そうだ、映画の話をしよう⑭‐羅小黒戦記
洋画ばかりも飽きるかと思うので、今回はいつもと違うタイプの作品を選んでみた。
数年前に一世を風靡し、今も根強い人気を誇る中国発のアニメ映画である。
タイトル:羅小黒戦記
公開:2019年
主演:山新 (吹替:花澤香菜)
監督/原作:MTJJ
絵柄の可愛さからは想像できないほど、根底のテーマは激重である。
なお、配信はない(現在終了)しているので視聴にはDVDorBlu-rayを買うか借りるしかない。
ここから先はストーリーについてのネタバレも含むので自己責任にてお願いしたい。
本作はもともと短編webアニメとして制作された作品のスピンオフ(前日譚)にあたる。
といっても単体で楽しめるようにしっかりと作られているのでこれだけ見ても十分楽しめる。
序盤も序盤、住む場所を追われた小黒が風息に出会い、居場所を見つけるまでのシーンはじんわりと心の痛むものである。
風息たちと束の間、穏やかな時間を過ごした後は無限との旅が始まる。
この長い長い旅が世界を知らない小黒を大きく成長させる。
幼い子どもと青年という組み合わせが実に最高な作品である。
数百歳の年齢差もあってか序盤は小黒を全く相手にしていない無限だったが、次第にその無邪気、奔放、純粋な面に翻弄され、絆されてく姿は微笑ましい。
小黒はずっとかわいい。
本作の面白いと思ったところは妖精(自然)と人間が対立しているだけではないところである。
風息たちは人間に対し良い感情を持っていない。住処を追われ、風息に拾われた小黒もそうである。
しかし、小黒が旅の道中で出会う妖精たちの多くは人間との共存を受け入れている。人間も妖精も、一枚岩ではない。
旅の中で出会ういろいろな人間、妖精の影響を受けて小黒は風息の受け売りではない、彼独自の人間との向き合い方を見つけていく。
それは無限への態度を通してであったり、ラストシーンであったり、小黒の成長としてみることができる。
戦記というタイトルの通り、激しい戦闘シーンも存在する(動きがとても良い)ものの、どちらが善でどちらが悪かと明確な設定はない。
こういった自然破壊をテーマに据える作品では人間に厳しいのが人外(自然の擬人化)であるが、本作では共存している。
確かに、現実においても人間の行動に関わらず、厳しい面も優しい面も持ち合わせているのが自然だ、と言われれば納得の描写だ。
なお、個人的には虚准が好みなので人間一回滅びればいいと思う。(過激)
本作は現在の視聴難易度がめちゃくちゃ高いので無理にお勧めはしないが機会があればぜひ、吹替・字幕ともに見てもらいたい作品である。