【英語記事和訳】Sky and Journey maker Thatgamecompany raises $160M
※Tumblrブログにて、本記事のリライト版を公開しました。
はじめに(このnote記事について)
アメリカ時間2022/03/03 午前6時に公開されたVentureBeatのニュース記事『Sky and Journey maker Thatgamecompany raises $160M』が非常に興味深い内容だったので、翻訳ツールや電子辞書等を駆使して同記事を和訳してみました。
『Sky』と『風ノ旅ビト』の制作会社Thatgamecompanyが1億6000万ドルの資金調達
Thatgamecompanyは、『Sky 星を紡ぐ子どもたち』や『風ノ旅ビト』といった素晴らしく感動的なゲーム世界を構築してきましたが、本日、1億6000万ドル(約185億円)の資金を調達したことを発表しました。
モバイルゲーム『Sky』は1億6000万回以上ダウンロードされ、毎日700万人近くがアクティブにプレイしているという成功を受けて、同社は著名な投資家であるTPGとSequoiaから巨額の資金を調達することができました。また、ピクサーの共同創業者であるエド・キャットマル氏[訳注:エドウィン・キャットマル氏]を、クリエイティブ文化と戦略的成長に関する主要なアドバイザーとして加えています。
Thatgamecompanyの資金調達は、山の頂上を目指す感動的な旅を描き、数々のゲームオブザイヤーを受賞した魅惑的なゲーム、『風ノ旅ビト』の10周年前夜に行われます。ThatgamecompanyのCEOであるジェノヴァ・チェン氏は、遊びを通じて人と人とのつながりを育むというミッションを推進することが目的であると述べています。
今回の資金調達は大きなものですが、カリフォルニア州サンタモニカに拠点を置く同スタジオは、独立した価値観に忠実でありながら、コミュニティを支援し、新しい体験を創造していくだろうと、チェン氏は述べています。
「正直なところ、これに適応するのにはかなりの時間がかかりました」とチェン氏は言います。
「というのも、私たちはまだ心の底ではかなり小さな存在だからです。昨年初めは40人以下だったんです。それが今では100人近くになっている。日々の生活もずいぶん変わりました。でも、これにはすべて理由があるんです。Skyは本当に健全に成長しています。そして、この成長をすべて支え、投資家をも惹きつけることができたのです」
彼は、同社が全世界に向けて感動的なゲームを作るという焦点に忠実であることに変わりはないと述べました。
「Thatgamecompanyは、ゲームのより深い感情的な影響の進歩のための原動力です」ピクサーのキャットマル氏は、声明の中で述べています。
「私は、ジェノヴァとスタジオから、世界中の人々に豊かで親しみやすいインタラクティブな体験を提供するという野心にふさわしい、永続的な創造的文化の構築に関する私の学びを共有するよう依頼されたことを光栄に思っています」
今回の資金調達により、Thatgamecompanyは、開発チームと組織のインフラを拡大することができます。現在、『Sky』を継続させ、他のプロジェクトに取り組むためには、100人以上の開発者が必要だとチェン氏は述べています。
『Sky』はgame-as-serviceとして開発されたため、プレイヤーのコミュニティが拡大し、頻繁に訪れる人がいます。特に、ベテランプレイヤーは、新しいプレイヤーに世界との関わり方を教えるために戻ってくるそうです。
TPGのマネージング・ディレクターであるArun Agarwalは、「ジェノヴァと彼のチームは、プレイヤーを楽しませるだけでなく、プレイヤーがサポートと価値を感じる包括的なコミュニティを構築できる革新的なゲームを開発してきた実績があります」と述べています。「Skyのようなゲームを通じて団結し、永続的な絆を築く能力は、ゲームの他の経験を超越しています。ジェノヴァのような先見性のあるリーダーと提携し、thatgamecompanyの次の成長段階を支援できる機会を得たことを誇りに思います」
TPGは、テクノロジー業界向けの柔軟な資本ソリューションに焦点を当てた投資ビークルであるTPG Tech Adjacenciesファンドを通じて、同社に投資しています。
「私たちの使命は、ゲームを正統な芸術として高めていくことです」とチェン氏は述べています。
「私たちの使命は、ゲームを正統な芸術として高めることです。長編アニメーション映画では、『白雪姫』や『トイ・ストーリー』でジャンルを確立する瞬間がありましたが、ゲームの世界でもこの瞬間を目指し、努力を続けていきたいと思います。伝説的なエド・キャットマル氏のアドバイザリーサポート、そしてTPGとSequoiaからの資金援助により、我々はthatgamecompanyの追求を倍加させ、アート、人とのつながり、ビデオゲームの境界を押し広げ続けていきます。」
『Sky』はモバイルデバイスとNintendo Switchで発売されており、AppleのiPhone Game of the YearとApple Design Award、Google PlayのBest of 2020 Award、SXSWのMobile Game of the Year、Game Developers Choice Awardsの観客賞、Webby AwardsのBest Visual Designなど、複数の賞を受賞しています。
芸術的伝統に裏打ちされた長い歴史
Thatgamecompanyは、2006年に南カリフォルニア大学の学生であったチェン氏とケリー・サンティアゴ氏よって設立されました。最初のゲームは、チェン氏の最初の作品である『Flow』をPlayStation 3でリメイクしたもので、2007年に発売されました。
2作目の『Flowery』は、6〜9人程度の小規模なチームで制作し、2009年にPS3のPlayStation Storeで配信を開始しました。
(私[訳注:ニュース記事の筆者]の子どもたちは、このゲームを何度も何度も繰り返し遊んで楽しみました)。
2012年、同社は3作目にしてプレイステーションプラットフォームでの最後のゲームとなる『風ノ旅ビト』を出荷しました。このゲームは、ソニーとの3つのゲーム契約の最終作でした。1年を予定していたタイトルが3年に拡大し、プロデューサーはロビン・ハンニッケ氏、チームは約14人にまで増えました。
『風ノ旅ビト』は大成功を収めますが、その開発が長引いたことが仇となります。サンティアゴ氏が去り、デザイナーのクリス・ベル氏とハンニッケ氏も去りました。Thatgamecompanyは資金不足に陥り、『風ノ旅ビト』からの収益が請求金額を支払うまで待たなければなりませんでした。
そこでチェン氏は、ベンチャーキャピタルBenchmark社のミッチ・ラスキー氏と出会い、資金を調達し、ソニー時代から脱却することを可能にしました。そして、プレイステーションというプラットフォームを超えて、より多くの人に楽しんでもらうことを目指し、『Sky 星を紡ぐ子どもたち』を、ソーシャル体験を組み込んだモバイルマルチプレイヤーアドベンチャーゲームとして発表しました。『Sky』は2019年にデビューしました。
「『Sky』をリリースした当初は、このゲームが生き残れるかどうかわからない状態だった 」といいます。「人々は口コミで友達に教えてくれました。そのサポートがなければ、チームを成長させ、『Sky』での体験を成長させることはできなかったでしょう。」
チェン氏は、最も長く理事を務めたラスキー氏が、親としての指導と財政的な背景を提供してくれたことを高く評価したそうです。
資金調達について、チェン氏は「会社を最大限に成長させたい」と述べています。同社は良好な利益を上げていますが、インフラや技術を発展させるためにも、おそらく企業買収を行うためにも、追加の資金が必要です。
「聴衆が会社を追い越す勢いです」とチェン氏。「世界中で、満たす必要のあるさまざまなニーズがあります。 そして、私たちは、よりテーマパークめいた、私が作った中で最も野心的なゲームである、次回作となるゲームの制作にも忙しく取り組んでいます」
次のステージへ
今回の資金調達で、同社は次のステージに進む準備が整ったとチェン氏は述べています。
「私たちは、より多くの人々の心に響くコンテンツを作りたいと考えています」とチェン氏は言います。
「ディズニーやピクサーの映画のように、夫が妻と、親が子供と一緒に遊べるようなゲームを作りたいと思っています。プレイステーションは、誰もがプレイステーションを持っていて、一緒に遊べるようなゲームにはなっていないようです。そこで、私たちはモバイルを選んだのですが、これはかなり大きなリスクです。そして実際、非常にリスキーであることが証明されています」
また、チェン氏は『Sky』をプレミアムタイトルから無料ゲームに変更するため、開発期間3年でゲームをリブートしなければならなかったことも指摘しました。そのため、開発に余計な年月がかかってしまいましたが、結果的には正しい判断だったと思われます。
『Sky』はファミリー向けのタイトルで、幅広い層がプレイしています。
実際、アクティブなプレイヤーの70%近くが女性で、これは想像もしていなかったことだとチェン氏はは言います。また、暴力的な表現がほとんどないことも、このゲームの魅力を高めています。
チェン氏は、このゲームが成長を続けている最大の理由は、拡張が可能なことだと述べています。
「据え置き型のゲームでは、ストーリーテリングを行い、通常はストーリーが終わると帰ってしまいます」と彼は言います。「しかし、『Sky』の旅で分かったことは、他者を助けることを主軸にしたゲームだと、ベテランプレイヤーが初心者を助け、その初心者がやがてベテランプレイヤーになり、他の初心者を助けに行きたくなるという循環サイクルが生まれることです。このような利他的な仕組みによって、多くの友情が生まれ、プレイヤーたちはこの素晴らしい経験を今でも覚えているのです」
プレイヤーギルドを持つ多人数参加型オンラインゲームと同じように、『Sky』のファンは社会的なグループに長く留まります。
「『Sky』では、もともとジェットコースターのようなエモーショナルなストーリーを作りたかったのですが、今では一種のテーマパークのようなものになっています」とチェン氏。
チェン氏は、4年後、シーズンイベントのアドベンチャーパスの売上の約50%がプレイヤーから他のプレイヤーへのギフトとなり、その他の商品の売上も22%以上がギフトになることを指摘しました。
「私にとって、友人へ贈るプレゼントを買う事は、とても嬉しい事です」
チェン氏は、人々と接続できる世界では有害なものが多いため、プレイヤーを保護することが特に重要であると指摘します。そのため、同社ではゲーム内のコミュニケーションを制限し、プレイヤー同士が助け合い、強い絆を築けるようなシステムを設計しています。
テーマパークを育てる、ということ
私は、チェン氏が掲げる「Skyテーマパークをつくる」とはどういうことかを尋ねてみました。
ディズニーワールド は、隣り合ったテーマパークの集合体であり、多くのインフラを備えています。そして『Sky』は、年配の方から若い方まで、さまざまな層が集まっています。
「ゲーム業界には、ディズニーランドやピクサー映画のような体験が、今もまだないように思います」とチェン氏。
「私は、妻と一緒に最初から最後までゲームをしたことがないんです。そのための良いゲームに出会っていないんです。そして言わずもがな、私には子供がいます。どうすれば、そのような経験をすることができるのでしょうか?それが私の願望です。『Sky』は確かに試みではありますが、このような体験をさせるために、もっといいものを作りたいと思っています。願わくば、Skyや今後のゲームが、将来的にはテーマパークの一部となり、人々と繋がるメタバースのような存在になれればと思っています」
チェン氏は、2022年末までにスタッフを150人以上に拡大し、その多くがテーマパークとしての『Sky』をサポートし、さらに次のゲームを作ることを望んでいます。キャットマル氏はピクサーの文化に貢献した人物であり、Thatgamecompanyが大きくなっても、協力的で創造的な文化を持ち続けたいと考えているそうです。チェン氏は、同社が世界的な才能を持つ人材を採用したいと考えていると述べています。
チェン氏によると、同社は、ピクサーのようなコンテンツを制作するという野心に沿った、『Sky』を超える次回作について、今後さらに多くの計画を明らかにするとの事です。
「ピクサーのようなコンテンツを作るには、ゲームの感情移入のしやすさをいかに多くの人に広げていくかが重要です」とチェン氏は言います。
「ゲームが映画を凌駕し、エンターテインメントにおける最高の芸術となることは、私の長年の夢でした。若い頃は、アカデミー賞を受賞したり、ビデオゲームをギャラリーに展示して、ゲームが価値あるものであることを証明するために、学術的な人々に見せるだけだと思っていました。しかし、ビデオゲームが美術館に展示されても、社会の見方が変わるわけではないことに気づきました。そこで考えたのは、もっと大きな市場規模を持つか、もっとお金を稼げばいいんじゃないかということです」
さらに彼はこう付け加えました。
「ゲーム産業は映画産業よりもずっと多くのお金を稼いでいる。しかし、それでも人々はゲームを尊敬していない。人々が本当に尊敬し、一緒に人間性を感じられるような感情的なコンテンツがないからだ思います。つまり、大人向けのゲームがあり、子供向けのゲームがあり、男性向けのゲームがあり、女性向けのゲームがあるのですが、そのすべてに触れることのできるゲームはないんです。それが最後のピースだと思うんです」
アニメ映画の製作者が『白雪姫』のようなタイトルを製作した後も、彼らは漫画家と呼ばれていたんですよ、とチェン氏は言います。「尊敬の念は最後に来るものだ」とも。
私はチェン氏に、「いつかテーマパークの延長線上にThatgamecompany+を見ることになるでしょうね」と冗談を言いました。
チェン氏は笑ってこう返しました。
「ディズニーの方がずっと大きいですよ。ピクサーは、おそらく私たちが目指しているもので、素晴らしいコンテンツを作り、素晴らしいストーリーを伝えることに主眼を置いていると言えるでしょう」