換えにも前向きで、さまざまなことにチャレンジすることに向いています。


8 ワークライフバランス(Lifestyle)

仕事とプライベートを両立させられることを重視するタイプです。生活スタイルが確立していて、仕事には打ち込みますが、私生活を犠牲にすることは好まないでしょう。予定にない残業や、会社のイベントなどはきっぱり断るタイプです。
実はジャックは、妻の看病のために早期退職をしたので、晩年のジャックのアンカーはここかもしれません。


年下女性上司の年上男性部下操縦術


個性豊かで一筋縄でいかない、かなり年上のおじさん達を3人も部下に持つことになったサンドラ。

規則を守らない、空気を読まない、権力に阿らない、と世話の焼ける「三ナイ」おじさん達を指揮官としてまとめ、ロンドン警視庁の上層部との間で板挟みになりながらもチームを代表して時に上層部に物申し、おじさん達の暴走に頭を抱えながらも、チームを見守り、おじさん達を上手に操縦するサンドラはとても男前です!

警察組織という封建的な男社会で出世街道を(途中までは)驀進していたサンドラですからタフな女性であることは間違いないのですが、わたしが個人的に感心したのは、サンドラの部下への一貫した指揮官らしい態度です。

仕事においては上下関係を明確にさせる、自分がボスであることをきっちりと示し、命令には有無を言わさず従わせる。年上だろうがベテランだろうが元上司だろうが一切関係なく毅然とした態度で示す。同時にチームとしての責任の所在はボスである自分がとる覚悟をみせる。

ヒエラルキーが厳格かつ絶対である警察組織に長年いるおじさんたちですから、指揮官であるサンドラに黙って従わざるを得ません。


わたしが初めて自分より年上の部下を持ったのは30代前半でしたが、振り返ってみるとその頃のわたしはサンドラに比べるとまったく不甲斐ない上司でした。嫌われたくないのと、社歴も年齢も上の先輩に遠慮してしまって、サンドラのように上司の職責を全うできておらず、つくづく未熟だったなぁ……と思います。反省。当時はわたしも若かった……!


未解決事件の再捜査


さて、ドラマに話を戻します。未解決事件が次々とUCOSに持ち込まれます。警察でのキャリアの長いおじさん達ですから、当時第一線の現役刑事として捜査にあたっていた事件と再び遭遇することも少なくありません。

現役時代には解決できず迷宮入りした事件、当時の鑑識技術や捜査方法に限界があり誤った結論を導いてしまったケースなども、再捜査で最新の科学捜査技術(DNA型検査法や三次元顔画像識別システムなど)やプロファイリング等新しい洗練された捜査方法を駆使することで解決できるようになりました。

また、事件当時は真実を供述できなかった当事者や目撃者が年月が経って真実を話す、証言を覆すなど、時代が変化したことで遅ればせながら解決することができた事件もあります。たとえば、LGBTQに関することもそうです。事件当時はタブーでありとても言うことができなかった……でも今の時代だから、時が経ったから(気持ちの整理がついたり、良心の呵責に耐えかねたり等)やっと言うことができたといったことです。

時代が味方することもある一方で、時代が変わって、当時は問題なかった捜査方法も違法捜査になってしまうこともあります。また個人情報保護も現代はかなり厳格化して、捜査の「壁」として立ちはだかることも……その辺はおじさん達は知らんぷりして強行したりするのですが、上司としては気が休まりませんよね💦

でも事件解決に一番大切なことは「ホシを必ず挙げる」というおじさん達の刑事としてのプライドと執念でしょうか。この執念が事件解決への最大のモチベーションとなっていることは間違いなさそうです。

人生100年時代のキャリアプラン

ベテランおじさん3人の退職理由も様々(実質解雇扱いのブライアン……よく再就職できたなぁと思います💦)ですが、新設部署で再び刑事の仕事に大活躍です!

まさに人生100年時代と呼ばれる現代における、新しい働き方ですね。

「人生100年時代」は、長寿化がもたらす働き方や生き方の変化を描いた著書『LIFE SHIFT』の作者であるリンダ・グラットン教授が提唱した言葉で、世界中で大きな話題を集めました。


従来の「学ぶ」「働く」「引退する」という単純なライフステージの進み方ではなく、各ステージを組み替えながら柔軟な生き方を模索する時代になっています。

厚生労働省のHPでも、この「人生100年時代」について労働政策一般のページで述べています。

人生100年時代では、教育、就労のスタイルも変化を余儀なくされます。

例えば教育面では、一人ひとりのライフステージに合わせて新たな知識・スキルを学び直すための「リカレント教育」の確立。

就労面では、働き方改革の推進でしょうか。場所や時間、雇用年齢などこれ迄の「常識」にとらわれず、すべての人が活躍する社会を実現するためのインフラ整備、法整備が進んでいます。長時間労働の是正、高齢者の就労促進、子育てや介護の環境整備など。

人生の伴走者、キャリアコンサルタント

労働政策全般のページには次のような見出しと文が載っていました。

誰もが「出番」と「居場所」のある社会の実現を目指して

誰もが意欲と能力に応じて働くことができる社会を目指します。
厚生労働省HPより抜粋


長い人生、健康に、有意義に、楽しく、ウェルビーイングな人生を過ごしていきたいですね!

すべての人がウェルビーイングな生き方を選べる社会、今こそキャリアコンサルティングが求められる時かもしれません。

長い人生に何度か訪れる転機、環境の変化、心境の変化……。自分ひとりで変化に対応できない時、考えがまとまらなくなってしんどい時、身近な人にはかえって遠慮して話せない時、気軽に安心して自分自身のことや人生について話せる相手。それがキャリアコンサルタントです!

人生100年時代にこそ、長い人生の伴走者としてのキャリアコンサルタントをたくさんの方々に知っていただきたいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました^^