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そうだ、本の話をしよう-シャルロットの憂鬱

私が作家買いしてしまうお一人、近藤史恵先生の作品である。
今後も出てくると思うが、まずは私が読んだ中でも一番読みやすそうだな、と感じた作品を紹介する。

「檜垣澤家の炎上」
著者:近藤史恵
レーベル:光文社文庫
ISBN: 978-4-334-77859-0
刊行:2019年6月

あらすじ
シャルロットは六歳の雌のジャーマンシェパード。警察犬を早くに引退し、二年前、浩輔・真澄夫婦のところへやってきた。ある日、二人が自宅に帰ってみると、リビングが荒らされており、シャルロットがいない! いったい何が起こったのか。(表題作) いたずら好きでちょっと臆病な元警察犬と新米飼い主の周りで起きる様々な“事件”──。心が温かくなる傑作ミステリー。

光文社HPより

さて、本作はシャルロットにまつわる短編集なのでネタバレというほど個別のストーリーを深掘りするつもりはない。
とはいえ、未読の方はお気をつけてお読みいただきたい。




本作の続刊



タイトルから犬が主人公か?犬視点か?と思いきや、ふつうに飼い主視点である。
シャルロットを引き取った夫婦には子どもがいない。

まず思ったのは夫婦像がとても現実的だな、ということ。
妊活をしたものの子どもを授かることはなく、悲観的ではないが少し疲弊したところにやってきたシャルロット。
わが子のようにというか、もう、わが子として可愛がり、家族になり、そしてちょっと不思議な日常に挑んでいく。

犬を飼ったことがない私でもわかるほど、犬の解像度が高い。
それはもちろん、犬を飼う喜びだけではなく大変さも含めてである。
大型犬ならではの運動量の描写など、なるほどと思うところがたくさんだ。

さらには作者の他の作品にも言えるが心理描写が細かく丁寧でリアルである。
読みながら、「あー…確かに!」となる部分がたくさんある。真澄(飼い主夫婦の妻のほう)が落ち込んだり、悩んだりするシーンは未婚でも子どもやペットがいなくてもわかってしまう。

個別の話については割愛する、というかぜひ読んでもらいたいのであえて控えるが、一つ一つは長くないお話である。
通勤通学、忙しい合間に少しずつ読み進めるにも最適なのでぜひ手に取ってほしい。

生き物と暮らす、楽しさも大変さも詰まった心が温まる作品だ。


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