きりえるのてけとぅ夜話
第伍夜
第四夜の前日譚
最初は、同級生との確執
クラスで悪目立ちしてたからか
不良に絡まれる事は、多かった
特に奴は、生意気だとか兎に角
あたしが、目障りだったようだ
ヤクザが、後ろについてると言われ
幅を利かせていたが、眼中に無かった
身体を鍛え始めた頃だった為
絡まれても軽くあしらっていた
ある日あまりにも鬱陶しくイラついてたので
かんなりボコッたが、女に負けたと
随分威厳を落としたようだ
後で知った話しだが
それで兄貴分に泣きついたようだ
結果ある日突然、路上歩いてる時
鉄パイプで後ろから殴られた
紅の情景
血の雨でも降った様だ
景色が真っ赤だ
手がヌルつく
錆のようで生臭い
ふいに
反射した光に目を向ける
散乱したガラスの破片に
ぼんやりと
あたしの顔が映る
返り血か己の血か
わからない
どす黒い紅に染まり
薄ら笑いを浮かべてる
朧げな意識を引き裂く様その刹那
左の目辺りに激痛が襲い
同時に全身至る所で激痛と僅かな震え
それなのに得も言われぬ
高揚感と恍惚感
顔の笑みが崩れない
こんな嬉しそうな顔
初めて見る顔
何かで顔を殴られた
そこまでは
はっきりと記憶にある
その後断片的
鉄棒の様な物で殴られ
何度も両腕で防いだ気がする
腕が上がらない力が入らない
指先に感覚がない
鮮明に覚えてるのは
人間の急所を致命的な部分
はっきりと見据えてた
それ以外判然としない
うっすら視界に入る
散らばったガラスの破片
横たわり呻き声を上げる者
周りで何人かの者達が
声を出してるようだが
はっきり聞こえない
紅の情景の後
真っ暗になる夢だろうか
そのまま意識を無くし
目覚めた時 体中が痛く
見知らぬ場所
病院だった
暫らくして先生が来た
数cmずれていたら失明するとこだった
傷は残ると
すまなそうに言っていたが
そんな事どうでも よかった
あの時はっきりと覚えていないが
夢でないなら確かに
全身が喜びに満ちていた
あたしは
あの時
生きている
感じた
体中に駆け巡る痛みより
紅に染まった景色の中
感じた
痛みを伴う
快楽 悦楽 恍惚
圧倒的な暴力の嵐 真っ只中
とても強く感じた生きてる実感
生の希薄を埋める術を知る
日々生きてる実感が薄く満たされ無い
暴力に溺れた理由であり
この時の体験から更に苛烈に身体を鍛え
第四夜に続くが
己から先に襲ったのは
あの時が最後
その後は、非日常的な暴力の宴
闇に染まり沈む