双一朗

双一朗/Soichiro Nagawo┆気まぐれエッセイもどきと一次小説置き場

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  • 卒業制作『Ange-loss』

    大学の卒業制作として執筆した小説『Ange-loss』のまとめです。 '23/03/6追記:本編のネタバレを含むため非公開だった番外①を公開しました。

  • 課題たち

    主に大学の課題で執筆したオリジナル小説をまとめています。 人生の分岐には、常に涙がありました。私が書く小説は、そのほとんどが私の「生きづらい」という慟哭そのものです。その作品のどこが私の「生きづらい」なのか、わかっていただけたらなによりです。 よろしければご覧ください。

最近の記事

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【卒業制作】Ange-loss

【第一章 天蓋】 「あ、《天使さん》だ」  ひとつ階上の廊下にひらめいた金色を見て、口から思わず呟きがこぼれた。春先の陽光に輝く淡い色の髪は柔らかにほぐれて、その奥の真っ白なうなじが見え隠れする──かどうかというところで、僕は無意識に視線を逸らしていた。  思えば、大学進学を機にこのメゾン・ド・シエルに越してきて最近一年が経つ。自転車を使えば大学には五分という立地が取り柄の、ちょっとばかり年季を感じるマンション。親からはもっと新築のところでもいいと言われたけれど、自炊が

    • 【日記】差別(けじめ)

       久しぶりにひとを嫌いになったかもしれない、個人的な内情で。  正直この1ヶ月半くらいずっと驚いていて、認めたくないが恐らく衝撃と若干のダメージがあるように思う。私は人間があまり好きではない一方で心の底から愛している。このあたりの話は卒業制作と副論文で十二分に書き散らしたのでもういいだろう。読んでくれている層は私のコレを恐らく聞き飽きている。その私が、である。特定のひとを嫌いだと言えるだけのある種の心の余裕というか、俗っぽさというか、矛盾に思えるこれが私の中にまだあったのか

      • 【日記】聖書の形の卒業文集を作りました

         楽しくも熾烈を極めた限界卒制執筆生活の中で、私の希望はこれに尽きた。  つまり、この大学4年間で私が執筆したオリジナル小説ばかりを集めた俺得本を手にしたい、という夢である。果たして無事卒制が完成してまもなく、私はすぐにそれを実現させるため行動を開始した。  今回お世話になったのは製本直送.com【製本直送.com | 1冊から注文OK。安さと高品質のオンデマンド印刷】様。noteでこういった趣味製本関係の記事を漁った際、先人の幾人かが利用されていたのと、その破格の金額に

        • 【日記】フライング郷愁

           約一年前のことである。大学1~3年の間、学校に近い場所に住んでいた私は、最高学年で講義も週一になるため一人暮らしの必要がなくなり、実家に帰ってきたばかりという時分だった。  遣いを頼まれた私は、母のチャリを漕いでケーキ屋に向かっていた。中学でいうと隣の学区なのでそこそこの距離があるが、幼少期から散歩や習い事なんかで慣れ親しんだあたりである。そうして自宅から数分、某公園の前を通りかかったそのとき、 「ああ、すいません」 と声をかけられ、私はハイと返事をしてチャリに跨ったまま

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        【卒業制作】Ange-loss

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        • 卒業制作『Ange-loss』
          3本
        • 課題たち
          6本

        記事

          『Ange-loss』番外①天際

          「ウレエル」  限りないと思っていたこの世界の際(きわ)に立って、目には見えない下界を眺めていた私の背後から、聞き馴染んだ声が叫んだ。背に翼がないぶん、後ろからの音が拾いやすくなった気がするなあと感じる。たぶんこの感覚も今のうちだけで、すぐに慣れてしまうのだろう。  振り向くと、私より濃い空色の瞳をいっぱいに見開いたカツエルが息を切らしていた。息を吸い込むのがついでになっている程度には言葉を発しようとしているのはわかるが、感情が迷子になってしまっているらしく、ついぞなにも出て

          『Ange-loss』番外①天際

          【実録】アンテ謎バグの思い出※ネタバレ含

           もともと趣味用の鍵垢に呟いた内容をコピペしたものを別名義でnoteに掲載し、今回それを消して引っ張ってきたのでものなのでまとまりのない文章だが、こういう書き物はこの垢に載せるべきだよなあと思ったので転載する。  UNDERTALEというゲームの特性上、未プレイ勢にはいろんな意味でやさしくない内容になっている。その点ご留意のうえでお読みいただきたい。  それでは以下、鍵垢に呟いた内容のコピペ(一部加筆修正済)↓ ────────────────────────────────

          【実録】アンテ謎バグの思い出※ネタバレ含

          【日記】手向けの白菊

           昨日は、県警察本部で毎年行われているという慰霊祭に初めて参列してきた。平日の昼間にあるものだから、当然といえば当然だが、学生の間に行ったことはなかった。大学生なら時間割によっては行けるのだが、なにしろ1年から3年までの今の時期は確実に大阪にいたので、実家にいてかつ平日昼間で暇をしているのは4年の今で最後なのだった。そういうわけで、いい機会だから1回くらい行くといいと言って、母と一緒に参列したのだ。  母の父親──私の母方の祖父は警察官であり、37年前に亡くなった。つまり、

          【日記】手向けの白菊

          【日記】変わった私より、変わらなかった君へ

           先日で刀剣乱舞をプレイし始めて6年が経ったらしい──という書き方では無粋か。先日は私が審神者に就任して6周年の記念日であった。  最近、サークルの後輩の子が審神者になったと聞き、単純なことだが私も懐かしく思ってふと自分の本丸に帰りたくなった。すると、なにやら就任記念日までをカウントダウンする日めくりカレンダーがぶら下がっている。ああ、そういえばそんな時期だったのだなとそれで気がついた。  6年前、私は16歳の小娘であった。サイズ的には今も小娘であることは間違いないが、未熟

          【日記】変わった私より、変わらなかった君へ

          『Ange-loss』番外②天淵

           浴衣の柄に合わせて淡いラベンダーのカラコンを入れて、いつものメイクにプラスでバイオレットのマスカラやアイライナーをアクセントに使う。普段使いには派手だけど、今日くらいはいいよね。どうせ、あいつは褒めてくれないんだろうけど……と落とした肩をすくめるようにしてむりやり持ち上げた。なんてね。そんなのいつものことだし、気にしない。仕上げにニコッと笑ってみせた鏡の中のわたしがやっぱりちょっと寂しそうだったのを見ないふりして、洗面所を後にする。  部屋に戻ると、出発時刻にセットしておい

          『Ange-loss』番外②天淵

          【小説】花の色も

           風の音かと思ったけれど、違った。視線を向けた窓ガラスには大粒の水滴が散っていて、今日に限って天気予報を確認せず仕事に来てしまった自分を恨めしく思う。出勤したときには晴れ渡っていたのが噓かと思えるほどの大雨だ。私の休憩時間が来る前に、きっと傘は売り切れてしまうだろう。  私の勤めている店舗からは、近くの中学校や高校に通う子どもたちが利用する通学路がよく見える。川沿いの見事な桜並木が有名な場所で、少し前の時期には観光客も多く訪れていた。もう葉桜になりつつある中で健気に残ってい

          【小説】花の色も

          【小説】ぶんずい奇譚

           ──忘憂十二年、初秋。大規模な争いは蝶の羽ばたきほどの予兆すら見せず、世が最も平和であったいち時代といえよう。その頃の話である。都にほど近く、かつて宿場町として栄えた分瑞というこの土地は、古くから酒造で有名なまちである。「分瑞じゃ三歩もゆけば酒屋に当たる」とはよく言ったもので、まちの経済の中心は商店の大半を占める酒屋たちである。それだけ同業が多ければ共倒れになってしまうのじゃあないかと思われるだろうか、どっこい分瑞の人々は大酒飲みばかりなのだ。自分たちで造って自分たちで消費

          【小説】ぶんずい奇譚

          【小説】告白

           女の中で、この一連の記憶を思い出と呼ぶなら──そのはじまりは、そう、ひどい嵐の日であった。雨と風は見ごろの花々を無惨に散らし、外は靄で白くけぶり、窓は豊かな山の景観を女に見せて楽しませるという役割をすっかり失っていた。日々の唯一の楽しみを取り上げられて退屈しきっていた女であったが、あるときふと、はっとしたように顔を上げた。女がひとりで暮らすにはいささか広すぎる館を急いて移動し、重い樫の扉を開ける。  そこには非日常が倒れていた。その非日常は、ほんの少年のすがたをしていて、

          【小説】告白

          【小説】晩酌

          「ただい……」  その瞬間視界を覆った一面の湯気に、「ま」は奪われてしまった。ゆらゆら揺れる白い芳香の奥、満面の笑みが碧生に向く。 「あ! おかえり碧生(あおい)!」 「……ただいま、環(めぐる)」  なんだか、じん、としてしまったのを悟られたくなくて、碧生は小さな声で呟く。それを知ってか知らずか、環はその顔をさらに綻ばせた。  まだもうちょっと準備があるからその間に着替えてて、と部屋に環によって部屋に押し込まれた碧生はモソモソ着替え、ついでに部屋の中もあらかた片づ

          【小説】晩酌

          【小説】流涕

          「ごめ……わた、し……無理、か、も」   限界を感じて蹲るわたし。チームメイトの叫ぶ声が遠く聞こえてきたが、とてもそれに応える力は残っていなかった。     中学一年生の春、部活見学期間の真っ只中。興味本位で覗きに行った剣道部に心を惹かれて、わたしは入部することにした。といってもわたしの運動音痴っぷりは周知のことだったため、小学校からの友達はみんな揃ってわたしが文化部だと思い込んでいたようで大層驚かれたものだ。   しかしその後、入る部活を間違えたかも、と気づいたのはそれから

          【小説】流涕

          【小説】天泣

           娘は、この季節がいっとう嫌いであった。早起きしてまで丁寧に整えた髪はお昼を過ぎれば湿気のせいでクルクルと跳ねてしまうし、まとわりつくような暑さによる汗でメイクは崩れる。己や他人の見てくれに特に敏感な女子学生たちにとってはただでさえ致命的な季節。そしてなにより、彼女は雨という天気が大嫌いなのだった。  しかしどういう風の吹き回しか彼女は今、叩きつけるような雨の中を独り、歩いていた。傘や携帯電話、財布すらも持たずにだ。いかにも勢いに任せて飛び出してきましたという体で、ルームウ

          【小説】天泣

          【妄言】新しいシャンプー下ろしたら推しがいた

           今まで使っていたシャンプーとコンディショナーがなくなりそうだったので、この際新しいのを買うことにした。セットで3,000円を超えるやつ。私的には洗髪剤にかけるにしてはいささか高価だと思えるが、死ぬまでに一回は使ってみたかったのでヨシとする。  さて先ほどそのシャンプーを下ろした(コンディショナーはまだ前のものだ)のだが、手のひらに出したそれをくんと嗅いで、私はふと 「あ、レイス」 と思った。  次の瞬間ハ? となる。何が?? とも。レイスとはお馴染みエーペックスレジェンズ

          【妄言】新しいシャンプー下ろしたら推しがいた