共感覚体験装置としてのVR『CRARI OR NOT』:XR映画ガイド第19回
今回も前々回の紹介した『Traveling the Mist』に続き、フランスのNewImages Festivalで出会った一風変わったVR作品『CRARI OR NOT』を紹介いたします。
この作品はSNSやVRを使って思春期の10代の若者たちの様々な感情を体験する作品です。作品は2つのパートに分けられています。パート1ではInstagramで発信するそれぞれの日常を見ることで登場人物たちのキャラクターを知ることができます。パート2はVRを使って6人の登場人物のそれぞれの視点からあるパーティで起こる出来事を体験します。その際に体験者は舞台に組まれたセット上でVRを装着し、コンテンツ内の登場人物と同じ動きを促されます。VR内の登場人物と同様の動きをすることでより、その人物の体感を直接感じ、感情まで同調していく感覚が起こります。私自身、今まで体験してきたコンテンツにはあまりない感覚だったので不思議な気持ちでした。VRを中心により体感や感覚を深める新しい手法の表現だったと思います。まだまだXRの進化は止まらないと感じた瞬間でした。
見所:共感覚体験装置としてのVR
この作品を体験することで改めてVRは共感覚体験装置だということに気付かされました。私も10代の思春期の時を過ごしたことは、遠い記憶にあります。しかし、現代の若者たちが感じている感情までは共感することはあまりできなくなっています。そんな中でこの作品を体験した時に自分ではどうにもできない状況に、なんとも言えないヤキモキする気持ちが思い起こされました。それは今の年齢にはない、どこか懐かしい、青臭い感覚でした。その感覚を客観的に感じて、大人としての対応をしようとするのではなく、どうにもならないままに作品は終わってしまうので、作品を体験した後も、ズルズルとその作品について考えてしまう自分がいるのに気付かされました。
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